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短編小説 Red & Blue

あらすじ

赤い橋の下、ひとりの釣り人と「私」は出会った。

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『その人間が棒から垂れている糸に引っかかったものを引き寄せた時に振り返り、私を見つけた。
男はすぐにその引っかかったものを放り投げて、私の方に近寄ってきた。
「大丈夫か?!おい、しっかりしろ!!」
この人間は、わかっているのだろうか?赤ん坊だ、わかるはずがない。そう、人間の世界での『普通』はそう言うだろう。
しかし、それは正しくはない。
本当は、赤ん坊の方が知っている。
わかるはずがないと、思い込むのが人間の大人というモノだ。本当は、大人などよりずっと赤ん坊は知っている。
だから、私でなくとも、もし転がっていたのが人間の赤ん坊であっても、この人間の内側はよく観える。
「ん?大丈夫そうだな。よしよし、いい子だな」
そう言うと、不器用な手つきで私を抱き上げた。
「お前は…不細工だな。」』

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そうして、「私」は、この釣り人に連れ去られ、「娘」という関係性を持つことになる。

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『すっかり人間ではないことも忘れ、泣き方も覚え、段々人間社会には馴染んだものの…いや、そうは言ってもいつもどこか浮いた存在であった。
まず、『四人家族』なのだが、どういうわけか『三人家族』+『ひとつ』の図式になるのだった。
姉は父親と母親と、それなりの家族感が漂っている。
しかし私はと言うと、どこか借り物のような、いや、仮モノのような、仮初めのような…
何とも表現のしようのない存在のように感じるのだ。
その時の私は、もう『私』という人間だと思い込んでいたのだから、それはとても物悲しい日々だった。
疎外感と言ったら良いだろうか。
この青い星にたったひとつだけで存在しているような感じ。
言い方を変えてみると、青い星がヨソサマの星のような感じ。
この『私』と言う存在は、『ココ』には本当はいるはずのない存在なのではないだろうか?と、疑問を持つ日々。
大体が、それをまだこの世界での幼稚園という場所に行き始める前の子どもが思っていること自体がおかしいのだが。
そう思うようになるきっかけは、様々あった。
まず、どうして大人と呼ばれる人間は、腹の中のそれと、表情と言葉とが違うのか。
その疑問はいつも私の頭と心を占領した。
しかし父親は違っていた。父親は、本当は自由人でいたいようだった。
この男は、大人の中でもあまり大人ではない珍しい人間だ。
何故なら、腹の中と顔と言葉があまり変わらない。』

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生きるとは…

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