風をこぐ 橋本 貴雄著 /読書案内
東吉野村に住んでいる時、私たち夫婦は、超大型犬と一緒に暮らしていた。名前をエルクという。体重は、40キロを超えるが、超大型犬のなかでは小ぶりな方だった。レオンベルガーという犬種で、ゴールデンレトリーバーの顔だけ黒くしたような毛色で、普段はおっとりとしている。犬種紹介のところにも、「静穏に浴しつつ暮らす」と書かれていたが、さすがに超大型犬はエネルギーというか質量が違った。
ある日、散歩の途中でエルクが田舎の坂道を逃げ去ってしまった。「エルク~エルク~」と大声で呼び戻した。エル