[閉鎖病棟入院日記15]病院の方が心地良くなってしまった人々
外泊訓練を乗り越えられない人
入院治療が進み、「もう退院しても大丈夫だ」と医者から判断されると外泊訓練というものが始まります。
病院という閉ざされた空間ではなく、現実世界というオープンワールドで1人で生活しても問題が起きないかをチェックするためです。
ただ、長期入院をしている人の多くが外泊訓練で挫折していきます。外の世界は残酷だからです。
3食昼寝付きで保護されていた病院内での暮らしとは違って、飯も自分で用意しなければいけないし、身の回りのこと全ての責任がふりかかってきます。
病院という温室に長期間いたことで、外の環境に適応できなくなってしまっている人がほとんどなのです。
実際に私のいる病棟では、双極性障害の女性がいますが、外泊訓練に5日間行ってきたらしいですが、またすぐに調子を崩して入院生活に戻ってしまいました。
外の世界にはもう戻れない
そうして外の世界にはもう戻れないと思われる人がたくさん入院しています。
病院内の生ぬるい環境に慣れてしまって、そこから抜け出せなくなってしまっているのです。
病院はあくまで病気を治すところですが、一部の精神病患者にとっては終の住処となってしまいます。
現在の法制度では入院期間は3ヶ月が限界であり、それを過ぎると病院から追い出されてしまいます。
しかし、再入院という形をとって病棟を変えてまた入院してくる人がいるのです。
こうした人のほとんどはもう病院の外では暮らしていけません。
刺激が多く、自分で自分の面倒を見なければいけない世界は厳し過ぎるのです。
病院の方が心地良くなったら終わり
私は病院の方が心地よいと感じるようになったら終わりだと思います。
人間は病院で生活するようにはできていないですし、何かしら社会と繋がりを持って生きることが大切です。
病院もある意味では社会なのかもしれないですが、あまりにも保護されすぎています。
私たちが生きる目的は、生きていく中で「魂を磨く」ことです。
果たして病院という優しく保護された環境でそれができるのでしょうか。
私には「魂を磨く」ことができるとは到底思いません。
社会に出て傷つきながらでも生活していくことで得られる教訓がたくさんあると思います。
必要なサポートは受けるべき
ただいきなり外の世界で活躍しようと思うのはあまりにも考えが甘過ぎると思います。
精神に障害を持った人が健常者と同じような仕事を求められるのですから、大変なことが降りかかってきます。
三度の飯をどう用意するか、住む場所はどうするのか、身の清潔をどう保つのか、考えることは山積みです。
そこで必要なのが福祉にきちんと頼ることです。
お金の面では生活保護や障害年金がありますし、生活の面では訪問介護サービスをやっている病院もたくさんあります。
そうしたサービスに頼りながら生活を営むことが必要になってきます。
いきなり完全な自立を目指す必要はありません。
最初は福祉に頼りながらでも、少しずつ自分でできることの幅を広げていけば良いのです。
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