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ウィリアム皇太子とアースショットプライズ

2023年11月5日、イギリスのウィリアム皇太子がシンガポールに到着し、アジアで初めて開催されるEarthshot Prize(アースショット賞)の授賞式に参加されます。この賞は、気候変動と地球を救うための革新的な解決策と技術を持つ環境イノベーターをサポートすることを目的としています。
ウィリアム王子は11月7日火曜日に行われる授賞式でスピーチを行い、5つのカテゴリー(自然保護、クリーンエア、海洋再生、廃棄物削減、気候変動)で受賞者が発表されます。

ウィリアム皇太子はスピーチで以下のようなことも語られていました。
"The last year has been one of great change and even greater challenge.“
"A year in which the effects of the climate crisis have become too visible to be ignored.“
"And a year that has left so many feeling defeated, their hope dwindling.”
"However, as we have seen tonight, hope does remain."
(「昨年は大きな変化と、さらに大きな挑戦の年でした」
「気候危機の影響が無視できないほど目に見えるようになった1年でした。」
「そして、多くの人々が敗北を感じ、希望が失われつつある1年でした。」
「しかし、今夜私たちが目にしたように、希望は残されている。」)

2023年の受賞者

授賞式では5人の受賞者が自然保護、クリーンエア、海洋の復活、廃棄物削減、気候変動の5つのカテゴリーから選ばれ、各受賞者には100万ポンド(約1.8億円)が授与され、それぞれのプロジェクトを世界規模に展開するために利用できます。今年は1,300人のノミネートから6大陸を代表する15人のファイナリストの中から選ばれました。

2022のアースショットの受賞者とウィリアム皇太子ご夫妻

初の授賞式は2021年にロンドンにて、昨年はボストンで行われました。2021年の会では日本からWOTA BOXが最終選考に残りました。2022年に選ばれたインドの「Kheyti」は気候変動の影響を受ける自国で、コスト削減と収穫量の増加を通じて小規模農家の生活を守るための先駆的ソリューション、「Greenhouse-in-a-Box」を開発。そして、女性が主導する「QIWRN」のプログラムは、およそ6万年にわたり伝わるオーストラリアの先住民たちの知恵とデジタルテクノロジーを組み合わせたアプローチによって、陸と海を守ることを目標としており、この団体が行うグレートバリアリーフの保護活動が受賞の決め手に。そして、Notplaというロンドンに拠点を置くスタートアップは、海藻からプラスチックに代わる新たな梱包材を開発。気候変動を修復する部門では、44.01(オマーン)が受賞。幼なじみだという創業者たちが開発したのは、二酸化炭素(CO2)を鉱物化し、地下に永久保存するという画期的なテクノロジー。拠点とするオマーンのほか、欧米、アジア、オーストラリアに豊富な「かんらん岩」を利用し、CO2を大気中から安全かつ効率的に、そして永久に、取り除くことができるそう。

アースショットという賞の名前は1962年のジョン・F・ケネディ大統領の「ムーンショット」スピーチに由来。2030年までに環境問題に対する解決策を見つけるという類似の目標を立てた。

2023年の最終選考に選ばれたそれぞれの企業は魅力的なのですが、その中の一つ、私が注目している企業Circをご紹介します。ファッションとテキスタイル産業は、世界で最も廃棄物を生み出す産業の一つであり、年間で約100百万トン以上のテキスタイルが生産されています。この産業は製造のすべての過程と服の輸送を通じて、年間の地球温暖化ガス排出量の約10%を占めており、国際航空旅行と海上輸送の排出量を合わせたものよりも多いとされています。

安価でトレンディな衣類を指すファストファッションの成長により、環境への影響が増加し、2030年までに排出量が50%以上増加するとの予測があります価格が安くなったということは衣類を捨てるサイクルも早くなっているということで、衣類の廃棄物処理も問題になっています。 先進国の使用済み衣類はアフリカなどに輸出され、アフリカの西海岸やチリの砂漠に捨てられています。また、ほとんどの衣類はリサイクルが難しい綿とポリエステルのブレンドでできており、そのためリサイクル率は非常に低いとされています。しかし、「Circ」は、化学的なプロセスを使用してポリエステルと綿を分離し、再利用可能な材料に変える方法を開発しました。これにより、ポリエステルは液化しプラスチックチップに変わり、綿は綿に再生されます。両方の材料は新しい衣類の材料にも使用できるようになります。Circは最初、タバコの葉をバイオ燃料に変換することに焦点を当てており、その後、この技術を再利用してポリエステルとコットンの衣類をリサイクルする方法を見つけ出したそうです。Circは工場を開設し、世界中で衣類のリサイクルを拡大する計画を立てており、廃棄物の処分や焼却を減らすことを目指しています。Circは、Patagoniaと提携し、Bill GatesのBreakthrough Energy Venturesの支援を受けていますが、今回は、ウィリアム皇太子が主催する環境問題の解決策に対するアースショットプライズの最終候補となりました。ファッション業界の持続可能性への取り組みがますます重要となる中、注目を集めそうなスタートアップです。

イスタナ宮殿

アースショット・ウィークには、各国のリーダーや企業、投資家たちとアースショット賞の受賞者・ファイナリストたちが集まり、地球の修復を目指す技術の展開を加速させ、具体的な行動を促進させることが目的とされています。ウィリアム皇太子は4日間の滞在中にシンガポールのターマン・シャンムガラトナム大統領とリー・シェン・ルン首相とシンガポールのイスタナ宮殿で会うそうです。シンガポールは再生可能エネルギーへの転換を進めており、クリーンエネルギーの導入が増えています。また、シンガポールでは環境教育が重要視されています。炭素税も2030年には引き上げが決まっており、今回のアースショットの件で企業のネットゼロに向けての動きがますます加速する可能性もあります。

皇太子はシンガポールで地球の環境を修復するようなサステイナブルなビジネスや活動をしている人たちと会う他、また、野生動物部品の違法取引に対処するためのUnited for Wildlife サミットにも参加されるそうです。


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