【怪異短篇】深夜のETCゲート

場所:坐骨市無垢町 高速道路坐骨料金所 喫煙室

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俺の見間違いだと思いたいんだけどね。

事務所の窓から見ている俺だけじゃなくてさ。
料金ブースの中にいたおばちゃんも見たって言うんだよ。

確かに深夜で眠たくてさ、少しボーっとしてたことは確かだよ。

だけど巡回まで少し時間があったから、何気なくETCゲートの方を見ていたんだ。

ああ、今日は特別車が少ないなってさ。

その日は不思議と車が少なかったんだ。
田舎の高速道路とはいえ、深夜に行き来するトラックでひっきりなしだよ、普通は。

暗い中、料金所と照明の明かりだけぼんやりとしてさ。
がらんとしてたんだよね。

突然フワッと、大型トラックが轢いた鹿みたいな臭いがした。

むっとするような獣臭さ。

荷室に鹿の死骸を押し込んでるような…あの臭いだよ。

でもさ、臭いはどんどん強烈になって思わず鼻をつまんじまうくらいになった。

それこそ、死骸の山に頭でも突っ込んだかってくらいにな。

俺が顔をしかめてそっぽを向こうとすると…

デカいのが来たんだよ。

トラックじゃない。

だが、大型トラックくらいの大きさだった。
四つん這いでさ。
人間みたいな色をした肌でさ。頭は毛がなくて、餓鬼のように膨れた腹をしてた。

真っ赤なギョロついた目をしてさ。

気色悪いことに、俺の方へ顔を向けたまま、ゲートを走り抜けたんだ。

遠近感のおかしな四つん這いの化物と、事務所の窓辺にいた俺は目があっちまった。

奴はスピーカーでも付けたような、どデカい音で荒い呼吸をしてた。

四つん這いのまま手足をひっきりなしに動かして走ってさ、気色悪いピストンみたいだったよ。

車みたいな速度で通り過ぎたんだ。

そいつはすぐ九州方面のランプウェイに登っていった

俺は自分が寝ぼけたのかと思ったよ。

だが、料金ブースのおばちゃんも血相変えて飛び出してきて…幻覚じゃないと分かった。

そう言えば、朝方お偉方が「深夜にお通りになる」ってしきりに話し合ってたよな。

この怪物のことかは分かんねえけど。

しかしいやだね。
あんな怪物が高速道路を行き来するなんて。

あいつは坐骨からどこに行くんだろう。

なんだよ…その顔。

さては信じてねえな。

【おわり】

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