今が1番楽しい
「ねぇ、パパは昔にタイムリープができるなら、いつに戻りたい?」
数日前、リビングにて夫と長男との会話が耳に入ってきた。
「え。うーん、大学生のときかな。吹奏楽のサークル活動とかたくさんの友達がいて、楽しかったからなぁ」
子どもはときに、覚えたての言葉を会話の中で使いたがる。どうやら最近は、過去や未来に移動する「タイムリープ」を覚えたらしい。
「そっかー。じゃあ、ママは?」
くるっとこちらを振り返り、じっと私を見る長男。
「うーん。そうだねぇ……」
(私、過去に戻れるならいつに戻りたい?あれ、いつが楽しかったんだっけ?)
過去を振り返ろうとするも、「戻りたい」と思える時期がパッと浮かんでこない。
高校卒業後、私はすぐ就職したので、夫が戻りたいと言う「キャンパスライフ」を私は知らない。それも一理あるかもしれないけど、過去に戻りたいと思っている時期はないと気づいた。
そのときどきで、精一杯目の前を楽しんだり、大変だったりのプロセスを味わってきた。これからの展開もおもしろいのかも、とワクワクもする。
「ママは今が1番楽しいから、昔に戻りたいとかは思わないかな」
「そうなんだー」
ただ、なんとなく聞いてみただけなのだろう。長男は答えが聞けたからか、満足そうにくるっと背を向けて、また違うテーマで主人と会話を続けた。
一方で私は、数秒前に発した自分の言葉に、静かに驚いていた。
「私、なんだかんだ今が1番楽しいと思っているのだなぁ」と。
もちろん、学生時代やOL時代、新婚時代も、それなりに思い出があるし、充実していた。
でも、特に昔に戻りたくはないらしい。
むしろ、過去に戻るのはちょっとイヤだと思っている。親のうつ状態や、学校や職場でのいじめなどもあり、常に心配事や不安、恐怖が付きまとっていたのもあるだろう。
「なぜ、今は楽しいのだろう?」と、ここ数日考えていた。
多分、今のほうが自分の心と向き合い、行動することが増えたからでは?という結論にいきついた。
数年前に自分がうつ状態になったことで、生き方や働き方について初めて真剣に考えるようになった。
当時を表すと暗黒でつらかったけど、だからこそ「どうやったら、今後自分が楽しく過ごせるだろう?」と考えてから、色々と試して、今の在宅ワークでの働き方を模索した。
気分が落ち込んだときは、好きな音楽を聴く時間を作ったり、人と話したりするなど自分の気持ちを向き合い、整える技術も少しずつ身につけた。カウンセリングに通い、考え方のクセや心の在り方について向き合い、得た学びも大きい。
勉強して学んで、失敗して、少しずつうまくいくことが増えて……の繰り返し。
勇気を出して、新たな人間関係を築くのも意識している。好きだなーと、心が動いた人やモノに直接会う・聞くことも増えた。頭ではなく、直感的な選択も多くなった。
ただ、家事や仕事に育児など、バタバタしたり試行錯誤したりで、正直「楽」ではない。自由度だけで見ると、出産前のほうが多かっただろう。
でも、子どもに対して「今が1番楽しいよ」と言えたこと。昔よりの自分よりも、後悔することが減り、成長を感じたのは「いいじゃん、自分」と思う。
だから、定期的に「私は過去にタイムリープしたい?」と自分に問いかけようと思う。
後悔なく、自分が今を納得して過ごしているかを、確認できるかもしれないから。今後の充実にもつながるだろう。
最後までお読みいただき嬉しいです♪ありがとうございます!これからも心を込めて執筆していきます。