見出し画像

第2章 02 まちづくりとは

まちが衰退する原因

前回に続いてまちづくりとは?について考えています。今日は、まちが衰退する(価値が低下する)原因を探ります。

 なぜまちが良くなっていかないのか。その答えは、原因の設定ミスにあります。そもそも、まちに元気がない原因は何なのかという問いに真正面から立ち向かったことがあるのか、ということかもしれません。

 上の図を御覧ください。原因の設定ミスでよくあるパターンをあげています。

 まずは「賑わいがない」という課題。よく言われる事だと思うのですが、よく考えると、賑わいがないというのは現象だと思います。何らかの原因があって、だから賑わいがない。そうであれば、賑わいづくりのために集客イベントをしても原因を解決できるわけではないから、まちは良くならない。その集客イベントが、賑わいがなくなっている現象を生んでいる原因を解決できるものになっているのかが重要であって、集客することに意味は無いと思います。つまり賑わいは結果です。

 次に「既存店舗の衰退」もよく言われます。商業エリアを見渡した時に、商売をしている店舗の売上が下がっている、後継者がいない、又は継がせたくない。よく聞くことです。でもこれも現象。何らかの原因があるから、お店が上手くいかない。だから商業振興で既存店舗の売上を上げるような取り組みをしても福祉的な小手先勝負であってまちを衰退から救えないわけです。

 そして「コミュニティの弱体化」。コミュニティをお祭りに置き換えて考えると分かりやすいのですが、お祭りを支えることができる元気な町衆がいたから、お祭りが盛大だったわけで、その逆は無いわけです。お祭りが盛大に行われたとしても、それで元気な町衆が生まれてくるわけじゃない。ひと昔前に経済産業省がやってましたが、コミュニティの弱体化への支援がまちの衰退を救うとか言って税金で助けることは、問題の本質を完全に見誤っています。

 ここまで来ると「空き店舗・空きビル」が生まれてしまうのは、まさに現象。だから空き店舗や空きビルを解消してもまちは良くならない。空き店舗活用については、経産省が平成15・16年当時に補助制度作ってましたが、全く持って本質ではないものに税金が大量に使われてきた。本当に残念。

 その後に並んでる「駐車場が無い」「集客施設が無い」なんてのは、原因とか現象でもなく、単なる責任転嫁で問答無用で無視したい言い訳でしかない。

 まちに元気がない原因と言われていたり、なんとなく困っている事を問題だと捉えてしまうと、本質が見えなくなってしまう。では原因は何なのでしょうか。

 ここでちょっと脇道に逸れますが、本質的な問題を考えるとなると、「高齢化」「少子化」「人口減少・過疎化」「地価の下落」「環境問題・異常気象」という話を持ち出す人がいます。

 これらは真実ではあるけど、いくらこれらの問題の解決を考えても、そのまちを具体的に良くするには道のりが長すぎる。日本全体で起こっていることだったり、世界で問題になっていることだったりして、そもそも解決が困難または複雑で政治がらみ、利権がらみだったりしている。(地価の下落は、日本はバブルになったのか、あっさり解消しましたね。)

 このような大問題をまちレベルで捉えて、まちに元気が無い原因だと言っても、解決することが出来ない。これらは真実なんだけど、意味のない問い掛けだと思います。True But Useless。

 それよりも、まちに元気が無い原因をもっとシンプルに捉える必要があると思います。

原因の再定義

 では、まちに元気が無い原因をシンプルに示しましょう。

 とても簡単です。
 それは多くの人がそのまちに見向きもしなくなったからです。

 とても悲しい話ではあるのですが、衰退の原因は、多くの人にとって必要ではなくなってしまった、用の無いまちに成り下がってしまったというシンプルな話です。

 もう少し丁寧で、かつまちの役割という視点で言うと、多くの人がまちに求めている価値が変化したからなんです。だから多くの人にとって用が無い。これまで、まちがみなさんに提供してきた価値を、もはやみなさんは求めていない。結果多くの人から見放され元気が無いわけです。これが元気が無いまちの真実です。多くの人が興味があって、用事があって、まちを大切に思っていたらまちは元気を失わないはずなんです。

 元気が無いというのを「まちの価値が低下した」と言い換えても良いです。つまり、まちに求められている価値の変化というような、社会的経済的な時代の大きな波がやってきてしまっている。

 そんな状況の中で、どこかの誰かがやっていた流行りの事業を小手先勝負で真似たって上手くいくわけないわけです。対処療法でなんとかなった時代は終了。だから、いくら事業をしたってまちが良くならないんです。

変遷するまちの役割

 では、まちがこれまで私たちに提供していた価値とは何だったのでしょう。すごく単純に商業地を例に考えてみます。

 昔は、近隣型の商業地では日用品を、広域型の商業地では日用品に加えて贅沢品を買うことができたと思います。みんな商品やサービスを求めて、まちにやってきました。何でまちにやってきたのでしょうか。それは、まちには商品やサービスを提供する価値があったからです。

 当時、多くの人がまちに求めていた大きな価値の1つは、商品やサービスを提供するということだった。まちは商品等を提供することが価値で、それに人が集まってきたので、まちの中でも中心の商店街は価値があったし、人が中心に向かって動くような動線であったので、中心の商店街の中のそのまた中心のお店が一番儲かっていたわけです。

 日本が右肩上がりだった時の商売人の方は、商品を置けば売れた、という表現をよくするのですがまさにその通り。そこに価値があったわけです。

 しかし、モノを提供するという価値は、みなさんの今の生活がそうであるように、商店街からスーパーに、スーパーから大型商業施設やショッピングセンター、今ではアマゾンや楽天等のオンラインでの商売にほとんど取って代わっている状況です。

 つまり、まちが得意としていた、そして長年作り上げてきた価値は現在では他に移転してしまっている。そんな中で、これまでと同じような振興策では無茶があるし、価値が無いところにイベントして集客ばかりしても日常で人はやって来ないわけですから、そのことでまちが良くなるなんていうのは幻想でしかないわけです。

 そこで、「これから(未来)のまちの価値って何なんだろう?」というのが大切な問いになります。しかし未来は誰にも分からないので、ここで重要なのは、分からないから考えずに数撃ちゃ当たるではく、分からないなら分からないなりに一生懸命考えて仮説を立ててみようというわけです。

 仮説を立ててみる。次回はこのお話から始めたいと思います。


この本全体の目次

はじめに

第1章 21世紀の都市計画家
・自己紹介
・枚方宿くらわんか五六市
・ダーコラボラトリLLP
・株式会社ご近所
・一般社団法人リイド
・株式会社サルッガラボ
・ビーローカルパートナーズ
・STAY local
・株式会社THE MARKET
・ポップベイパートナーズ

第2章 まちづくりとは
・そもそも、まちづくりって?
・まちづくりの誤解
・対処療法は熱しやすく冷めやすい
・まちが衰退する原因
・変遷するまちの役割
・まちには兆しがある
・未来は今ある真実から生まれる
・オススメの作法
・まちづくりとは何か

第3章 これまでとこれから
・未曾有の人口縮退
・みんなという幻想が成立した時代
・個性、能力、才能を活かす時代へ
・人口が減る時代を楽しく生きる法則

第4章 都市計画とは
・都市計画は時代に合わせた処方箋
・21世紀の都市の在り方
・都市の多様性
・しなやかで反脆い都市へ
・多様性を担保し生み出す
・都市経営課題とリソースの問題
・都市計画の主導権は民間へ
・限られたリソースを最大限活かす
・時と共に最適化する仕組み「アジャイル開発」
・人にフォーカス 未来のお客さんを想定する

第5章 少数派がまちを変える
・まちが衰退する原因の裏側で
・身銭を切ってまちを面白がる少数派
・少数派から多数派へ
・「絞って愛情深く」でファンを増やす
・ファンがファンを増やす時代
・ゴールはみんなのために

第6章 地域に新しいチャレンジを創出する
・定期マーケットでまちに革新を起こす
・まちの期待値を高める
・まちの新陳代謝昨日を活性化させる
・定期マーケット10か条
・定期マーケットはプラットフォーム
・【コラム:衰退プロセスと根源治療】

第7章 ご近所を素敵に変えよう
・ご近所のイメージ
・天王寺まで自転車で10分
・バイローカルとは?
・良き商いを守り育てる
・「どっぷり昭和町」
・バイローカルの日
・365日バイローカルマップ
・期待されるまち、選ばれるまちへ
・THE MARKETのおいしい革命
・ご近所の変化、現在進行形のTHE MARKET

第8章 新しい都市計画(序論)
・日常の自己肯定感の低い日本
・大阪の人は京都が嫌い、京都の人は大阪が嫌い
・試行錯誤する上での羅針盤
・建てないことが正義へ
・複合・混合・多様へ
・自分・少数派へ
・行動しながら変化へ
・しなやか・反脆さへ
・小さい(身銭を切る)へ
・内を意識へ
・目に見えないものへ
・未来ありき(playful Driven)へ
・新しい都市計画

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?