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【珈琲と文学】サマセット・モーム『月と六ペンス』

本日の文学案内は
サマセット・モーム『月と六ペンス』です。
(訳:金原瑞人)

あらすじ

ある夕食会で出会った、冴えない男ストリックランド。ロンドンで、仕事、家庭と何不自由ない暮らしを送っていた彼がある日、忽然と行方をくらませたという。パリで再会した彼の口から真相を聞いたとき、私は耳を疑った。四十をすぎた男が、すべてを捨てて挑んだこととは一ーー。
ある天才画家の情熱の生涯を描き、正気と狂気が混在する人間の本質に迫る、歴史的大ベストセラーの新訳。

新潮文庫 裏表紙あらすじより


解説

1919年に発表された英文学の歴史的名作
ポール・ゴーギャンをモデルに、芸術に取り憑かれて全てを捨てた男の生涯を、彼の友人である「私」の一人称視点で綴った物語。

平凡で安定していた生活を送っていたチャールズ・ストリックランドは、ある日突然家族の前から姿を消す。
彼の夫人から捜索依頼を受けた「私」は、ストリックランドの行方を追いかけ、異国で見つけることに成功する。
しかし、失踪の訳を問われた彼の口から語られたのは「絵を描くため」という信じ難いものだった。

なぜ、安定した生活と家族を捨ててまで、絵描きの道を選んだのか。
彼に何があったのか。
真相は如何にーーー。




中流階級のごく普通の男であったはずのストリックランドは、「私」が再会した時には別人のようだった。
そこにいたのは困窮した生活に身を置き、金も名声も求めず、自分を顧みず、他人の善意を踏み躙るろくでなし男であった。

しかし、「私」をはじめ、ストリックランドを取り巻く人間はみな、何故か一様に彼に惹かれてしまう。どれだけ嫌味を言われようと、彼が身を滅ぼしながら絵に魂を注ぐその姿に、魅せられてしまうのであった。

そんな彼の破滅的な人生に「私」は何を見たか。
壮絶なストーリーはやがて、意外な結末を迎える。

感想・見どころ

サマセット・モームという作家は、淡々とした文体が特徴的で、それが当時の英国文学において人気を博しました。
日本語も原文に忠実に訳されていて、終始平坦な文章が続きます。

初めはそれがちょっと読みにくく、挫折しかけたのですが、次第にストリックランドの凄まじい生き様に引き込まれて、最後は一気に読み進めることができました。

変に大仰な表現で語るより、この文体だからこそ、ストリックランドの人生に説得力と迫力をもたらしているのかもしれないですね…!



すべてを捨てて芸術に憑かれる人間というのは、
一概にいえばドラマチックでかっこいい。
かつて演劇に夢中だった僕も、そんな人生に憧れたことがあります。

だけど、才能があればなんでも許される、というのも違う気がします。
人格というものは何においても必要であるし、身を助けるものだと思います。

今の僕はストリックランドの生き方に、
共感はできない……。

と、はっきり言い切れたらよかったのですが、やっぱり、何かに一途に打ち込める人はいいなと思います。

ストリックランドは人格破綻者として描かれていたけど、情熱だけは本物。
だから、他の登場人物とともに、読み手も彼に惹かれていくのかもしれない。


駆け抜けた人生を振り返るとき、どれだけ大変で、めちゃくちゃで、しんどかったとしても
「やりたいことをやれた」と満足して思えたらいいなと、僕は思います。

それをやり遂げた男の物語が、「月と六ペンス」。
この本が百年も読み継がれる理由がわかる気がします。


珈琲案内⁡

◎エチオピア 浅煎り

「月と六ペンス」のお供にしたい珈琲は、
エチオピアの浅煎りです!

珈琲の発祥地とも言われるエチオピアで栽培される珈琲は、香りが高く、上品な酸味が特徴です。

浅煎りにすることで、その酸味を生かした仕上がりになります。

ストレートで飲むと、爽やかでワインのような味わいが感じられておすすめです。
ミルクを入れても、甘味がぐっと引き立ち、美味しく飲めますよ。

昔は深煎りばかり飲んでいた僕が、エチオピアに出会って浅煎りの魅力を知りました。
酸味が苦手な方は、ぜひエチオピアの浅煎りを飲んでみてください!

エチオピアの珈琲がもたらす香りや味わいは、とてもアーティスティックです。
芸術に魂を注いだストリックランドの物語にぴったりかなと思って、選んでみました。

読書のお供に、美味しい一杯を…


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