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先延ばしを跳躍する|課題と欲望を紐づける行動経済学

予定を先延ばしにしてしまう悪習は誰にでも身に覚えのあることでしょう。

「先延ばし」は人類にとっての普遍的な悩みであるかもしれず、歴史を遡ってみると、古くは古代ローマの政治家であるキケロが先延ばしのことを「忌まわしきもの」と呼んでいたという記録もあるようです。

紀元前に既に忌まわしき悪習として人間に認識されていた「先延ばし」は2000年以上の時を経ても、未だに解決される様子が見えてきません。

しかし、近年になって少しずつ認知度が高まってきた「行動経済学」に解決するためのヒントがいくつか見られます。

僕が実践していることをご紹介しますので参考にしてみてください。


行動経済学の基本情報

行動経済学をご存じでない方のために簡単に説明をしておくと、一般的な経済学は「人々が合理的に行動する」という大前提で学問が発展してきていました。

しかし、人間は合理的に考えれば損失であると頭ではわかっていながらも、実際には合理的な行動を取らないことが多くあります。(一度も通っていないジムに毎月の会費を払い続けたり、食洗器を購入したにも関わらず家族へのアピールのために手で食器を洗ったり、老後の備えが必要だとわかっていても貯金をしなかったり)

行動経済学はこういった人間の合理的ではない行動も含めて経済を研究していく学問です。

「先延ばし」も、すぐに実施することで未来の自分へ成果をもたらすとわかっているにも関わらず目先の課題を避けてしまうという、非合理な人間の悪習です。

こういった非合理な先延ばし習慣について「意識を変えて先延ばしにしない習慣を身に着ける」といった精神論的なアプローチをしてみても大抵は失敗します。何せ古代ローマの賢人でも克服できずにいる人間の悪習なのですから。

誘惑に勝てない自分を受け入れる

いくつかの行動経済学の本を読んだなかで、「先延ばし」に最も自分なりに対応することができそうだと感じた工夫が「課題と欲望を結びつける」アプローチです。

しかし、まずは課題と欲望を結びつけるアプローチを考える前に、まずはひとつの心構えを共有させてください。

その心構えとは「自分は誘惑に勝てない」と、先延ばしにしてしまう自分を受け入れる精神を持つということです。頑張れば克服できるといった考え方は捨てるべきです。

現代は様々なハイテク機器から無数の誘惑が目に入ってくる世の中なので、そんな現代で自制心を働かせることは無理だと自覚することで、ようやくこの工夫をスタートすることができます。

このアプローチは先延ばしという課題に対して「欲望」を利用するからです。

先延ばしの課題に身近な欲望を探す

それでは、課題と欲望を結びつける方法について説明していきます。

実際に僕が普段実践している事例を紹介するので、お読みいただいている方はそれぞれ自分にとっては何が適しているのか、置き換えながら考えてみてください。

まず、僕が乗り越えたいと思っていた課題は非常に身近なもので「寝坊」と「二度寝」です。

プロフィール記事でも書いた通り、僕は過去に胃の手術をしたこともあって、体質的に貧血や低血糖になりやすいことが強く影響し、朝が弱く寝起きのテンションが非常に低いのです。なかなか布団から出ることができません。

早く起きることができれば朝の時間を確保することができて、読書をしたりブログを書いたり、家事を済ませたり、有意義で生産的な時間を過ごすことができると頭ではよく理解できています。

合理的に考えれば早起きができずに寝坊してしまうことは避けるべき課題なのです。

しかし、寝起きの状態の僕はどうしても「起きる」という行為を先延ばしして長めに睡眠をとってしまったり、二度寝をしてしまったり、非合理的な行動を繰り返していました。意識を変えてみても朝の本能に勝つことはできません。

こういった課題がある一方で、朝の時間に行う習慣のなかで、大好きなことがひとつありました。それはコーヒーを飲むことです。

過去の記事でも書いた通り、コーヒーの魅力に気づいてからは毎朝必ずコーヒーを淹れて飲んでいるのです。

そこで、早起きができないという課題とコーヒーが好きであるという欲望を結びつけてみることにしました。

欲望をもって先延ばしの課題を跳躍する

まず、必要なものは水とコーヒー豆です。豆は自分で挽いてもお店で挽いてもらったものでも構いません。そしてお気に入りのマグカップとコーヒーメーカーも用意します。

これらを前日の寝る前にセッティングをし、翌日の朝はスイッチを入れるだけの状態にして、翌朝のコーヒーの香りを思い浮かべながら眠りに入るのです。

この準備により、翌朝の目覚めの瞬間はもっと寝ていたいという本能の課題はありながらも、スイッチさえ押せば美味しいコーヒーが飲めるという欲望が喚起されることになります。

しかも前日に準備を終えているので、欲望を実現させるための行動はスイッチを押すだけです。

そしてスイッチを押したあとは、自動的に香り豊かなコーヒーがこぽこぽと音を立ててサーバーを満たしていってくれます。

パソコンの電源を入れるなり、好きな小説を読み始めるなり、穏やかな音楽を聴くなりしながら、自分の時間に合わせてコーヒーを飲み始めた時には、貧血や低血糖でだるくなった気分も忘れて、すっかり目が覚めています。

この様にして、先延ばしの課題に対しては自分の欲望を利用して乗り越えることができました。

苦手ではあるけれど乗り越えるべき課題があるとき、それに身近なことのなかから自分にとって大好きなものを探してみることで、欲望を課題解決の成果に結びつけることができるかもしれません。

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