ながもとさとる

神戸大学建築M2/末包研究室/名古屋出身 https://www.instagram.…

ながもとさとる

神戸大学建築M2/末包研究室/名古屋出身 https://www.instagram.com/satoru.nagamoto

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「人生の伏線回収」、ここから始まる。

--- 2ヶ月前、2019年8月11日。 この日まで、6人が違う日常の伏線を紡いでいた。 顔も知らない。 名前も素性も知らない。 生きてきた場所も全く違う。 それでもあの瞬間、人生の伏線が出会い、今まで紡いだ糸が織り合わされ、表現が重なった先に生まれた体験は、全員の感情をつらぬく劇的なものだった。 誰のためにでもなく、自分自身のためだけに、本気で記憶と表現に向き合い、感情と身体をリンクさせていく。 そして、その先に待っていた儚く美しい、まるで別世界のような空間。

    • 500文字の建築試考「都市の輪郭」

      わたしたちは都市の輪郭を意識しているだろうか。 東京、大阪、横浜、名古屋、わたしが住んでいる神戸などの都市では、昼と夜の景色がまるで異なる。 昼間は空が都市の輪郭を作る。 夜間は電気が都市の輪郭を作る。 昼間の都市の風景は空から注ぐ光によって輪郭が型取られる。 日光が屋根を照らし、壁を照らし、空はオフィスビルのガラスに映り込み、木の葉の間にチラチラ揺れて覗き、時間の移ろいとともに青や灰や橙に色を変えてその時限りの風景となる。 20世紀以降の電気の普及により、日光がない

      • 500文字の建築試考「映画『パラサイト』モノクロVer.を観て、感じた『色』と『空間』」

        久々に映画館が営業再開し始めたということもあり、映画館で上映中の映画を調べていたのだが、なんと『パラサイト』のモノクロVer.を映画館で観ることができるとわかった。コレは観るしかないと思い、そのことを知った翌日には映画館に向かった。 一言で言うと、圧巻だった。 色の有無でこんなにも世界観が変わり、見える視点と対象が変わるのかと思った。 終盤に向けてだんだん増していく恐怖感が、色がないことで強調されて、まるで過去のような、夢のような、現実じゃない世界を見ている感覚だった。

        • 500文字の建築試考「この自粛が明けて、まずするべきこと」

          2020年5月24日。 もうすぐ、全国で新型コロナウイルスの流行対策としての自粛期間が終わろうとしている。 去年と同じような生活に戻れるわけではない。 しかし、また新しい、この自粛が明けたからこそ光が満ちている世界へと戻れそうな空気感を感じている。 そこで、この自粛が明けて、まずはじめにしようと思っていること、というよりはするべきだなと思っていることを簡単にだが挙げて、宣言とする。 わたしはこの自粛が明けたら、まず小さな世界に目を向ける。 すごくすごく小さな世界に。

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        「人生の伏線回収」、ここから始まる。

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        • 500文字の建築試考
          14本
        • 人生の伏線回収
          1本
        • 学ぶ会(仮)
          2本

        記事

          500文字の建築試考「現象 in 豊田」

          自分が建築に興味を持ち、現象のことを考えるきっかけになった体験がある。2012年12月の豊田スタジアムでの体験だ。 その日はFIFAクラブW杯という大会の準決勝で、ブラジルのコリンチャンスと中東のアル・アハリが対戦した。 その日のコリンチャンスサポーターは凄まじかった。 1万人を超える熱狂的サポーターが地球の裏側であるブラジルから押し寄せ、スタジアム全体を埋め尽くした。 全員が本気で応援し、歌い、飛び跳ねて、一緒に戦っていた。 本当に全員が本気なのである。 黒川紀章さん

          500文字の建築試考「現象 in 豊田」

          500文字の建築試考「煉瓦の記憶とふたつの時間」

          時間には「垂直的時間」と「水平的時間」のふたつがある。 これからこのふたつの時間を、私が理解できたレベルで話したいと思う。 これは昨年のコンペで煉瓦を用いたアイデアを提案したときに考えていたことである。 普通の建物、例えばコンクリートで作るような建物はまず、コンクリートを流し込む型枠とコンクリートの骨格となる鉄筋をつくる。 そこにコンクリートを流し込み、建物の形を一気に形成する。様々な工程がそれぞれ別の時間に行われることが特徴だ。 そして、木造、コンクリート造にかかわらず

          500文字の建築試考「煉瓦の記憶とふたつの時間」

          500文字の建築試考「子どもと探検」

          子供の頃、非常に怖いなと思っていた建物がある。 現在のモリコロパーク、昔であれば青少年公園と呼んでいた、愛知県長久手市にある「愛知県児童総合センター」だ。 (写真:環境デザイン研究所HPより) 私は名古屋市出身であるため、この施設によく遊びに連れて行ってもらっていた記憶がある。中身はすごく面白くて、様々な遊具やおもちゃで一日中楽しめるようになっていた。 怖いと思ったのは施設の中央にあるチャレンジタワーというものだ。 チューブが二重らせん状に巻きついたような動線によって上へ

          500文字の建築試考「子どもと探検」

          500文字の建築試考「見ることと感じること」

          人間には五感が存在している。 見る・聞く・触れる・臭う・味わう。 その中でも人間の中で最も支配的な感覚は「見る=視覚」であることはよく言われている。 情報の8割を視覚から得ているとも言われており、様々なものを「見る」ことによって生活を成り立たせていると言ってもよい。 そんな「見る」重視の世の中では、人は外出をするときに見た目を気にするし、何か商品を売るときはパッケージにこだわる。 建築についても同じだ。 建築の見た目を気にして、形を作り、プロポーションに注意して、色、素

          500文字の建築試考「見ることと感じること」

          500文字の建築試考「現象はintertwinから」

          建築の現象を語る建築家の1人としてスティーブン・ホールがいる。 現在の私が研究対象としている人物だ。 もっともホールが現象、つまりphenomenonという単語を用いるときに必ずイメージしているのが、メルロ=ポンティの現象学である。 メルロ=ポンティの客体的身体と現象的身体に対する概念が、ホールが建築の思想を書き記したりスケッチに起こしたりする際に必ず元となっている。 もっともメルロ=ポンティはフッサールの現象学概念を元としながら発展させ、現象学をほぼ完成させたと言っても

          500文字の建築試考「現象はintertwinから」

          2500文字の建築試考「絹を織るまち」

          今回は少し長めとなるが、2018年に訪れた「絹を織るまち」山梨県富士吉田市のことについて話す。卒業設計のリサーチのために訪れたまちだ。 ここでは今もなお、絹を染め、紡ぎ、織り、服や傘などを作っている。 「絹を織るまち」富士吉田のこと富士吉田市といえば、 ・富士山 ・富士急ハイランド ・吉田のうどん(日本一固いうどんらしい) などなど、特徴はいろいろあるが、その中でも歴史ある特産物として、 ・絹織物「甲斐絹」 というものがある。 江戸時代には、江戸で一大ムーブメントを起こし

          2500文字の建築試考「絹を織るまち」

          500文字の建築試考「不確定が生むもの」

          建築は不確定の中に生まれる。 建築には必ず、使ってくれる利用者が存在する。 住宅には、その家に住む住人が。 コンサートホールには、音楽を聴きに来た観客が。 駅舎には、毎日のようにそこを使う通勤者が。 建築設計者は常にこの利用者のことを考え、この空間の中でどのような行動をするのか、この空間からどのような気持ちを受け取ってもらえるのかということを想像して設計している。 建築がどんな効果をもたらすのかということに思いを巡らせる。 しかし、この利用者という存在は、建築から効果を

          500文字の建築試考「不確定が生むもの」

          500文字の建築試考「散歩的建築」

          建築は散歩的な体験を促す役割をもつ。 散歩を日課として日頃から続ける人は、毎日同じ道を、毎日同じ時間に、毎日同じような速さで歩いているであろう。 そのような散歩をするご年配の方を見て、 「いつも同じように散歩をして飽きないのかな」とか 「いつも同じように散歩をして暇なのかな」とか、 若者は勝手に思うことがある。 でも実はこの『毎日同じように』ということが、散歩にとってものすごく大事なことであることが、最近自分の中でようやくわかってきた。 毎日同じ道を散歩すると、日により異

          500文字の建築試考「散歩的建築」

          500文字の建築試考「現象 in SeaLanch」

          2020年9月21日。 アメリカ西海岸、サンフランシスコから北に100マイルずっと太平洋を眺めながら運転し、たどり着いたのがチャールズ・ムーア設計のシーランチ・コンドミニアムだった。 この建築に宿泊、しかも2泊できたことは、間違い無く人生における最高の建築体験の一つとなった。 では何が最高なのか。 雄大な景色か。 細部までこだわり抜かれた設計か。 巨匠が自ら作った別荘に泊まれたと言う歴史の重みか。 このどれもが最高たる所以だが、一言で表すと次の言葉だと思う。 地球への

          500文字の建築試考「現象 in SeaLanch」

          500文字の建築試考「体験」

          建築設計者にとって、もしくはどんな人々にとって「原体験」というものが存在することは多い。そして人生のモチベーションのきっかけを「原体験」におく人も多いと感じている。 幼い頃に育った街の風景の記憶であったり、辛かった部活や学校での出来事、好きなものに没頭した記憶、旅行で行った先の異世界での体験、家族の事情など、「原体験」というキーワードと共に人生が語られているのを聞くことが多いと感じる。 私の建築に対してのモチベーションは、この「原体験」をつくることにある。 それも空間によ

          500文字の建築試考「体験」

          500文字の建築試考「現象」

          私はいつも、見たことがない現象とワクワクする文化をつくりたいという思いで、建築のことを考えている。 まずはそのひとつである現象についての500文字。 現象という言葉は日常生活の中でもよく使われる言葉だと思う。 気象現象、自然現象、社会現象などなど日頃ニュースなどでも扱われる馴染みのある言葉ばかりだ。 しかし私がつくりたい現象は豊かな体験を生むようなものと自分の中では考えている。 そしてよく考えると次の3つの特徴があってこそ成り立つものだと思う。 ① たまたま出会ったと

          500文字の建築試考「現象」

          学ぶ会(仮)②「未来と余白」

          前回から一月以上空いてしまったが、学ぶ会(仮)の第2回目を、また「ゆるく」開催した。神戸という地方ならではの視点を持ちながら、色々と興味を広げながら学んでいこうという回である。 前回の第1回のテーマは「一回性」であった。カービング的建築の体験の豊かさや、ベンジャミンの複製芸術に対する考えを話した。 今回もまた研究室のメンバーが自由に本を選んできたのだが、個人的には「一回性」につながる考え方ができたらいいなと思っていた。 今回は3人でやることになり、各々が選んだ3冊につい

          学ぶ会(仮)②「未来と余白」