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三浦半島釣り魚図鑑(38) イシガキダイ

この魚、実は以前に食べたことがある。子どもが「隣で釣りをしていたおじさん」からもらってきたのだ。

実は子どもたちは、時々他人の釣果をいただいてくることがある。釣れすぎて食べ切れないからなのか、子どもたちが毎日のように釣りに来ていてもあまり大きな獲物が釣れていないことを哀れんでなのか、自分も子どもの時に釣りに来たことを思い出してあの頃の自分に何かしてあげたくなるような気分でくれるのかはわからないけれど、こんな立派なのが釣れたら自分で食べたらいいのに、というような魚をいただけることがある。

勝手な想像だけれど、釣り好きな大人が、後輩少年たちを見て、釣りを好きになってもらいたいと釣果のおすそわけをしてくれるのではなかろうか。

あまりに大物だと、遠慮して断ることもあるようなのだけれど、この時は初めてだったこともあって、貰ってきてしまったのでありがたく頂いた。とにかくそうしていただいて、食べたことがあるイシガキダイ。いつか釣れたらいいなーと思っていた。なにしろ、模様がかっこいい。名前そのもので、石垣のような模様をしている。味も鯛の名のとおり、タイのようでおいしかった。

とはいえ、なかなかその機会は訪れない。

釣り人によく知られた魚にクチグロとクチジロというのがいる。私は釣りゲームでこの名前を知ったのだけれど、このうちのクチジロがイシガキダイの老成したオスのことだという。イシガキダイは成長すると60cmほどになるのだけれど、その頃になると模様は目立たず、特にオスは口の周りが白っぽくなることからクチジロと呼ばれるらしい。釣り人憧れの魚のひとつだ。まさかそんな大きいのではないにしても、憧れの魚は簡単に釣れるはずもない。

磯でダツがたくさん跳ねていたという夏の日のこと。いつもの場所で釣りをしていると、強いアタリが何度も。数回は針にかかりもしたのにバレて(餌を取られて逃して)しまい、友達とふたりでどっちが先に釣りあげるか競争をしていたら、とうとうこのイシガキダイが釣れたという。実は最後に釣り上げたのは友達のほう。でも、その子はその日ベラとムラソイという別の魚も釣っていたので、イシガキダイのほうは譲ってくれたらしい。

体長12cmのかわいいサイズながら、「いーっ」をしているかのように口の周りを見ると歯が白く目立つ。この歯で、何度もエサのイソメを食べていたのだろう。大きく成長したクチジロと呼ばれる頃には、この口の周りがまるでカッパのくちばしのような感じで前に突き出て、白くなる。

そして、なにしろ美しい石垣模様にほれぼれ。絵では分かりにくいけれど、石と石の隙間のようなところには、白い小さな斑点もある。背ビレと尻ビレが一直線に垂直になっているところや黒っぽい色合いなど、ちょっとアミモンガラと雰囲気は似ている。

以前いただいたイシガキダイよりはだいぶ小さなサイズだったけれど、ありがたく塩焼きにしていただいた。やっぱりおいしいくて、あっという間になくなった。煮付けもよさそう。

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