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切腹布教活動8 「切腹DVD3」

制作「不二企画」で切腹DVD(当時はビデオだが)においての演技、カット割りを体験した私は、自分好みの作品を作ってみよう、と考え出した。これは、切腹分譲写真を始めたからこそできたことだ。一般販売を一切考えないからできる、マニア題材の作品。私はやりたい題材があった。

同志の方から教えて頂いた実話。「鷹林花代夫人の切腹」である。この出来事は1939年(昭和14年)に起こった。日中戦争と戦時体制真っ只中である。夫は、愛国心、忠君が人一倍強い鷹林宇一大尉。花代夫人も夫に負けず劣らず愛国心が強く、夫が戦地で戦っている時も毎日欠かさず英霊を弔ったり、お国のために戦う人たちの為に、常に尽くしていた。そんな夫人の元に一報が届く。夫の戦地の危機。いよいよ夫も最後を迎える、と覚悟を決めた夫人は、自らの自決を決める。しかも腹切り、という行為で。財産は献金し、遺書もしたため、夫の死を見届けないまま花代夫人は切腹してしまう。

私は戦争反対派であり、この事実問題については意見しないが、私はいち女性として、花代夫人の凛々しさに感服したのだ。花代夫人は武士道を貫いている。まさに悲壮美である、と私はこの事実を物語にしたかった。

花代夫人

撮影はおそらく1998年頃だろう。記録も曖昧であり、作品は「風俗資料館」にしか残っていない。詳細については私も記憶していないのだ。ただ思入れがあっただけ、カット割りを細かくしていると思う。撮影は、分譲写真のアマカメラマンにお願いしているが、前半の芝居部分のシーンは私が細かく指示していたことを記憶している。切腹シーンは、シリコンで作った内臓を使ってデロデロの撮影をした。この作品の評価はわからないが、私はただ自己満足であった。憧れの花代夫人を演じて幸せな気分であった。

この作品と同時に発売した「花嫁の死」という作品もあったが、こちらは、写真撮影の延長的なビデオ撮影で、内容については覚えてない。愛好者からのコメントで「切腹に移りかけ、思い直して存分に自慰を楽しみつつ裸になり、絶頂で切腹」とあった。

その後、愛好者の方が制作してくれたビデオ「落花譜」という作品もあるが、正直私は「来るものは拒ばず」なので、先方から誘導していただければいくらでも乗る(企画内容は吟味するが)。なので自意識が少ない作品だと、記憶が曖昧となってしまっている。

さて、それから年月は経ち(その間は芝居を始めたり、自費出版<切腹之書>を始めたりと環境が変わっていた)、機材もビデオからDVDへと変わっていき、2011年(なんと13年も経っていた!)、新しいチャンスが生まれた。ポルトガル人の映像作家ペドロ(Pedro Diniz Reis)氏と出会った。ペドロ氏は以前、私の切腹パフォーマンスを観て、興味を持ったという。そして映像に撮り、自国で上映したい、という話であった。単なる興味本位ではなく、日本の「武士道」ということに惹かれていたペドロ氏に共感し、私は撮影をOKした。

撮影の日。フランス人緊縛愛好家の隠れ家の1室。畳の部屋に薄暗いライティング。私はシンプルな白襦袢で、愛する夫に死なれた妻の後追い切腹、という設定を選んだ。言葉がなくとも伝わる設定。ヨーイ、スタートから、約25分、ノーカットで私のパフォーマンスのありのままを撮る。実はこの撮影、緊張し、興奮した。薄暗いライティングの中に置かれた私。カメラは2メートル余りの近い位置にある。スタッフなど数名はいるものの、皆外国人(日本語は達者だが)。私自身が試されているような気がした。この緊張は本当に死に向かっているかのようだ。いつになく緊迫した中での切腹演技。でも薄暗さの中で次第にのめり込んでいく私がいた。

それから約半年後。完成したDVDをいただいた。その映像は撮影時そのまま、薄暗い和室に佇む女の、ひっそりした腹切りであった。まるで本当に腹切りをする女を覗き見しているようだ。このような編集は初めてだ。やはり皆「ヨリ」を撮りたくなってしまう。薄暗くて若干見づらい点もあるが、かえってそれがリアリティとなっている。

私はこの作品を日本の愛好者の方々にも見てもらいたい、と思い、早速「風俗資料館」へ連絡し、販売の協力を仰いだ。日本で発売のため、ペドロ氏からのメッセージも頂戴した。DVDカバーを資料館で手作りし、約1年後の販売となったのである。

DVD悲壮美

DVD「悲壮美」 2013年5月20日発売 限定50部

制作・撮影・監督 Pedoro Diniz Reis   協力・メッセージ翻訳 Alice Liddell  




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