「あんた、花してはりまんの? わて、河合してまんね」
明日の言葉(その29)
いままで生きてきて、自分の刺激としたり糧としたりしてきた言葉があります。それを少しずつ紹介していきます。
去年、こんな記事を読んだ。
この中にとても刺激になるというか、最近すごくよく考えることのきっかけとなる文章がある。一部を引用してみたい。
「井筒さんはヨガの瞑想をしていたそうです。その井筒さんがおっしゃるのには、瞑想をすると、自分が『ただ存在しているとしか言いようのないもの』で成り立っていると感じる。同時に、周囲にある森羅万象すべても『存在としか言いようのないもの』で出来上がっていると感じられる意識状態になるという。
『人は〝花がここに存在する〟と表現するが、〝存在というものが花をしている〟と表現してもおかしくないのではないか』。井筒さんは本にそう書いたそうです。
この井筒さんの本を河合さんが読み、著書の中で『あんた、花してはりまんの? わて、河合してまんね』と表現した。これを岸田さんが読み、何と素晴らしいことかと感じたという話が、そのコラムに書いてありました」
「あんた、花してはりまんの? わて、河合してまんね」というのは、何ともほのぼのとした言葉でありながら、哲学的な示唆に富む。稲盛氏は岸田氏同様、この話に大きな衝撃を受けたという。
ボクも衝撃を受けた。
あんた、花してはりまんの?
なるほど。
なんか(ボクの考えなんて浅いとは思うけど)とてもよくわかる気がした。
そして、この文章を読んでから、ちょくちょく自分の中で「ひとりワークショップ」をするようになった。
よくやるのは、自分と合わない人にこれを当てはめてみることだ。
たとえばどうしても好きになれそうもない政治家さんとか、タレントさんとかである。
テレビとか見ながら、心の中でこう呼びかけてみる(○○にはたとえばその政治家さんの名前が入る)。
あんた、○○してはりまんの?
面白いもので、そう呼びかけてみるだけで、ずいぶんその人の印象が変わる。
なるほど、基本ボクも「あんた」も、同じ「存在としか言いようのないもの」なわけだ。たまたま同じ時代や社会の同じ瞬間に「存在」し、つながっている。
“周囲にある森羅万象すべてが『存在としか言いようのないもの』で出来上がっているように”、「あんた」も森羅万象の中の一部として「存在」している。
そして、大自然が時に自分に厳しく当たるように、いまのボクにとっては「ちょっとイヤな存在」だ。
でも、「それもまた存在」なんだな。
うまく書けないけど、そこがわかると、少し愛しい気持ちになる。
あんた、○○してはりまんの?
なるほど、そうなんや。それはそれでご苦労さんやね。
ちなみにわて、佐藤してまんね。
はいはい、わてもいろいろありまして。
イヤな人でもうまく行くくらいだから、好きな人にこれを当てはめるともっと愛しさが増したりする。
あんた、△△してまんの?
ありがとね、△△してくれて。
さて、「人間」に対する「ひとりワークショップ」は、こんな感じで意外とうまく行くのだが。
でも、花とか木とか、雲とか月とかは、ずっと難しい。
そういう自然のものに「あんた、花してはりまんの」って呼びかけても、いままであんまりしっくり来なかった。
ただ、今日、少し出来た気がした。
講演のための日帰り出張で大阪に来ていて、ちょっとだけ早く着いたので、梅田センタービルの中庭に面するカフェに入り、ぼんやりと目の前の1本の孤独な木を見ていた時のこと。
ふと、あんた、木ぃしてはりまんの? って呼びかけてみた。
で、なんかすっと、自然にこう思えた。
あー、木ぃしてはるわ、って。
そっか。
木ぃしてはるんやね。
ボクのおらんとこで、いままでもずぅっと木ぃしてはったんやね。
そかそか。それはそれは。
ちなみに、わて、ずっと佐藤してまんね。
そうやって、しばらくぼんやり木の「存在」を感じていた。
・・・いや、オカルト的なものではないよw
なんというか、初めてすっと木の「存在」を感じられ、とても愛しく思えただけ。
毎日きちんと周囲の自然を感じていないから、すっと出来なかったんだな。
自然が自分から遠い「存在」になっているんだろう。毎日自然を感じているヒトはもっとすっと出来るんだと思う。
そう、ようやく、存在というものが木をしている、みたいな感覚が、少し深いところでわかった気がする。
次は花とか虫とかに呼びかけてみよう。
雲とか月とかでも、出来るのだろうか。
この感覚、何度も「ひとりワークショップ」して、ちゃんと追ってみたい。
なぜかというと、この感覚がうまく掴めると、病気で死の床とかについても、わりと自然体でいられる気がするから。
そう、大きな「存在」の中の一部でいられるなら、死ぬのもきっと寂しくない。
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。