赤シャツと星の称号。今はなき、憧れのあの姿。
三月十八日。
今日は朝からとても良い天気で、気分が良かった。
洗濯物を干して、いつもの時間に家を出る。
外の空気は思ったより暖かくて、
もうヒートテックは着なくても良さそうだななんて思った。
春が来たみたいだ。
それなのに、私ときたら、
昨日の夜から言いようのない不安感に襲われている。
眠りも浅く、何となく常に心が緊張していた。
未だ不慣れなアルバイトのせいだろう。
四年前にやっていたとはいえ、出勤はまだ四回目だ。
そんなに焦る必要もないのに、焦ってしまう。
”経験者”という肩書きは、今の私には少し重荷らしい。
真っ青な朝の空を見上げて、歩きながらこれを聞いて、少し泣いた。
某ファストフード店でのアルバイト。
そう、あの黄色のマークの。
以前働いていた時と、大きく変わっていたのは制服だった。
そうだ。私が辞める時、丁度新しい制服の採寸をしていたんだった。
私も新しいサイズを名簿に書き込んだ記憶がある。
結局新しい制服に袖を通すことなく、私は仕事を辞めてしまった。
そしてふと疑問に思った。
”あのポジション”は、どこに行ったんだ?
私が昔働いていた時には、特別な称号を与えられたスタッフ達がいた。
接客のスキルが高いと認められた人に与えられる、星の称号。
その人たちは、赤いシャツを纏うことが出来た(普通は青)。
鮮やかな赤を纏う姿は、カウンターの中でも一際輝いて見えたし、
そのポジションに憧れ、そして目指していた子達も多くいた。
高校1年生の女の子。
あの赤いシャツを着たいと、トレーニングに励んでいた姿を思い出す。
先輩達の姿を目に焼き付け、『自分はプリンセスだと思って、笑顔で丁寧にお客様に接してごらん』というアドバイスを、忠実に実行していた。
私はその子が赤シャツを着る前に辞めてしまったので、
その後どうなったかは分からない。
赤シャツを獲得しただろう、きっと。そうであって欲しい。
ネットで調べてみると、今はその”星の称号”自体が無くなったらしい。
制服も皆同じ。役職がつくと制服は変わるが、赤シャツは無くなった。
あの子のことを思うと、少し残念だ。
きっと同じように感じたスタッフも、少なからずいただろう。
何より、赤シャツを着ていた星達は、その変化をどう受け入れたんだろう。
星の代わりに、今は違うポジションが新設されたようだ。
制服も一般のものとは少し違って、CAのような雰囲気がある。
それはそれで綺麗だ。大人っぽいデザイン。
あの時、赤シャツを目指していたあの女の子は、
高校を卒業して、今は大学生になったのだろうか。
アルバイトは続けているのだろうか。
赤シャツを着ることは出来なくなってしまったけれど、
また違うユニフォームに身を包んで、どこかで頑張っていて欲しいな。
そんなことを、ひっそりと思ったりする。
プリンセスになった気持ちで。
このnoteを書きながら思い出したけれど、結構素敵な言葉だ。
明るく笑顔でというのは勿論のこと、
あらゆることを楽しむ能力もプリンセスには備わっていると思う。
新しい挑戦、ヴィランとの戦い、運命の人との出会いetc…
運命の人との出会いは流石に求めていないけれど。
新しい挑戦も、ヴィラン(=何かは色々察してほしい)も全て、
楽しんでしまえるプリンセスになりたいと、改めて思う。
(この際、年齢なんて気にしない。心はずっとプリンセスだ。)
”経験者”という肩書きも、単に自分が勝手に背負っているだけだ。
背負わなくても良い重荷を、無駄に背負ってしまうのは私の悪い癖。
現に周りはイチから教えてくれているのだから。
それでいいじゃないか。
無駄なプライドを捨てて、新たな挑戦として頑張ろう。
プリンセスになった気持ちで。
心の中では、あの赤シャツを身に纏った気持ちで。
本当に格好良かったよ、星の精鋭たち。
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