天ぷらは熱い方がいい
「ちょっくら釣りに行ってくる」
夫は前日にそう言い残すと、丑三つ時には用意をし、私が起きる頃には姿形もなく、ベッドに寝ていた時の布団の形を残したまま、どこかの海へと出かけて行った。
夫はその日の昼過ぎ、ちょうどいいサイズの鱚を50匹前後、クーラーボックスに入れて帰ってきた。これが磯野家の波平であれば、魚屋で調達してきた代物である可能性も拭い切れないが、これは夫の収穫である。
私は家にいるだけで、お金も使わずに晩御飯をゲットすることができた。
なんと言うことだろうか。こんなに素晴らしいことがあっていいのだろうか。
私は夫に感謝をし、ついでに鱗とりと内臓とりもお願いする。これは釣り人の仕事であり、私の仕事ではない。あとは好きに調理するようにとのことで、私は鱚を三枚に下ろした。
体長15cmほどの鱚や鯵の中骨は唐揚げにすると最高のつまみになる。三枚に下ろして、身はふんわりと天ぷらにして、中骨はカリッと唐揚げにして食べたい。
夕方全ての魚を捌き終わった私は、他に天ぷらの材料になりそうな食材を仕入れ、早速天ぷら作りを開始した。
私は天ぷら粉を水で溶き、早速具材を放り込んでは熱した油に投入。
ジュワジュワ、パチパチと半分液体だった衣がサクサクと揚がっていく。
いい感じに色がついてきたところで、皿にあげる。
ダイニングテーブルに持っていく前に、私はそれに塩を振る。
菜箸を箸に持ち替えて、あ〜ん、パクリっ! さく! ホロ! うんまー!!
そして、ぐびっとビールを一口。
最高!!
鱚の身はほろほろと口の中で解けていき、そして口当たりが軽い。いくらでもいけそう。第二陣を揚げ、そちらはダイニングテーブルで飲んでいる夫に持っていく。本来であれば、釣り人に一番先に食べてもらうところだろうが、こればかりは調理する人の特権とばかりに、私は立ったまま次から次に揚げたてを頬張る。
天ぷらは揚げたてに限るねぇ。
どれもこれも美味しいが、今回は変わり種の新生姜の天ぷらがつまみに最強。紅生姜を天ぷらにしたかったが、スーパーで売っていたのは、牛丼用の細切りのみ。仕方がないのでと新生姜を買ってきたが、これが正解だった。
豚ロースも薄切りを選択したことで、柔らかくて、脂がジュワッと閉じ込められて最高に美味しい。
大量に揚げすぎて食べきれず、翌日分まで残ってしまった。そうなると、やりたいのはこれ!
持ち帰りの焼き鳥屋でもらった焼き鳥のタレが大量に余っていたので……、
二日目のふにゃふにゃの天ぷらにたっぷりとタレをかけて、天丼に。これまた美味しい!
レンチンして、熱いうちにハフハフとかっこんだ。今なら、悪事を洗いざらい自供してしまいそうな気がするぜ。例えば、夜中にこっそりレンチンして作れるポップコーンを一人占めして食べただとか、後ろに人がいるのに、ガマン出来ずにオナラをこいただとか、まだまだあるが私の悪事は尽きることがねぇ。
しかし、天ぷらは熱々に限るねぇ。
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