見出し画像

出生前診断の是非

三井 最近は、出生前診断が妊婦の間で普及しているね。
住友 赤ちゃんが生まれる前に、異常がないかどうか調べる検査のことだね。
三井 とくに染色体の異常を検査するNIPTが広がっている。
住友 なぜそんなに急速に広がったんだろう?
三井 一つは、医療技術が進歩して、血液検査だけで診断が可能になったことは大きな要因だ。
住友 以前は羊水検査しなければわからなかったことが、現在では血液検査で簡単にわかるんだね。
三井 妊婦の身体的な負担が減ったことはありがたいことだ。
住友 他にも理由がある?
三井 数年前から認定外の医療機関でも検査ができるようになったからなんだ。
住友 なるほど。検査できる機会が増えてきたことは喜ばしいことだね。
三井 ところが、そうとも言い切れないんだ。
住友 何か不都合なことがあるの?
三井 認定されている医療機関には臨床カウンセラーが配置されていて、妊婦の相談に対応できる体制が整っていたのだけど、認定外では、そうした臨床カウンセラーがいないケースが多いんだ。
住友 それじゃ、妊婦は不安だね。
三井 しかも、多くの医療機関では採血するだけで診断には関与せず、血液サンプルを検査会社に送ってしまうんだ。検査結果も医療機関を介することなく、検査会社から受診者の妊婦に直接通知されることが多い。
住友 相談窓口がまったくないんだね。
三井 胎児に異常があることがわかっても、誰にも相談できず、パニックに陥ってしまう妊婦も少なくない。
住友 それは問題だ。
三井 その結果、胎児に異常があるときは出産しないという選択をする妊婦も多い。
住友 どのくらい?
三井 9割くらい。
住友 とても多いね。
三井 だから懸念されているんだ。
住友 それは、おかしくない?
三井 なぜ?
住友 だって、出産するかしないかは妊婦本人か、または夫婦かパートナーが話し合って決めることでしょ。当人が真剣に話し合って、出産しないという選択をするのであれば、その意思決定は尊重されるべきであって周りがとやかく言うことではないでしょ。
三井 その通りだけど、問題はそこじゃないんだ。
住友 何が問題なの?
三井 出産しない妊婦が増えることによって、障害のある子どもを産んではいけないといった間違った風潮が社会に広まってしまうことが懸念されているんだ。
住友 それはたしかに間違った考え方だね。優生思想のような考え方だ。
三井 そうなんだ。
住友 障害の有無に関係なく、誰もが平等に生きていく権利があるはずだ。
三井 その権利が侵害されるリスクが指摘されているんだ。
住友 じゃあ、出生前診断を廃止すべきなの?
三井 いや、それは極端すぎる意見だ。出生前診断には利点も多い。
住友 たとえば?
三井 出生前に胎児に障害があることがわかると、親として心構えができる。子どもを育てるために、生まれてくる前に色々な準備ができるんだ。心の準備だけでなく、経済的な準備もできる。仮に重度の障害があれば、国や自治体からの支援を受けることも可能だ。そうした情報を事前に得ることができる利点は大きいと思う。
住友 そうした利点を活かすためには、出生前診断の運用を改善していかなければならないね。
三井 それと、もう一つ。社会の風潮も変えていく必要がある。
住友 どう変えるの?
三井 障害の有無に関わらず、子どもたちが幸せに成長できる社会を築いていくという考え方に変えていくべきだ。
住友 難しいね。
三井 うん、簡単ではない。
住友 そうすればいいの?
三井 それは、ぜひ将来を担う若い人々に考えてほしい。
住友 ええっ?教えてくれないの?
三井 とくに受験生に考えてほしい。
住友 そうだね。受験生の皆さん、頑張ってください。
三井 頑張ってください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?