妬むことは悪いことでもない

善行とは、投資である。

 いきなり何いってんだと思われるかもしれないんだが、たまには気分を変えて、個人的な人生観でも書こうかという気分だったので、なんかそれっぽい言葉を捏造してみた。

 さて、こんな言葉をいきなり冒頭に上げたのは、知り合いに、誰かを妬んだりとか、だれかのせいにしたりだとか、してあげたのになにも返してもらえなかったとか思うのを嫌がるお人好しがいるからだ。

 僕がその子に対して思うのは、別に妬むのは悪いことじゃないし、誰かのせいにするのも悪いことではないし、下心はあって当たり前だってこと。

 なぜならば、妬んだり羨んだりする気持ちは、現状に対しての不満から発生するからである。

 どうしてアイツは美人な彼女がいるんだろう?どうしてアイツは金持ちなんだろう?どうしてアイツは幸せなんだろう?俺はこんなに不幸せなのに!

 そんな感情を抱くのは当然だ。よりよい場所、より良い資源、よりよい環境。今よりもっと良いものを求め続けるのは極自然な欲求だし、ソレが手近にあるならそいつから奪い取ったら手っ取り早いと思うのもわかりやすい欲求だ。

 もしも貴方がお菓子を食べたくなったとして、家にあるお菓子を食べるのと、スーパーにあるお菓子を買って食べるのならどっちが手っ取り早いだろう。断然前者ではないだろうか。

 でも僕たちは、家にあるお菓子――他人の物、を奪うことは基本的に許されていない。僕たちは相手のものを勝手に奪ったりしないという約束のもとで社会を作り、その社会で生きていく動物だからだ。

 そんなわけで僕らは、そんなんしらねえぜヒャッハー!って奪うと刑務所行きになる。僕もそんなヒャッハーの民と社会生活を一緒に営むのは嫌だ。普通に怖い。

 だから行き場のない妬みは解消されないし、嫉妬というのは無限に湧き出てくる。これを解決する方法は、今の自分の状況の不満を何らかの形で解消するしかないので、そこは各々でやらなくてはいけないが、だいじなことはひとつだ。

 妬みとは、自分の状況が良くないぞ、ということに対するアラート、あるいは自分はもっと良いものを得るべきだと考えているのでその欲求を満たすべきだ、というお知らせでしか無い、ということ。

 睡眠欲や食欲と変わらない反応なので、妬みがあることは悪いことじゃない。体の普通の反応だ。大事なのは、ソレが社会生活を営む上で困らないようにうまく解消する方法を見つけること。暗い感情だと無理に蓋をしたり、罪悪感を抱いて自分を責め立てなくても良い感情だってことだ。

 2つ目にうつろう。誰かのせいにするのも悪いことではない。なぜかっていうと、責任が誰にどれぐらいあるかを判断するのは、自分でも自分と問題を起こした人でもなく、責任を取らせる立場の人の仕事だからだ。そして自分が悪いと言っていると大体の場合必要以上に責任を追うことになるし、なにか問題が起きたときに必要なのは責任を取る人よりも解決する人と、ソレを二度と起こらないようにする人だから。(大体の場合、二度と起こらないなんてことはなくて、失敗は二度三度と起こるが)

 なので誰かのせいにするのは悪いことじゃない。自分が悪くないと感じているならなおさらだ。公平な視点で裁く誰かに責任があると言われたときに初めて責任を果たせばいい。まあ、自分のせいじゃないと言い続けた結果失う信頼もあるので、程々に謙虚なふりをしておくぐらいのが生きやすいんじゃないかなってぐらいでいいと思う。毎日自分を攻めてたら不健康だし、解決する物事も自分が悪かったで片付けて再発したりとかする場合があるので、程々に自分勝手な方が丁度いいと思う。

 3つ目。なにか善行をしたときになにも返してもらえないのに腹を立てる。ソレも別に悪いことではない。僕たちはだいたい、よいことをされるとよいことをしかえしたくなる。コウモリの報恩性といって、手に入れた利益は分かち合ったほうが全体の生存率が上がる、という社会性動物の習性のひとつだ。利益を得るだけ得てなにも返さないやつがいると、この仕組みが崩れるので、これに腹をたてるのは動物としてとてもただしい反応である。善行とは生き延びるための投資――保険のほうが適切だろうか。保険のようなものなので、なにかしたら見返りを求めようとするのは普通の感情である。投資したものはもどってこないので、群れの仲間ではなかったんだなぐらいに思っておけばいい。最初は協力し、あとは返された反応を返すのが一番楽だ。裏切りには裏切りを、信頼には信頼を。しっぺ返しで生きていくのは悪いことではないし、その環状は極普通のものだ。

 ところでこんなにながなが書いてなにがしたいかというと、毎日自分を責めて生きている知り合いが多すぎるので、これぐらい開き直って生きればいいのにね、ということを書きたかった。

 割となにも返せない無職なので、こんなところで借りた恩義を恩送りしている。そういうわけで眠れない夜を過ごしたり自分を責めて生きている名前も知らない貴方に幸いがありますように。

 良い夜を。

 割と真剣に、そう祈っている。



 

 

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