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仕事を辞めたい社員との対話を想像する

ここ最近、職場で「仕事を辞めたい」という社員の声が増えてきているようで、様々な苦しい心のうちを噂で聞いています。

近いうちに僕も該当する社員と話す機会があるので、多方面から「様子を見てくれないか」「話を聞いてあげてくれないか」とお願いをされることが出てきました。

僕はその社員と担当エリアが異なっているので一緒に働く機会は少なく、客観的な視点で話を聞けそうだとは思っています。

しかし、噂によると、非常に実直な性格で仕事を全うする責任感からストレスが徐々に積もってしんどくなってしまっているようで、今まで継続できているのも「周りの人に迷惑をかけたくないから」という気持ちで粘り強く続けているようなのです。

現代の組織で働くうえでは、頑張る気持ちだけだと裏目に出てしまうことも多く、その社員も残業時間が多いことが問題にもなってしまっていました。

違うエリアで働いている距離感があるからこそ言えることかもしれませんが、僕はその社員の人柄には非常に好感を持っていて、本来は一緒に会社を盛り上げていこうという仲間だったからこそ、うまく会社に適応して仕事を続けてほしいと、基本的には思っています。

しかし、一方で本当に仕事がしんどいなかで「周りの人に迷惑をかけたくないから」という理由だけで続けているようであれば、自分のためにも会社のためにも早いうちに転職活動を始めた方がお互い幸せになれる、そういう風にも思っています。

ここで話をガラッと変えますが、先日、ユーラシアグループが発表した2024年の10大リスクのなかに、エルニーニョ現象による気候変動リスクが挙げられていました。

「エルニーニョ」とはスペイン語「El Niño」に由来している言葉です。これは「男の子」または「キリストの子」を意味する言葉で、かつて南米のペルー沖でクリスマス時期に発生していた暖かい海流のことを指していたことから「キリストの子」を意味する「El Niño」が使われていました。

エルニーニョ現象はこの様に名称のうえでは祝福のように思えますが、実際には、地域によって恵みとなることもあれば、逆に洪水や干ばつなどの厳しい影響をもたらすこともあり、2024年の10大リスクにもエントリーすることとなりました。

物事は表面的に見えている以上に複雑に絡みあっており、個人が予想している通りに動いていないことが大半なのです。

この「エルニーニョ現象」の名称の意味合いと実際に巻き起こっているリスクを照らし合わせて考えていたら、「周りの人に迷惑をかけたくないから」と言って仕事を何とか継続している社員の気持ちと組織への影響にも共通する傾向があるように思えてきます。

その社員が会社を辞めたとしたら、一時的には欠員状態が生まれるため、確かに「迷惑がかかる」かもしれません。

しかし、その部署に所属する他の新入社員にとっては、ひとつ席が空いたわけなので出世のチャンスが生まれます。そして会社は新しく採用を始めるため、組織の新陳代謝も高まります。

退職をして転職活動を始めた当の本人も、より自分にあった環境で働くことができるかもしれませんし、うまくいけば給与も上がるかもしれません。

もっと大きな範囲で考えてみると、その社員が自分の労働者としてのニーズをアピールしながら転職活動をすることで、業界全体の労働力の流動性も高まります。つまりは業界全体の賃金上昇に繋がっていきます。

こうして企業間の競争に拍車がかかり、景気が循環してその影響は社会に還流されていきます。

この様に考えてみると、その社員には「周りのことは僕らに任せて、自分のことを大切にして考えてみたら?」と言ってあげるのがいいのかもしれません。

ただ正直なところ、この様な話をうまくすることができても、あまりうまくいかないと思っています。

人の複雑な感情に関わることを経済学的に説明しても、大抵の場合は予想が外れるからです。

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