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[閉鎖病棟入院日記]精神の病気は治らないからこそ

自分の匂いが気になって入院した爺さん

私は現在閉鎖病棟の4人部屋に入院しています。毎日の検温と血圧測定の際に看護師さんがきて声掛けをしてくれます。

4人部屋なのでもちろん他の患者の話も聞こえてきます。昨日は隣の爺さんが看護師に相談する声が聞こえてきました。

爺さんは自分の匂いが気になって部屋に充満しているのではないか、他人に迷惑をかけているのではないかと思っているそうなのです。

気のせいではなく、本人的には本当に匂いがすると言っていました。しかし看護師や私などは爺さんの匂いには気づきませんし、匂いはしていないと思います。

爺さんの訴えを30分以上にわたって傾聴する看護師

女性の看護師はそんな爺さんの訴えを30分以上にわたって聞いてあげていました。思わず「気のせいだよ」と言ってしまいそうなものですが、その看護師はきちんと最後まで話を聞いていたのでした。

爺さんの病気はただの心気症なのか、特殊な統合失調症なのか分かりませんが、閉鎖病棟に入院するくらいですからかなり深刻なのでしょう。

看護師さんも患者のことを決して馬鹿にはせず最後まで話を聞いて、たとえ解決できなくとも寄り添ってくれます。

話を聞いてくれるだけで患者の心の支えになる

私も自分のパニック障害や不安障害について毎日声掛けをされますが、話を聞いてくれるだけで人間は心が軽くなるものです。

話を聞いてくれる看護師が何かやってくれるわけでもないし、結局は医者の指示のもと動いているので、解決策を提示してはくれません。

しかし、「会話をする」という行為自体におそらく不安を和らげる力があるのだと思います。

ふとした瞬間に毎日看護師さんが話を聞いてくれる時間を心待ちにしている自分がいるのです。

たった5分くらいですが、私にとってはかけがいのない時間です。それだけ話を聞いてくれる看護師さんの存在は大きなものです。

精神的な病気のほとんどは治らないからこそ

入院して分かりましたが、精神的な病気のほとんどは根本的な解決はしません。

それは私のパニック障害だけでなく、他の患者の様子を見てもそう思います。

精神的な病気はどうしても生まれつきの気質と深く繋がっているからこそ、薬で脳内の神経伝達物質をいじったからといってすぐに治るものではありません。

治すには自己努力や忍耐、薬物治療など総合的なアプローチが必要になってきます。

その際に看護師さんなどのスタッフからの支えはとても大きいと思います。言葉ではうまく表せない力がそこには働いていると思います。

精神病は脳内の神経伝達物質の問題だけではない

私はこれまで、精神的な病気は脳内の神経伝達物質をいじくれば良くなるものとばかり思っていました。

しかしそうではないと考えを改めました。周りの大人からの支えなど、環境的なものも必ず治療には必要になってきます。

ただ脳を薬でいじれば治るほど精神的な病気は単純ではありません。人とのつながりそれ自体が病気を癒してくれることもあります。

デイケアや作業療法など、それ自体は意味のないものだと一見思いますが、それを通じた他人との繋がりには確実に人を癒す力があります。

風船で遊んだ作業療法でのこと

以前に運動の一環として、風船で作業療法士さんが我々患者と遊んでくれたことがありました。

私は最初、「風船遊びなんて子供騙しだな」と思っていたのですが、いざ遊んでみると意外と脳が刺激されている感じがしました。

オキシトシンが脳内から分泌されて落ち着いた気持ちになれたのです。その経験をしてから子供騙しでもいいから他人と関係を築くことの大切さを学んだ気がします。

作業療法やデイケアは作業自体に意味はなくても、他人と関われるという点で意味があるのです。

薬物治療しか信じていないという人も一度は認知行動療法的なものも行ってみると良いと思います。意外にも大きな発見があるかもしれません。

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