「巨人時代も大リーグ時代も、どんな緊迫した場面でも、緊張したことは一度もないのです」
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「巨人時代も大リーグ時代も、どんな緊迫した場面でも、緊張したことは一度もないのです」

明日の言葉(その12)
いままで生きてきて、自分の糧としてきた言葉があります。それを少しずつ紹介していきます。


昔に比べて、緊張することが少なくなった。

以前はとても(本当にとても)緊張するタイプだった。
しかも赤面症だった。
人前で耳まで真っ赤になった。

若いときだけでなく、40代になってからもわりと緊張していた(いまは58歳)。

緊張して眠れないことなんてしょっちゅう。
なにか大きなプレゼンとかがあると、前の晩はまったく眠れなかった。

「それなりに場数踏んでるオッサンのくせに緊張するなよみっともない」とか思えば思うほど緊張が増した。

人前でスピーチするなんて人生の一番の不得意科目だった

少しのことでアガってしまい、声が震えて恥ずかしい思いをするなんてしょっちゅうだった。


でも。
いまはほとんど緊張しない。

その理由ははっきりわかっている。

自分をよく見せようとするから緊張する、ということに、あるとき気づいたからである。

少しでもよく見せよう、格好いい自分を見せよう、うまいことやろう、期待以上の結果を出そう、と考えるから緊張する。

それをやめればいい。
いまの自分は「この程度の自分」である。
それはどうやっても変えようがないから、それをそのまま見せるしかない。
そのまんまの、100%を出そう。

それがわかってからは、ウソのように緊張しなくなった。


理屈上では、実は前から知っていた。
たぶんどっかで読んだんだろう。よく見せようとするから緊張するんだって。

でも、以下の話を聞いてから、なんか「イメージとして具体的にわかった」のである。

それは、まだヤンキースで現役だったころの松井秀喜さんが、あるテレビ番組で話してくれた話。

「世界で一番受けたい授業」という番組だった。
そこで彼は「緊張せずに100%チカラを出すための方法」という特別講義をしたのである。

それはこんな話だった(話し言葉をメモったので正確な引用ではない)。



なによりもまず、きっちり今現在の自分の100%を発揮することが大切です。80%(さぼり)でも120%(ラッキー)でもいけません。100%を発揮する。

そのためにはまず「自分の100%」を知らなければいけません。
それを知っていれば決して緊張はせず、自分の今の実力を出し切れます。

たとえば相手が大リーグを代表するようないいピッチャーだったら、「今の自分の100%では打てない」という冷静な判断が前提となります。

打てるかもしれない、打ってやろう、とは考えない。今の自分では打てないというところから始める。

そのうえで、もしこのコースに球が来たら今の自分でも打てる可能性がある、と考えてそれを待つのです。

ラッキーで他のコースも打てるかもしれないとは考えない。
もしかしたら打てるかもしれないけど、それは自分のチカラではなく運のチカラなのです。

打席ではそうやって頭を整理して物事に望むので緊張はしません。

観客の声援やブーイング、マスコミのバッシングなども自分ではコントロールできないので気にしません。ゆえに緊張しません。

だから、巨人時代も大リーグ時代も、どんな緊迫した場面でも、緊張したことは一度もないのです。



どの部分を切りとっても「いい言葉」なので、思わず長く引用してしまった。なるほどー、と納得感の強い話であった。

特に、最後のこの文章が、ボクの目に焼き付いた。

巨人時代も大リーグ時代も、どんな緊迫した場面でも、緊張したことは一度もないのです。


すごくないですか?

満員の東京ドーム、満員のヤンキースタジアム、それも優勝がかかったような緊迫した打席。

その打席で、リラックスしている松井秀喜。

この姿が、イメージとして強烈に目に焼き付いている。

そして、緊張しそうな場面で、このイメージを思い出し、「松井秀喜はどうやってたっけ?」と思い出すきっかけにしている


たとえば、講演とかで、急に難しい質問を出されるとする。

その瞬間、「う、やばい、答えられないかもしれない!」と思い、頭が真っ白になり、「アガり」がくる。

そういうとき、この言葉を思い出す。

あー、そうだった、満員のヤンキースタジアムですら緊張しない彼のやり方があったんだった。そう、「今の自分では打てない」ということに正直になればいいんだ、と、思い出すのである。

そうすると、すっと楽になる。
「わからない」って正直に言えばいいや、と、リラックスする。

そうすると不思議なもんで、「答えられないかも」と思っていたのに、するすると頭の中から答えっぽいものが出てくる。

きっとリラックスしたからだろう。
いわゆる「自然とバットが出てヒットになった」みたいな結果になるのである。


この話の中では、ここもとても大事だなぁと思う。

観客の声援やブーイング、マスコミのバッシングなども自分ではコントロールできないので気にしません。ゆえに緊張しません。


自分がコントロールできないものは、考えても仕方がない。
だから気にしない。
気にしないから、「ブーイングされないようにうまくやろう」とか「バッシングうけないように挽回しよう」とかも考えない。
だから、緊張しない。
自分を100%以上に見せようとしなければいい。


この考え方を知ってから、ネットでの炎上や、汚い言葉でのバッシングなどもわりと流せるようになった。

もちろん気になるときはある。
傷つくときもたくさんある。

でも、かなりさらりと流せるようになった。

だって仕方ない。
コントロールできないんだもの、それを気にしても仕方がない。
ただ、自分の100%を出すことに集中しよう。


とはいえ、いまでも緊張することはある。

憧れの人(人生的に尊敬する人)に会うときである。

そういう時は「その人の前でいい格好を見せたい」から、とても緊張する。

直し方はわかってる。
松井方式でやればいい。

でも、あえて直さない。
だって、背伸びするためにその人に会っている

そういうときくらい、緊張して背伸びくらいする自分でいたい。

そうしないと成長はないような気がする。


さて、今週も緊張する大きな仕事が待っている。

松井秀喜方式で、自分の100%、出してきます。





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さとなお(佐藤尚之)

古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。

ありがとうございます!じっくりじんわり書いていきます。
コミュニケーション・ディレクターです。 さとなお名義で食やエッセイの本、佐藤尚之名義で広告関係の本を書いています。最新刊は『ファンベース』(ちくま新書)。 1995年から個人サイト「さとなお.com」を運営しています。