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心の壁【動詞】cocoon(ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』)

We first encountered each other at Haworth House in Yorkshire when my mind was young and the barrier between reality and make-believe had not yet hardened into the shell that cocoons us in adult life. (p.63)
ロチェスター氏と初めて会ったのはヨークシャーのハワース・ハウスに行ったときで、私はまだ幼く、現実と虚構の区別はあいまいで、心を守る殻が十分には固まっていなかったころのことだ。

Jasper Fforde / The Eyre Affair (2001)

本の世界に入って事件を解決する文学刑事シリーズ。主人公が『ジェイン・エア』の登場人物と初めて出会ったときのことを回想する場面。

だいぶ意訳してるが、おもしろいのは、子どもが現実と虚構の区別があいまいなのは、心が未発達だからではなくて、か弱い蛹を守る繭のように、心を虚構から守るシェルターが、十分な強度を持っていないからだとしている点だ。

そのことを示すために、cocoon が動詞として効果的に使われている。

大人が子どもよりもしっかり現実認識ができている(ように見える)のは、心が育ってしっかりしているからではなくて、心を守る壁を内側からせっせと補強しているだけだからなのかもしれない。


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