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不安への対処法|お金でも相談相手でもない

人は不安になると、その不安を解消するためにあらゆる行動に出ます。片っ端から友人に相談してまわる人もいれば、ふさぎ込んでしまい心身を壊してしまう人もいます。

時には多額のお金を支払うことで安心を得る人もいます。そもそも保険というビジネスも安心を提供することが本質だったりもしますし、広告業からすれば不安を抱えている顧客は、不安を煽る広告を流すことで優良顧客を獲得するチャンスです。不安はビジネスになってしまう側面があるのです。

そのことをわかっていたとしても、生きていれば何らかの不安と向き合いながら生きていかなければなりません。老後の蓄えや健康上のリスク、AIに仕事を奪われる不安など、今でもたくさんの不安が世の中に出回っています。

僕も同じように不安に思うことはたくさんある身ですが、ひとつだけ対処法を学んだ経験があります。自分にとっての不安との向き合い方を知っているのです。

プロフィールに書いた様に、20代の前半に胃がんを発症してしまう経験をもっています。医療従事者のおかげでこの様にして生きていますが、本来は命の危険もあったので時々ぞっとする思いをしてしまうのです。

治療を終えてからも、生死に関わる経験をしているからか、再びがんに罹ってしまうことに対して常に不安を抱えてしまう時期を過ごしていました。もちろん今もその不安がゼロになることはありません。

しかし、その不安も年を増すごとに軽減されてきています。それは慣れてきたこともあれば、年齢的な成熟もあるのかもしれません。ただ、自分のなかに湧いてくる不安に対して何よりも効果を発揮しているのは、知識だと感じています。

僕は闘病期間を通して読書をする習慣を身に付けました。その習慣は今にも続いており、自分の生活のメインにもなる趣味となっています。

がんの治療がひと段落してから、「がん-4000年の歴史-」というノンフィクションを読んだ時のことです。知識を得ることでがんへの不安が急激に軽減されることとなったのです。

この本は通常のがんに関わる医療本とは異なるアプローチで書かれており、楽しみながら読むことができます。そのアプローチとは、がんを歴史から語るという手法で、タイトルの通り「がんの歴史」を学ぶことができるのです。

古代においては、イムホテプというエジプトの医師の記述から始まる長きに渡る人類とがんの闘いの歴史です。手術の歴史から抗がん剤の歴史、後遺症に苦しむ女性たちや、予防医療の推進とたばこ業界との軋轢も描かれている重厚な内容の一冊です。

がんの歴史を学んだところで自分の健康に何の影響も出ない事はわかっています。しかし、この本を読んだことによって、僕のなかにある「がんへの不安」は少し和らぐこととなりました。

知識がない患者にとって、病気と言うのはまるで呪いの様に全貌が見えない漠然とした大きな不安になります。

しかし、読書によって得た知識によって、がんに対する漠然な恐怖感というものが薄まりました。また、人類の歴史において数多くの人々ががんと闘ってきたことも心強い気持ちにさせてくれたものです。

この経験から、自分が極度に不安に陥ってしまった時はその不安の源泉について、まずは知識を得てみようと思うことにしています。もしお金に対して不安を抱くことになったら、経済学の勉強をしてみるのです。

誰かに相談することや保険に加入することも大切かもしれませんが、知識を得ることで「漠然とした不安」を「対処可能な問題」に置き換えることができれば、それだけで充分気持ちが楽になるはずです。

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