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回転寿司はいつから進化したのか|値上げと新しい価値

テレビ東京のカンブリア宮殿が大好きでよく見ているのですが、外食産業を特集する回が特にお気に入りで、前回は回転寿司チェーンが取り上げられていました。

外食産業のスペシャル放送では、外食のレジェンドと呼ばれる「すかいらーく」の創業者で、現在は「高倉町珈琲」の会長である横川きわむさんがスタジオにゲストとして登場します。

今回も横川さんは商売に関わる本質をズバズバと言い切っていて、長年のデフレ下で価格競争ばかり行ってきた現代の外食産業の経営者は「値上げの技術を持っていない」と鋭い指摘を見せていました。

この様に「商売」についての学びが多い回だったのですが、そのなかで個人的に特に印象に残った横川さんの言葉がありました。

それは「今は子供は回っていないと寿司屋と言わない」という指摘です。カウンターの寿司屋は割烹居酒屋のような立場になってしまったとのこと。

そして、回転寿司で提供される寿司は今やデフォルトでサビ抜きであり、これは子連れの顧客が増えたことでサビ抜きの需要が増えたことから、逆にサビありを注文制にして、店舗の効率化を計る企業側の商売方法のひとつなのだそうです。

ここ数十年で日本の食文化である寿司のスタンダードが「回転寿司」に置き換わったことを示す印象的なエピソードでした。

回転寿司は大阪の元禄寿司が発祥で始まったサービスで、その特許が切れてから全国に普及していった業態です。大阪万博での受賞も普及する一因だったようですが、皿の色で値段が把握できる明朗会計なシステムが好評となり顧客に受け入れられるようになっていきました。

その後は現代にも続くファミリー層へのアプローチとして、魚介類以外のユニークなメニューも生まれるようになり、注文もタッチパネルで行うことができるようになるなど、その形態は現在も進化し続けています。

くら寿司の原宿店では、原宿という立地でのオリジナルメニューとして、なんとクレープがあり、若い世代を中心に話題となっているようです。

元禄寿司が日本で初めて回転寿司をオープンしたのが1958年です。当時はおそらく異端の存在だった回転寿司が、それから60年以上が経過して今や原宿店でクレープを販売するまでに急激な変化をしてきました。

1958年当時の人のなかに、寿司の形態がここまで変化してしまうことを予測できた人はいたのでしょうか。おそらくいなかっただろうと思います。

横川さんは、ここ30年間に日本の企業は価格を抑える努力しかしてこなかったと言います。これからモノの値段があがることは避けられない時代に突入するので、その変化にあわせて価値を提供し続ける企業が生き残るのでしょう。そのためには、原宿店のクレープのような、思い切った変化に挑戦する企業もたくさん現れるかもしれません。

その様な切磋琢磨が行われるビジネスシーンにおいて、いよいよ未来を予測することなんて、到底できることではなくなってしまいそうです。

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