いま、イギリス労働党がすごい。入門から一気にコアな議論にご案内
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いま、イギリス労働党がすごい。入門から一気にコアな議論にご案内

イギリスの最大野党(2018年11月現在)である労働党はかつての全く違うリーダーシップで勢力を急激に伸ばしている。イギリス最大のポリティカルフェス、ワールド・トランスフォームド・フェスティバル(UK for the World Transformed Festival、以下TWTフェス)の参加ルポをお届けする。

写真はTWTフェスで話す労働党党首ジェレミー・コービン。Photo credit Jess Graham (TNI)

9月末の4日間、私は興奮と希望にあふれるリバプールにいた。リバプールはマンチェスターから電車で1時間、サッカー好きなら馴染みのあるイギリスの北西部の都市。サッカーよりもビートルズの故郷と言ったほうが響く人も多いだろう。歴史的に労働党の支持基盤が強く、近年の党大会はリバプールとブライトン交互に開催されている。私が主に参加したのは党大会と平行して行われた「モメンタム(momentum、後述)」という労働党の草の根運動が様々な進歩的な組織と共同して行うフェスティバル、TWTフェスだ。
9月25日最終日、私は午前のセッションに招待されて、国民保健サービス(NHS)の民営化とイギリスの国際援助政策(A Global NHS? Public Services Across Borders)の議論を終えた。ほとんどの公共サービスを民営化したイギリスでかろうじて公的管理を守るNHSは最後の砦となっている。労働党はNHSの民営化をストップし、適切な公的資金を投入しその再建を目指している。また国際協力の分野ではイギリスは援助や融資を通じて自国のモデルである民営化を途上国で推進してきた代表格の国であるが、現労働党はその政策を停止し、すべての人が享受できる公的保健サービスや公教育の実現に注力するビジョン[1]を打ち出した。その後、私はくたくたではあったが、最後の夜のTWTフェスのセッション「Towards a Socialist Government」へ向かった。会場は満員でセキュリティー上の理由からボランティアの人に入れないと言われたが何とかもぐりこんだ。事実、立つ場所もないほど盛況。私は党首ジェレミー・コービンとコンビを組む影の財務大臣ジョン・マクドネル議員の話を聞きたかった。
※「影の」というのは二大政党制の英国は最大野党(現在は労働党)は、政権をとった場合の模擬内閣として党内に影の内閣(Shadow Cabinet)が組織されており、すべての分野で影の大臣がいる。たとえばレベッカ・ロング・バーレイは影のビジネス・エネルギー・産業政策大臣であり、マクドネル議員と労働党の経済政策を牽引する。

このセッションは労働党内の「社会主義者キャンペーン」議員グループが主催した。彼らは2015年の党首選でコービンを擁立した議員たちで、トニー・ブレアが提唱した「第三の道」――市場原理主義を部分的に取り入れた政治路線――が20年主流を占めてきた労働党内で勝利し、リーダーシップを刷新した快挙をなしとげたグループだ。会場はエネルギー、情熱、希望、歓喜、変化への熱望で湧き上がっていた。
「すべての議員たちは労働者とともに!」
「普通の人々とコミュニティーのために!」
緊縮財政の影響をもろに受けた人たちのために闘う、とソーシャリスト労働党のビジョンを掲げた。そうした現在の労働党のリーダーシップが掲げる「社会主義」を私たちの知る旧来の社会主義と直結させることは間違っている。党の挑戦は新しい労働者、コミュニティー、普通の人々が中心の開かれた21世紀の新しい社会主義を確立することなのだ。コービンが党首になって19万人だった党員は54万人になった。一方、与党保守党の党員は12万4千人である。「英国を再建する。多くの人々のために、少数者のためではなく‘for the many, not the few’」という言葉が政治的なスローガンを超える現実味があるのが現在のイギリスであり労働党なのだ。

TWTフェスを主催するのは労働党の一部でもありながら絶妙な距離を保ち、党の民主化を求め、社会的政策を引っ張る草の根政治運動「モメンタム」である。事実、モメンタムは労働党内で社会正義や社会主義的な勢力を広げるために尽力し、モメンタムの貢献はコービン党首の誕生と切っても切り離せない。TWTフェスは今年3回目の開催で前回の5千人を上回る規模となった。労働運動、アーティスト、ユースムーブメント、研究者、政治家、NGOや国際連帯運動を広くつなげ真摯な政策議論をするスペースを作り出している。党大会に参加する労働党の議員たちが積極的にTWTフェスの議論に参加し、TWTフェスの参加者が党大会にも足を運ぶ。TWTフェスの3つの会場と党大会の会場は徒歩圏内だ。   その2へ続く

[1] The World For the Many Not the Few, The Labour party’s vision for international development https://www.policyforum.labour.org.uk/uploads/editor/files/World_For_The_Many.pdf

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1974年生まれ。2001年にオランダに移住、アムステルダムの政策研究NGO トランスナショナル研究所(TNI)の研究員。現在ベルギー在住。環境と地域と人を守る公共政策のリサーチと社会運動の支援が仕事。趣味はジョギング、料理、空手の稽古(沖縄剛柔流)。