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フリーランスで疲弊してない?時給2,000円から抜け出すためにやるべきこと。

毎日22時過ぎまで仕事は当たり前。土日も依頼物に追われていて身も心も休むタイミングがない…。息抜きはたまに友達とオシャレなごはん屋さんに行くことくらい。働くって大変…。

飲みはじめて1時間。徐々にお酒が回ってきたタイミングで彼が”ぼそっと”発した。

友達は新卒からIT系の企業で営業職、ウェブデザイナー職を経験し5年目になるタイミングで退職しフリーランスになった。現在はウェブデザイナー職として独立して2年経ち、少しずつ働き方に慣れて来たが周りに同じような働き方をしている友達がおらず孤軍奮闘していた。

私は彼が独立していたことは聞いていたが現状の詳細は知らなかったので、1年ぶりに近況報告を兼ねて飲みに行った。久しぶりもあり、最初はお互い今携わっている案件の話、マッチングアプリでの失敗談、今年から飼いはじめた愛犬話など、仕事とプライベート問わず次々と近況話に花を咲かせた。

ビールから始まり少し強めなハイボール3杯目と酔いが回りはじめたタイミングで、彼はボソッと心の底に置いていた悩みを言いはじめた。

毎日22時過ぎまで仕事は当たり前。土日も依頼物に追われていて身も心も休むタイミングがない…。息抜きはたまに友達とオシャレなごはん屋さんに行くことくらい。働くって大変…。

少し間が空いて、一言目は「だよねぇ…」と返した。

彼も今年で30歳。まさか自分がウェブデザイナーとして独立しているとは考えていなかったらしい。「30歳」って、もう少しオトナで余裕のある生活を送っていると想像していたが、現実はそんなことないんだな…と続けて本音をこぼしていた。

もう少し具体的に今の悩みを深掘って聞いてみると、1番の悩みは「お金」とのことらしい。

現在ウェブデザイナーとしてスタートアップの企業に業務委託として週5日関わりながら、個人でもクラウドワークス経由でバナーやサイト制作の仕事を請け負っている。毎月の売上はおおよそ32万円。税金諸々引いたら手取り27、28万円。時給換算すれば2,000円程度。

別に生活出来ない金額でもないが、平日は毎日22時すぎまで仕事し、土日にバナーやサイト制作の仕事をしている状況から、かなり身も心も「疲弊」している印象を受けた。

結構本気で今の状況を変えたいと思っているが「どう変えたらいいのか分からない…」と言うのと、先日書いた私のnoteを読んでもう少し心に余裕がある働き方をしたいと望んでいたので、多少参考になればと思い今までの経験を掻い摘んで彼に話してみた。(先日書いたnote👇)


1)お金は大事

まず大真面目にフリーランスとして生きていく上でお金が大事なことを虎視眈々と伝えた。もちろん人によっては「お金よりもやりたい仕事をしたい」という方もいるが、東京で自立して自力で生活するにはお金がないとはじまらない。また、ある程度のお金が生まれると徐々に心に余裕が生まれ、案件を選ぶ、働く人を選ぶなど選択肢が増えてくる。

彼の場合「時給2,000円」をまずどうにかしようと話した。理由は、仕事に追われて身も心も疲弊していたからだ。生きるためにはまずは余裕のあるお金が必要だ。

2)可能な限りリモート案件を受ける

これは人によって意見が分かれるが、私は仕事を受ける上で基本的にリモートワーク前提がいいと思う。理由は複数あるが、一番は「複数案件を同時に持つことが出来る」からだ。(※一目を気にせず25分の仮眠を取れるのもよい)

彼の今の状況は、スタートアップ企業1社の中で平日は毎日出社する働き方。これだと出社している時間はその企業の仕事以外は基本対応出来ない。

もちろんリモートワークなら業務中に別の仕事をして良い訳ではない。ただ、リモートワークなら、契約時間外に自宅で別の仕事をすることは問題ない。

上手いやり方なら幾らでも考えればある。ただ、出社してしまうとコンプライアンスや情報セキュリティー面から考えて他社の仕事をすることは不可能。なので可能な限りリモート案件を受けることをオススメした。

3)事業課題の認識と自分のミッションは明確か?

ここからは少し業務的な部分になるが、職種問わずフリーランスなら全員意識して聞いてほしい。

彼は現在ウェブデザイナー職でコスメ系のEC関連のプロジェクトにアサインされているらしい。実務はECサイトのデザイン修正や商品画像の作成、一部SNS投稿も担当しているとのこと。

そこで彼に「なぜ今のプロジェクトにアサインされたと思うか?」と単刀直入に聞いてみた。そしたら下記の回答が返って来た。

▼事業課題
・ECサイト経由の売上向上において、ウェブデザイナー職が不足している
 →サイト改善が間に合ってない、商品掲載が追いついていない

▼自分のミッション
・ECサイトのデザイン修正や商品画像の作成
・SNS担当も不足していることから、そのサポート

まず「事業課題」と「自分のミッション」は必ず把握すべきだ。ここをあやふやにして業務開始すると、どこかで認識の齟齬が生じ結果的に案件継続にならない。

彼の場合すぐに上記の回答が返ってきた。記載している内容が正しいかは私は分かりかねるが、「事業課題は本当にそれだけか?」と突っ込んで聞いたら少し考えてから「WEB広告の運用も上手くいっていないらしい」と答えた。

多くの方は「自分のミッション」だけを意識しているが、企業視点で考えると「事業課題」を解決したいから外部からフリーランスをアサインしているので、常に事業課題から逆算した業務設計や行動を意識すると良いと伝えると、彼はそんなこと今まで誰も教えてくれなかったと驚いていた。

要するに、自分のミッションが完了したら終わりではなく、自分の業務以外でも事業課題に貢献出来ることは何か?と考え、企業の力になれることをレポートラインの方に提案することで、自分の付加価値が上がりより信用・信頼を得ることが可能になる。これは中長期的な関係づくりにおいてとても大事だ。

4)単価交渉しているか?

1にて「お金は大事」と伝えた通り、具体的に契約単価について話を切り出した。

彼は現在おおよそ時給2,000円であり、そもそも希望はいくらがベストなのかを聞いてみた。すると「時給は高ければ高い方がいいのは理解しているが、自分の適正金額が幾らなのかが分からない」と本音を言ってくれた。

なので、まずは彼と希望単価のシミュレーションをしてみた。

▼時給2,000円(※現在)
時給2,000円×週5日(40時間)稼働×4週間=月32万円(年384万円)

▼時給3,000円(案1)
時給3,000円×週5日(40時間)稼働×4週間=月48万円(年576万円)

▼時給5,000円(案2)
時給5,000円×週5日(40時間)稼働×4週間=月80万円(年960万円)

▼時給7,000円(案3)
時給7,000円×週5日(40時間)稼働×4週間=月112万円(年1,344万円)

ざっと3パターンをスマホの電卓で算出してみたところ、月48万円(時給3,000円)だと今よりも楽になれそうだが、可能なら月80万円(時給5,000円)を目指したいと言っていた。望むのは自由だ。ここから具体的な実現ラインを模索していく。

・ ・ ・

4-1)市場価格を確認する

まずは「ウェブデザイナー職」が市場においてどれくらいの価格設定をされているのかを把握することが大事だ。これはウェブデザイナーだけに限らず、営業、マーケ、CS、人事など、全ての職種に当てはまる。

適当に案件プラットフォームの「複業クラウド」でウェブデザイナー職の案件を検索したところ、結論価格帯はかなりピンキリだった。

広告バナー制作のみならば時給2,000~3,000円程度、ホームページ制作なら1本あたり20万円程度(時給5,000円程度)、UI/UXデザイナーだと時給5,000~8,000円程度、デザイン全般のディレクション業務になると~10,000円程度と幅広かった。

なので、市場的にウェブデザイナーで時給5,000円はそこまで難しくなさそうと二人で話していた。

4-2)経営状態は良好か?

続いては、現在契約をしている企業の経営状態について把握する必要がある。

そもそも企業の経営状況が良好(売上:◯・利益:◯)なら単価交渉の可能性はある。一方で、経営状況が悪化(売上:△・利益:×)しているなら単価交渉はかなり難しいと考える。
※経営状況(売上:○・利益:×)の場合、企業として先行投資のフェーズにある可能性が高いので、ダメ元で交渉してみるのは良さそう。

上場企業であれば有価証券報告書にて経営状態を確認出来るし、もしベンチャー企業であれば営業利益が増えているか?採用人数は増加しているか?広告宣伝費は増えているか?などで、なんとなく社内の経営状態は把握出来る。

彼が契約している企業は上記の話を考えると経営状態は良さそうなので、具体的に単価交渉をすることを提案した。

※彼が現在契約をしている企業名及び経営状況について具体的な詳細は聞かず、ここでは話を進める上で「経営状態は良い」と判断した。

4-3)自分のミッションが事業にどのような影響を与えたかプレゼンする

彼の希望時給が市場価格内に収まり企業の経営状態も良好と判断した上で、具体的に単価交渉をしてみることになった。

まず「契約単価交渉」においてシンプルに「時給を上げて下さい!」は論外だ。企業は当たり前に少ない予算で高いパフォーマンスをフリーランスに求めているにも関わらず、フリーランスの方から単価交渉をされたら別の安い単価で対応出来る人を探します、となる。

なので、単価交渉をする為には事前の戦略がかなり重要。

今回は「常に期待値を上回ること」「事業貢献を可視化し伝えること」の2点を彼に伝えた。

まず「常に期待値を上回ること」は先ほど話したことと重複するので下記を引用する。

自分のミッションが完了したら終わりではなく、自分の業務以外でも事業課題に貢献出来ることは何か?と考え、企業の力になれることをレポートラインの方に提案することで、自分の付加価値が上がりより信用・信頼を得ることが中長期的な関係づくりにおいてとても大事だ。

抜粋:3)事業課題の認識と自分のミッションは明確か?

私はアサインされるプロジェクトの全てにおいて「事業責任者 / プロジェクト責任者」として業務にあたることを意識している。

自分が事業責任者としてPLに責任を持つ立場の場合、今の事業課題は何か?その課題を解決する為にいつまでに何をすべきなのか?その為に誰の力を借りる必要があるのか?を常に考えながら仕事をする。

彼の場合、「ECサイトのデザイン修正や商品画像の作成」が自分のミッションではあるが、レイヤーを上げて事業課題である「ECサイト経由の売上向上」を考えると、ただサイト改修や商品画像の作成をするだけではなく、全体最適を考え「売上を上げる為に効果的な他社事例を調べアウトプットする」「外注を辞めより社内でPDCAが回る体制を検討する」「WEB広告運用が上手くいっていないから、マーケ部と連携を取りながら改善サイクルを回す」など考えうることは山ほどある。

二人とももう酔いなんてとっくに覚めて彼は必死にスマホに「やるべきこと」をメモしていた。そうだ、仕事は自ら生み出すものだ。

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次の「事業貢献を可視化し伝えること」は、特にフリーランスの方にとってかなり重要だ。

たまにフリーランスの方で自分のミッションを完了すると、「ほら、私貢献しているでしょ?」と言う人がいるが、その発言を一度恥じた方がいい。「先生、宿題やったよー!えらいでしょ!」という子どもと同じレベルだ。

先ほどの期待値を上回ることに少し通じるが、自分のミッションがどれくらい事業貢献しているのかを?自分なりにまとめて、レポートラインの方に伝えることが大事だ。なぜならば、レポートラインの方含め企業側としては「この人、いつも期待以上のことやってくれて有難いな」と思ったとしても、これまで何をやってくれたかが簡潔にまとまっていないと契約単価を改善するにしても具体的に検討が進まない。

なので、四半期に一度なのか、月次報告なのか、「自分が実行したことがどれくらいチーム貢献したのか、事業貢献したのか、それが企業・プロジェクトとしてどう良くなっているのか」を言語化し可視化し、分かりやすく伝えることが大事だ。

もう一度言うが、「ちゃんとやってるでしょ!知ってるでしょ!」のスタンスではダメだ。

彼は悲しそうな顔でスマホ画面を見て、「まさにおれだ…」とひとりで反省をしていた。(笑)

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気づいたら23時を回りラストオーダーの時間になっていた。

彼はひとまず3ヶ月後を見据えて現状の仕事周りを整理し、自分の業務がどれほど事業貢献しているのかをまとめてレポートラインの方にプレゼンするとやる気に満ち溢れていた。

最後にハイボールを飲み干し、その日は別れた。時々LINEで進捗の報告をしてくれるが中々順調らしい。「事業責任者の目線になるのはハードルがたけぇ…」と愚痴をこぼしながらも今日も時給単価の市場価値を高める為に彼なりに精一杯努力をしているようだ。

最後に一言。もし担当している案件の単価が著しく低かったり単価交渉をしても中々上がらない場合は、別の案件に切り替えましょう。中長期的に嫌々ながら仕事をすることは健康的にあまりよろしくないです。請け負う案件を自己判断出来るのがフリーランスのメリットでもあるので、長い目で仕事に向き合うことが大事ですね。


最近本に載りました(P144)📚

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笹本康貴(ささもとこうき)

1992年生まれ 千葉県出身
2016年 法政大学 卒業、新卒としてサイバーエージェントグループ会社に入社。新規営業として大手飲料・食品メーカーにウェブ広告媒体の販売並びに、小売店に対する店舗集客ソリューションの提供に従事。
2019年 マーケティング戦略策定を主軸に独立。
2021年 re株式会社を設立し、現在に至る。

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