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札幌千秋庵との出会い~日々大切にしていること【社長インタビュー後編】

前回に引き続き千秋庵製菓の代表取締役社長 中西克彦のインタビュー後編をお届けします。社長就任の経緯や札幌千秋庵との出会い、仕事をする上で大切にしている考え方や普段の時間の過ごし方について聞きました。


社長就任の経緯と就任後の想い

ー社長になった経緯について改めておうかがいします。

中西:
私の高校時代の同級生であり、かつて一緒に働いたこともある北海道コンフェクトグループ代表の長沼真太郎さんから声をかけていただいたのが縁で、2021年に千秋庵製菓に副社長として入社しました。

千秋庵製菓は北海道で100年以上続く老舗の和洋菓子メーカーですが、私が入社した当時は抱えている課題も多く、北海道コンフェクトグループと商品開発や製造、販売で業務提携するなど連携を強化しているさなかでした。
そんな中、「北海道コンフェクトグループと千秋庵製菓との業務提携プロジェクト推進と会社の立て直しを引き受けてくれないか」と相談を受けたんです。

創業家が代々繋いできた経営のバトンを外部の私が引き継いで良いのかと悩みましたが、「自分のこれまでの経験が、千秋庵製菓の立て直しに少しでも役立てられれば!」と決心し、2022年9月30日に社長に就任しました。 

入社後は、会社の業績を回復することが重要ミッションだったので、北海道コンフェクトグループとの提携によって実現した「きのとや」とのコラボ商品「巴里銅鑼(パリどら)」の発売や主力商品「ノースマン」のリブランディングに着手しました。

ー2021年12月16日入社して丸1年半が経ちましたが、想いの変化はありますか?

中西:「巴里銅鑼」や「生ノースマン」を発売した際のお客様の反響を見て、「札幌千秋庵」というブランドが秘めたポテンシャルを改めて実感しています。
発売時に「きっとヒットしてくれるだろう」とは思ってはいましたが、反響は想像以上で、北海道のお客様が札幌千秋庵に対して抱いてくださっていた「期待」というか「待ってたぞ!という激励のようなもの」を感じたことを今も覚えています。
千秋庵製菓という会社の立て直しには、単なる会社の業績回復にはとどまらない、もっと根源的で熱い何かが内包されていると想いを新たにしています。

札幌千秋庵との出会い

ー札幌千秋庵と初めて出会ったのはいつですか?

中西:私は小樽で生まれて、小学校6年生から大学卒業まで札幌で育ちました。子供の頃、祖父母の家に遊びに行くと、いつもお菓子が入っているカゴに「ノースマン」があってよく食べていました。その頃から、「ノースマン」は美味しいお菓子だという想い出がずっとありました。社会人になって東京に引っ越してからは、帰省の度に自分用の土産として「ノースマン」を買っていました。私にとって想い出の詰まったお菓子が「ノースマン」であり、ここが札幌千秋庵との出会いですね。

昭和49年(1974年)の発売当初のノースマン小箱のパッケージ。個包装は2015年頃のデザイン


中西:
祖父母の家でよく食べていた、想い出の詰まった「ノースマン」。
まさか自分が「ノースマン」のリブランディングに携わることになるとは、感慨深かったですね。やりがいを感じましたが、同時に責任重大だと思いました。

ノースマンのリブランディングについてのストーリーは、また別の機会にお話しできればと思います。話すと長くなってしまいそうなので…。

2022年9月に「生ノースマン」が誕生し、リブランディングされた「ノースマンシリーズ」

仕事をする上で大切にしていること

ー社長は毎朝、事務所フロアを念入りに掃除していますよね。そんな姿に従業員から驚きの声が聞こえますが…。

中西:今は社長という立場ですが、社長というのは偉いというよりも、役割分担の一環だと考えています。
会社の最終的な意思決定をするという役割を持っている。決める権限があるというだけで、それが偉いのかと言われるとそうじゃない。だからフラットでいたいんですね。
社長だから掃除をしないとか、電話を取らないということではなく、やるべき人がいなければやる。そこを忘れないために、毎日掃除をするとか、電話を取る人がいなければ自分が取るという、当たり前のことをやっているだけですが、ありがたいことに皆さんから褒めていただけるんですよね(笑)。

ー仕事の上で大切にしていることは、どのようなことですか?

中西:「お互いに対等な関係性で仕事をする」ということでしょうかね。
札幌千秋庵はお菓子を作って売っているお店です。「商売」には「売り手」と「買い手」がいます。「買い手」が強い立場になると、強引な言い方や高圧的な態度を取ることがありますが、そうした関係性にならないうように気を付けています。千秋庵製菓のメンバーにもそうであってほしいと思っています。
最近は、どこも原材料の値上げの問題に直面しています。原材料メーカーの担当者はそれぞれの会社の事情を抱えて値上げの交渉に来ます。この場合、当社が「買い手」になりますが、相手の事情を汲み取って対応できる担当者でいてほしいなと思います。
施設内に新店舗を出店する場合や卸売りをする場合、私たちは「売り手」になります。そのとき、相手の担当者に一方的で威圧的な態度を取られたら、どんな気持ちになるでしょうか。

私は、お互いの立場を尊重しながら、知識を共有し合い、協力して面白い商品や売り場を創造していくために、フラットに話せる関係性を築いていきたいと思っています。そうすることで商品も売り場も良いものになりますし、それが結果としてその地域全体の発展にも繋がっていくと信じています。

仕事をする際に、人として誠実であり、相手を尊重し、お互いに成長する姿勢を持つことを大切にしていきたいですね。

打ち合わせの際もメンバーの意見を広く取り入れることを意識しているとのこと。

日常で大切にしている時間

ー毎日多忙だと思いますが、プライベートはどのように過ごしていますか?

中西:普段は映画を観たり、小説を読んだりしていますね。自分には考えつかないようなことを感じるきっかけになるんです。他の人が考えた世界に身を置くのが好きで、その時間を大切にしていますね。

ー今まで観た映画や小説のなかで、印象深かった作品はなんですか?

中西:高校生の時に見た「グット・ウィル・ハンティング/旅立ち」。マット・デイモンとベン・アフレックが脚本を書いて一躍スターダムに上がった映画。最初に観たとき面白くて一気に3回観るくらい刺さった映画です。
ロビン・ウィリアムス演じるカウンセラーがマット・デイモン演じる問題児の天才数学者をカウンセリングで更生させ、成長していく姿を描いている映画でした。
小説では藤沢周平さんが好きです。学生時代に「たそがれ清兵衛」という映画を見て、庶民のヒーローが活躍する話がとても新鮮に映りました。子どもの頃からスーパーヒーローの話ばかり観ていたので、ありのままの世界でも描き方次第で面白い作品になるんだと感動して、それからよく読むようになりました。私は、小説でも映画でも、人が成長する姿を見るのが好きなんですね。

ー最近読んだ本で印象に残った本はどのような本ですか?

中西:京都の茶筒で有名な「開化堂」の社長 八木隆裕さんの「共感と商い」という本があります。八木さんと直接お会いする機会があったことがきっかけで読ませていただきました。
開化堂さんは、自社の製造キャパを超えたら無理に売らないという方針を守っています。利益を追い求めることに執着していません。現在、当社は売上が好調で製造量が増えてきていますが、今の設備のままだといずれ限界がやってきます。そうしたときには無理な製造は行わずに少し立ち止まることも必要だと考えるようになりました。一時的に製造現場に負荷をかけてしまっている現状もありますが、今後は計画的に設備投資を行って無理な製造を行わなくても良い体制を作りたいと考えています。社員との接し方も含めて、今後の方向性を考えるきっかけをくれた一冊です。

本や記事を読むことで、他社さんの考えや取り組みを知り学ぶことができます。
私たちも「一日千秋」を通じて、商品の開発過程や関わる人たちについて積極的に情報を公開し、社会に還元していきたいと思っています。そうした記事が誰かの新しい気づきや何かのきっかけになれば嬉しいですね。


ー【社長インタビュー後編】はいかがでしたか?
以下のリンクから【社長インタビュー前編】【noteをはじめます】の記事もあわせてご覧いただけたら嬉しく思います。


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