初めて大麻を見た日


はじめに

 この記事の内容はフィクションであり、実在の人物や組織とは関係がありません。

Nとの出会い

 工場の休憩時間になると、ヤニカス達は一斉に喫煙所へと急ぐ。外が雨であろうと、冬の寒さであろうと関係ない。ただただ、目の前のストレスから一秒でも早くでも逃れたいのだ。そんなある日、「都築だっけ?ライター貸してよ」とNが声をかけてきた。
 彼は同い年で、小太り、いつも何となくだらけた様子で仕事をしていて、見た目は不良というかヤンキーだ。さらには体臭も独特でキツく、ライターを渡した時の「サンキュ!」と笑顔を見せる彼の歯は、虫歯でボロボロでその不健康さに感心した。
 そこからは面倒な事に喫煙所で顔を合わせる度に話しかけてきた。最初は適当にあしらっていたが、変に気に入られたようで、売店で買ったインスタントラーメンを「寒い寒い」と文句を言いながら寒空の下一緒に食べてみたり、仕事終わりに併設されてるジムで体力づくりをしたりと色々した。
 Nはちょっと面倒くさいが根は良い奴なのかもしれない。そう思ったある日、たまには真面目な話をしようとニュースの話題を振ってみた。今思えば話下手な自分らしいチョイスだが、感触は悪くなく特にOD(オーバードーズ)に関しては「ODするくらいなら大麻とかやれば良いのにな」と危ない回答が返ってきた。自分の面白センサーが反応したのでハッタリで知ってる知識を話すと、感心した様子で考えを話してくれた。素行不良だが身内には愛想のよい典型的なタイプ。それが当時のNの印象だ。

〇〇と飯


 その日の勤務が終わり、誘われたので一緒に夕食を食べに行くことに。おススメの店でしかも奢ってくれるらしい。しばらく外で待っていると、ヤンキー御用達である型落ちのプリウスで迎えに来てくれた。Nは車内で煙草を吸いながら爆音でHIPHOP?ラップ?の曲を流し、道中コンビニで水だけを買って何故かNの家に着いた。困惑する自分を横目にNはニヤニヤしながら「とりあえず入れよ」と招き入れた。家はだれもおらず、リビングには十字架やらマリア像が飾ってあり、物珍しさに興味を惹かれたが目的地ではないらしい。案内されたNの部屋は、テレビにローテーブル、ベッドと何とも質素な一人部屋だ。
 Nはカーペットの裏から何かを取り出し、ベッドに腰を下ろした。妙な違和感に耐え切れず、つい「もしかして晩御飯を作ってくれるサプライズ?」と聞いてしまった。「ちげぇよ、うまい飯をもっと美味しく食べるための準備だよ」Nはへへっ、と得意げにニヤニヤした後「都築もやってみる?」と思い切ったように手にしたジップロックから細いたばこのようなものを取り出した。頭で理解するより早く独特の匂いが部屋に広がる。Nはお国柄香水でも付けてるのかと思っていたが、彼の体臭の正体はソレなのだと直感した。ソレ何かを理解した時、激しい後悔が押し寄せた。
 ・・・昔やんちゃしてた人のアホな話を聞くのは好きだが、現在進行形でやらかすバカは全くもって御免だ。勧めてきたのは十中八九秘密を共有したかったのと、共犯で警察にチクられない様にという防衛だろう。下手に逃げても何されるか分からないし吸うなんて以ての外だ、刺されるんじゃないかとパニックになる頭を落ち着かせ、とにかく断ることにした。「む、昔ブロンでバット入っていい思いでなくてさ、、まぁ、そういうのに俺偏見無いから気にしないで」口から出まかせで何とか知っている知識で応戦。
 「あー、、、じゃあ今度は適当なホテルでやるか」とNから提案。ソレらを初めてやると、強い効果で混乱して叫んだりと錯乱状態になる人もいるらしく、怪しまれにくい?場所でやるそうだ。そんな知識はさておき取り合えずその場は何とかなった。さっきまで無理やりにでも吸わせられると思ったが、多分Nは本当に友達に煙草を勧める感覚で、秘密を共有したかっただけなのかもしれない。だとしたら底抜けに悲しいバカだ。
 そんな混乱している自分を横目に「悪いな、俺だけで」と申し訳なさそうにNはソレを吸う。煙草より深く、ゆっくりと深呼吸をするように吸って吐いた。目を閉じて10秒ほどが経つと「っおおぉー…」と少し呻いて身体を左右にふらふらと揺らし始めた。
 おぼつかない手を動かして水を一気に飲み始め、飲み終わる頃には目がキマッていた。ソレを吸うと、喉がとても渇く口渇になるようで、そのためにコンビニで水を買ったのだとか。そこからのNはギンギンの目でツイッターを開き、スクロールするたびに「すげぇすげぇ」と喜び、急に立ち上がってはろれつの回らない即興ラップを披露してくれた。色々と怖くなっちゃった自分は、歩くから早く帰してくれと切に願いながらNが寝るまでご機嫌取りをし、職場の駐車場まで歩いて戻り泣きそうになりながらバイクで帰った。飯なんてどうでも良いし早くこいつから離れようと転職しようと誓った。

最後に

 この記事は違法薬物の使用を推奨するものではありません。また、違法薬物の使用は法律により禁止されており、所持・譲渡・譲受の場合、譲受には5年以下の懲役が科せられます。また、営利目的であれば、7年以下の懲役または情状により7年以下の懲役および200万円以下の罰金が科せられることもあります。
 次回はNの副業と顛末について書こうと思います。遅筆&筆不精のため次回更新日は未定です。

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