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最強の剣士と、武装解除人と、ゲームデザイナー【尊敬する人】

みなさんには尊敬する人はいますか?

尊敬する人というと、ラーメン屋の若大将からエンジニアの友人、ファンキーな恩師の大学教授からワンピース好きのパン屋のママさんまで、もう数えきれないほどいますが、

坂本龍馬!とか、スティーブ・ジョブズ!とか、そういう「出会ったことはないけど人生に影響を与えた偉大な人達」というカテゴリであれば、すぐに、とある3人が思い浮かびます。

僕の価値観はその3人の本や作品に色濃く影響を受けています。

書くメシU30sマガジン、今週のテーマは「尊敬する人」。

宮本武蔵師匠、瀬谷ルミ子さん、小島秀夫監督。彼ら彼女らが僕の人生にどう影響したのか。今日はそれを話します。


合理主義と勝負の世界。宮本武蔵師匠

宮本武蔵が晩年に手掛けた「五輪書」は、人生で一度は読んでほしい名作です。特にビジネスやスポーツなど「勝負」の世界に生きる人の必読書。

どんな経緯で僕が五輪書に影響を受けたのかは、こちらに詳しくまとめています。


自分が状況を変える側になるということ。瀬谷ルミ子さん

瀬谷さんの職業は「武装解除」。それがタイトルになったこの本を学生時代に読んで、僕は目が醒めるように、自分が何をやりたいのか考え始めました。

武装解除とは、紛争が終わったあと、兵士たちから武器を回収して、これからは一般市民として生活していけるように職業訓練などをほどこし、社会復帰させる仕事のことです。

武装解除の対象になるのは、国の正式な軍隊のときもあれば、民兵組織のときもある。そして、兵士といっても、六歳の子ども兵もいれば、六十歳を超えた年配の兵士、武装勢力に誘拐された武器を持たない女性まで、さまざまだ。(引用)

瀬谷さんが「武装解除」の仕事を志し、現場で経験を積むところまでのストーリーが赤裸々に語られているのですが、その信念と行動力には驚きと尊敬を抱きます。日本人の小柄な女性がライフル銃をもったアフガン民兵組織のなかに入っていてネゴシエーションする、なんて、ふつうのことではありません。

そんな瀬谷さんがこの仕事を志したきっかけは1枚の写真だったそうです。どんな写真かは本に掲載されているのでぜひ一度見てもらえたらと。

私と彼女たちの間にあるのは、カメラのレンズひとつ。
その母親は、ひどく衰弱していた。傍らで泣き叫ぶ我が子を抱き寄せることもできない。もう長くはないだろう。
高校三年生の私は、お菓子を食べながら、死にゆく彼女を眺めていた。

そのとき高校生だった瀬谷さんは、こう思ったそうです。

日々のニュースを眺めて、嘆きながら救世主が現れるのを待つのではなく、自分が状況を変える側になるということ。

そこからの行動力は凄まじいものです。「おかしいと思った出来事は、嘆くでも批判するでもなくて、自分が変えていけばいいんだ」という考え方を僕に持たせてくれた人として、とても尊敬しています。


未来を創ることと過去を語り伝えることは同じなんだ。小島秀夫監督

俺達は伝えなければならない。俺達の愚かで、切ない歴史を―それらを伝えるためにデジタルという魔法がある。人間が滅びようと、次の種がこの地球に生まれようと、この星が滅びようと……生命の残り香を後世に伝える必要がある。未来を創ることと過去を語り伝えることは同じなんだ。

僕のこのセリフが本当に好きで、何度もゲームをプレイしたし、エンディングムービーだけYoutubeにあがっていたので何度も再生しました。テレビゲームのエンディングで震えるほど感動したのはこれが初めてでした。メッセージ性の強い作品です。

▲本で知りたい方はこちらがオススメ

小島監督については、2015年にその想いをfacebookに投稿していたので、そのまま抜粋してみます。

ーーーーー以下引用ーーーーー

 もう7年間、記憶に焼き付いて離れないシーンがある。

 物語が終わり、エンディングのスタッフロールが流れた後のことだ。一息ついた観客の意表を突くように唐突に画面が切り替わり、主人公の男が、しずかに語り出す。

「人の人生は、子供たちに遺伝情報を伝えるだけじゃない」
「人は遺伝子では伝達できないものを伝えることができる」

 映画だと思ったかもしれない。でもこれは、テレビゲームの話だ。(テレビゲームと聞いて陳腐だと感じるのも構わないけれど、先入観を捨てて読んでくれたら嬉しい)

 ひたすら部活動に明け暮れていた高校二年生の夏。剣道と勉強の合間を縫ったわずかな時間、僕の最大の楽しみはPlaystation2だった。小さい頃から人並みにゲームで遊んでいたし、一般的な高校生にしては、本や映画に触れた量も多い方だったと思う。でもその頃はまだゲームで感動した経験はなかったし、ゲームをそういうものだとも考えていなかった。
 そんなときに出会った一本のテレビゲームによって、僕は初めて「物語に込められたメッセージ」に打ち震える経験をしたのだ。

「METAL GEAR SOLID2 SONS OF LIBERTY」という有名な作品だ。あまりゲームに関心がない人には、銃火器でドンパチやる単なるコンバットゲームのように思われているかもしれない。もちろん、その側面もある。けれど、この作品を製作したゲームデザイナー小島秀夫さんの”紡ぐ物語”と、そこに散りばめられている幾多の、かつ貫徹したメッセージは、一級映画のそれに匹敵するものがあって、特に上述したシーンは、今の自分を形成している重要な原点になっていると思う。
 宮本武蔵の『五輪書』、瀬谷ルミ子さんの『職業は武装解除』など、僕の人生を変えた本との出会いはたくさんあるけれど、人生を変えたゲームは今のところこれだけだろう。

 ここ2、3年は、ビジネス書や自己啓発書ばかりを買い漁って読んでいたためか、少し盲目していたように思う。小手先の部分ばかりに注目して、自分が一番大事にしたいことを大事にしていなかったのかもしれない。
 物語・フィクションには人の生き方を変えるほどの力があって、僕はそれを心底信じている。
 
 小島さんは今や世界的に有名なゲームデザイナーだが、本と映画をこよなく愛することでも知られている。一時期は雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載を持っていたり、写真のような著作を出したりもしていた。この本は彼に影響を与えた物語について、機知の利いた書評と共に面白く紹介している。

 冒頭に述べたシーンでは、作品の最後に、この作品の主人公スネークの声で作者自身のメッセージが語られていく。CGで描かれたゲーム画面から一転して、そのシーンだけは映画のような実写画で、ただただ、のどかなニューヨークの街並みが映されていく。最後のセリフはこうだ。

「未来をつくることと、過去を語り継ぐことは同じなんだ」

 この本のタイトルにもある『MEME(ミーム)』の意味するところでもあるけれど、先人たちの残した言葉や物語から、僕らが学ぶべきものは数え切れないほどにあって、
 僕らも、その表現方法がどうであれ、先人たちのそれに僕らのそれを積み重ねたものを、後世に伝えていく必要があるのだと思う。その方法は、作家のように言葉を紡ぐことかもしれないし、今までになかった新たな事業をつくることかもしれないし、あるいは、幸せな家庭を築いて、我が子をしっかり育てることかもしれない。

 ...随分と長い投稿になってしまったけれど、自分が大事にしたいことを素直に、大事にしていこうと思って、その大事なものを紹介する意味で色々話してみました。

ーーーーー引用終わりーーーーー

以上の3人は、僕という僕をかたちづくっているのにとても重要な尊敬する人たちです。みなさんもぜひ一度、その著作や作品に触れてみてもらえるとうれしいです。

Photo by Specna Arms on Unsplash

#尊敬する人 #書くメシ #日刊書くメシU30sマガジン

ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけましたら、ぜひスキをお願いします!