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「ホンモノのおいしさづくり」への挑戦【社長インタビュー前編】

私たち札幌千秋庵のミッションは「ホンモノのおいしさづくり」。
一見ストレートでシンプルですが、お菓子づくりを生業とする会社としては、実に奥深いミッションとも言えます。
この原点に立ち返り、過去のエッセンスを抽出した「おいしさづくり」に挑戦する五代目社長 中西克彦のインタビューをお届けします。



創業102年目。改めて目指す“ホンモノのおいしさづくり”


―改めて「ホンモノのおいしさづくり」をミッションとして掲げた理由をおうかがいします。

中西:「本物のおいしさづくり」とは、私が入社する前から札幌千秋庵にあった考え方です。
札幌千秋庵の看板商品に「山親爺」と「ノースマン」があります。「山親爺」は昭和5年発売、「ノースマン」は昭和49年発売ですが、これだけ長く続いてきたのは、お菓子自体が“おいしい”ことが大前提にあるからだと感じています。
今後も、さまざまな仕掛けで新商品をリリースしますが、「本当に美味しいお菓子」を作らなければ、長く愛されるお菓子になることはできません。
そこで、改めて「ホンモノのおいしさづくり」を目指すことにしました。

伝える側の強い想いやメッセージを、視覚的に表現したい

―「ホンモノ」をカタカナで表現した意図は?

中西:カタカナで「ホンモノ」を見た時の違和感というか、読み流さないように引っ掛かりを作りたかったんです。
そのうえであえて「おいしさ」を平仮名にしています。漢字で「美味しさ」と書くと味のことになりますが、あえて平仮名の「おいしさ」にすることで、「ホンモノ」×「おいしさ」、2つの仮名を共存させたいと考えました。このバランスを意識することで、札幌千秋庵らしい和洋折衷のお菓子づくりにも繋がります。ここに、私の思いを込めています。

― 視覚的な表現にこだわる理由は?

中西:私は大切なことを伝える際は、徹底的にこだわりを持ち、思いを込めたいと思っています。情報を伝える側が、意識して情報を発信しないと相手には伝わりません。もしも一部しか伝わらなくても、そこに込めた想いが強ければ強いほど、お客様や従業員にメッセージが伝わりやすくなります。
「言葉をしっかり表現する」ために、フォント(書体)も選び抜きます。
これは、商品のキービジュアルやパッケージデザインを手掛ける時も同様です。文字やデザインから視覚的に伝わる要素を大事にしていますね。

―「おいしさづくり」というと製造の印象が強いと感じますが?

中西:「おいしさづくり」
には、工場での製造だけでなく、手渡すところまでが含まれています。

これは、北海道コンフェクトグループの接客においてリーダー的な存在の「きのとや」さんの事例です。
クリスマスケーキの販売がピークの時、中田社長が「最高のケーキを最高のサービスでお客様にお渡ししよう」と声を掛けていて、その言葉に強烈にインパクトを感じました。
本来は、どんな受け取り方をしても、物理的に味が変わるものではないかもしれません。それでも、店舗での丁寧な接遇の体験が、お菓子が口に入る瞬間、その感動の質を上げてくれるのだと思います。この出来事は、私にとって特に印象に残るものでした。

そこでもう一度原点に返って「ホンモノのおいしさづくり」を追求したいと考えました。
「おいしさ」を流通過程で損ねないように、物流面にも気を配ることが大切になってきます。製造、物流、接客、この過程すべてが「ホンモノのおいしさづくり」に繋がっていきます。

業務で困難に直面した際、このミッションが物事を判断する際の指針となり、「ホンモノのおいしさづくり」をするためにはどうあるべきかを、色々な場面で意識するようになってくると良いですね。また、偶然この記事を見つけてくれた方にも、「そういうことを大切にしている会社なんだ」と感じていただけたら嬉しいです。

社長自らキービジュアルを作り上げる。一枚一枚を厳選し頂点を飾る渾身の一片を慎重に飾る。

仕事は一つひとつの積み重ね。そこに丁寧に想いを込める

― 従業員に求められる、日々の仕事で重要なポイントは何ですか?

中西:
そうですね、仕事は一つひとつの積み重ねなので、そこをいかに丁寧に想いを込めてできるかだと思うんです。その積み重ねが、最終的に会社の成果に繋がると考えています。作業を効率化することも大事ですが、お菓子づくりには効率化できない部分も大切だと思います。

― 常に作業効率を求められる製造現場にとって、丁寧に想いを込めて仕事をするという話は新鮮に感じますね。

中西:銀座の一等地に、最中(もなか)で有名な「空也(くうや)」というお店があります。そのお店についての記事を読んだことがあって…。
なんと空也さんで使うあんこは、店舗の上にある自社ビルのワンフロアでつくられているそうです。
IHの銅窯で1日5杯のあんがつくられており、そのあんの分だけお菓子がつくられていて、「人らしい生活サイクルの中で従業員が働く」スタイルを大切にされています。また、同じ敷地内に製造ラインをもっていることで、ワンストップでしっかりと目の行き届いたお菓子を製造できることを強みにされています。札幌千秋庵も街中にある本社工場で製造していますので、重なるところが多いと感じました。
最中の味にかかわる製造方法は変えないけれど、作業方法は必要に応じてアップデートしていて、あんこを絞る作業は機械化をしているのだとか。道具に過剰に「昔ながら」を求めていないんですね。
また、空也さんのあんこにはザラメ糖が使われていています。その理由は結晶時の表面積を大きくすることで、あっさりした甘さを感じられるようにするためだそうです。(参考記事:『Discover Japan Journal』2023年6月号)

伝統の味を大切にしつつ、できる範囲で機械化していますが、味に関しては一切妥協せず、原料にもずっとこだわっています。この記事を読んで、伝統の製法を守ることも大切だけど、「こだわり」と「効率化」を分けて考えることが大事だと感じました。

例えば脱酸素剤のように、効能が同一であればコスト重視で変えていくものもあります。しかし、原材料やレシピを変えると、味にダイレクトに影響が出るので、そう簡単には変えられません。むしろ原材料は味に大きな影響を与えるので、より良いものにこだわっていきます。このアプローチが「ホンモノのおいしさづくり」に繋がると考えています。

「銭函金助」のキービジュアル撮影。重なり具合や色合いを厳選し最高のビジュアルを目指す。
完成した「銭函金助」のキービジュアル撮影。かりんとうの散らし方など細部にこだわる。

過去のエッセンスを活かした「おいしさづくり」

ーノースマンのリブランディングや巴里銅鑼、大福パン、銭函金助に続く新商品の構想についておうかがいします。

中西:
札幌千秋庵には100年以上の歴史があるので、様々なお菓子の蓄積があります。その蓄積を活かし、過去に販売していた商品を現代風にアップデートして再び世に送り出すというアプローチは札幌千秋庵ならではの商品開発の手法になると思います。もちろん、0(ゼロ)⇒1(イチ)の商品開発も必要ですが、この復活型の開発アプローチを大切にしていきたいと考えています。

少し話が逸れますが、今年「トップガン マーヴェリック」という1986年に公開された映画作品の続編が公開されて話題を集めました。昔の映画作品の新作ができると、なんだかワクワクしますよね。お菓子の復刻やリメイクにも似たようなワクワクがあると思うんです。

ーそうですね。「ノースマンのリブランディングでは、生ノースマンって、どんな味なんだろう⁉」と、楽しみにしていたお客様が多かった印象です。

中西:まさにノースマンのリブランディングにも昔の映画作品の続編が観たい気持ちと通じる期待があったのではないかと思います。
ノースマンのリブランディングは大きな反響を頂きましたが、昔から知っているノースマンが生まれ変わることに対するお客様からの期待とワクワク感を、私自身が肌で感じることが出来ました。過去のエッセンスを抽出し、札幌千秋庵の特長を生かしたお菓子を作ることで、お客様にワクワクを届ける、そんな商品開発をしていきたいと思います。

ーぜひ「一日千秋」でも、新商品の誕生によるワクワクをお届けしたいです!

「社長インタビュー後編」では、札幌千秋庵の社長になった経緯や、仕事をする上で大切にしている考え方や、普段はどのように時間を過ごしているのかなど、様々な質問をしています。公開まで少しお時間を頂きますが、一緒に読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします!



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