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先生記録 No.5 常勤講師一年目(3)

初の家庭訪問。
初めて受け持つ生徒。
なにより、サポーター教員の仕事も支援学級担任としてやるべきことも、教員がどのような働き方をするのかもわかっていない中で、教員らしい初の業務。

「保護者や生徒に不安を与えないように」

それだけは意識して、自転車のペダルを踏む。

先導するH先生が道に迷い、地図アプリを使う私が先導役を変わりつつ、生徒宅へ。

生活感のある一軒家が目的の家庭だった。
H先生がインターホンを押し、保護者や生徒と初めての対面。

「マンツーマン対応が必要な男の子だから」

とだけ事前情報を聞いていたが、初めて出会ったその生徒は身長140cmに達するか達していないかという小柄で細身な男の子で、ブレイクダンスをするかのように床についた膝を起点としてクルクル回り続けていた。

「回ったり、物を回したりするのが好きなんです」

少し神経質そうな印象のお母さんから、本人の話を聞く。

一人でできること、支援が必要なこと、どんな支援があれば良いのか、心配なこと、小学校でのエピソード、etc。

教員という仕事についても、ましてや支援教育についてもまったく知識のない私にできたことは、

「少しずつ、彼のペースを理解しながら一緒に学校生活のリズムを作っていきたいと思います」

と伝えることだけ。
精一杯の虚勢で笑顔を作って話す私に、

「先生、よろしくお願いします」

と頭をさげるお母さん。
その言葉を聞いた時に初めて、「あぁ、学校の先生なったのか」という実感を持ち、併せて「どんな支援をできるようにならなければならないのか」とプレッシャーを感じることになった。

初めての家庭訪問がなんとか無事に終わり、再度学校へ。
隣で自転車を漕ぐH先生から「保護者とのやり取り、上手いね」とお褒めの言葉をいただきつつも、頭の中は未知の「支援」でいっぱい。

どうしたものか、と悩みを持ちつつ帰校。
休む間もなく今度は学年会議がある。
同じ学年の先生方と初めての顔合わせ。
初めて続きで、いい具合に緊張感も麻痺。

学年会議は学学年に割り振られた教室で行うらしく、基本的には移動を楽にするために校舎一階の部屋で学年ごとに行われるとのこと。
中1が割り振られていたのは、「ホール」と呼ばれる校内でもっとも広い部屋の、備品室だった。

長机を向かい合わせに並べた空間に、中1教員11名が集まる。
内訳としては担任5名、副担任4名(1名は2クラス兼任)、支援担当2名。

それぞれに自己紹介があり、もともとこの中学で勤めていた教諭が4名と常勤講師が1名。昨年まで非常勤で、今年から産育休代替として常勤の講師が1名。転入の教諭が2名。私を含む、新卒の教諭1名と講師2名という構成だった。

新卒3名はただただ流れを見守るしかできない中、経験豊富な先生方の先導で、まずは学年主任が決まる。次に支援担当以外で誰がどの組み合わせでどの学級を持つのかが決まっていく。
ちなみに、生徒のクラス自体は昨年度末にもう組み終わっていた。

相談の結果、
1組→転入の主任が担任。新卒講師が副担任。
2組→講師が担任。副担任にベテラン教諭。
3組→新卒教諭が担任。再雇用の教諭が副担任。
4組→転入の教諭が担任。副担任は4組副担任が兼務。
5組→教諭が担任。産育休代替講師が副担任。
となった。

そこから始まったのが、数日後に控えた入学式の打ち合わせ。
この打ち合わせの内容が、新卒講師の私にとってはなかなかに興味深いものであった。

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