西尾義人(上原弘二)

書籍の翻訳者・編集者。 ポピュラーサイエンスやノンフィクションを中心にやっています。 …

西尾義人(上原弘二)

書籍の翻訳者・編集者。 ポピュラーサイエンスやノンフィクションを中心にやっています。 主な担当書 → https://booklog.jp/users/sansmonchat ご連絡は sansmonchat2020@gmail.com までお気軽に。

最近の記事

【忽ち重版!?】持たざる者の新刊広告戦略

 翻訳者にとって、自分の訳書の刊行は待ちに待った一大イベント。  古今東西の農民が収穫後に盛大な祭りを開いて、肉体労働の憂いを吹き飛ばしてきたように、翻訳者もまた、訳書を華々しく送り出すことで、この数か月で骨身に染みた疲労、ストレス、閉塞感を振り払い、次の仕事に注ぐエネルギーを蓄えるわけです。  がんばって作った本ですから、自分でも派手に宣伝をして、できれば100万部くらいは売れてほしい。が、いかんせん、自分の担当作品が常に話題の書とはかぎりません。すべての野球選手が大谷君

    • 意外に役立つ(かもしれない)謝辞の文末表現

       世間が大型連休だろうが夏休みだろうが、そんなものどこ吹く風と、数か月間自室にこもりコツコツと進めてきた翻訳作業。その最後の1行を万感の思いで訳し終え、やったぜ、これでしばらくは自由の身だ!と喜びを爆発させた拍子に、原書のページがはらりとめくれ、次の文字列が目に入ってくる。  Acknowledgements——つまり「謝辞」。  この瞬間に、気を失いかけてキーボードにつっぷした経験のある翻訳者はかなりの数にのぼるはずです。 ■無益なことをやるときは、すばらしくやること

      • 翻訳者が知っておきたい編集者の仕事②

         さて、いよいよ今回から具体的な編集業務を見ていきますが、その前に少し時間をいただいて、わたしが神保町勤務時代に見つけた、ちょっと変わった料理店を紹介したいと思います。  それはこんな料理店です。 ■料理店プロデューサーとしての編集者 東京は神保町、古書店がひしめく落ち着いた区画に、喫茶店と中華料理屋(注1)にはさまれて一軒の料理店がある。この店、見たところ何のへんてつもない定食屋に思えるが、実はメニューがちょっと変わっている。海外(特にアメリカ)のレストランからレシピを購

        • 翻訳者が知っておきたい編集者の仕事①

          ■前口上  フリーランス編集者・翻訳者の上原と申します。  行く末はまず無惨だろうが(注1)、もう40年以上生きてきたのだし、扶養すべき子供がいるわけでもない、好きにやって野垂れ死にもまた一興じゃないか(注2)、というおよそ分別のある大人とは言い難い判断をもって昨年からフリーランス稼業に足を踏み入れたわけですが、それまでは自然科学系の翻訳書を中心に扱う小さな出版社で、14年あまり編集者として仕事をしていました。  翻訳書の編集者というのは、業務の大半が企画さがしと原稿整理(

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