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社会福祉士から見たポイント「仕事と介護 両立支援ガイドライン」(経産省)

経済産業省は、仕事をしながら家族の介護をする
従業員(ビジネスケアラー)を取り巻く課題への
対応として、
「仕事と介護の両立支援に関する経営者向け
ガイドライン」を公表しました。

企業と連携して、従業員の仕事と介護の
両立支援をしている社会福祉士が、
ガイドラインのポイントを解説します。

今や珍しくないビジネスケアラー

ビジネスケアラーとは、
仕事をしながら家族等の介護を
している人のことです。

総務省の令和4年就業構造基本調査によると、
家族を介護している629万人のうち、
365万人がビジネスケアラーです。 

また、介護者の年齢別の有業率は、
男性は50~54歳が88.5%、
女性は50~54歳が71.8%と、
最も高いです。
このことから、50代前半は、
仕事と介護を両立している人が
多くいると言えます。

まだまだ増えるビジネスケアラー

数年前、ある企業の経営者の方と
お話ししている時、聞いた言葉が
印象に残っています。
「うちは、介護に困っている社員は
一人もいないよ」

しかし、社内アンケートを
取らせていただいたところ
出るわ出るわ、「介護への不安」続出でした。

従業員の介護の実態を把握している経営者は
まだまだ少ないのが現状です。
しかし、経営にも影響しかねない介護の問題は
もうそこまで来ています。

ビジネスケアラーの数は今後ますます増え、
経済損失額は約9兆円になるという試算が
出ています。
中小企業でも1社あたり約700万円の損失に
なる計算です。

仕事と介護両立支援ガイドライン

 そんな状況が迫るなか、経産省は
「仕事と介護の両立支援に関する
経営者向けガイドライン」
をまとめ、
経産省の公式サイトで公表しました。

ガイドラインのポイント

企業が取り組むべき事項を以下の
3つのステップが、具体的に示されています。

ステップ1 経営者層のコミットメント(責任、関与)

①経営者自身が「介護」を知る
②経営者からの「仕事と介護」に関する
メッセージ発信
③推進体制の整備 管理職層の巻き込み

ステップ2 実態の把握と対応

①組織内での仕事と介護の両立における影響・リスクを把握
②人材戦略の具体化(ビジネスケアラーが活躍できる戦略)
③適切な指標の設定

ステップ3 情報発信

①介護保険制度などの基礎情報を提供
②リテラシー向上、両立支援推進に関する研修
③社内での相談先などの明示

社会福祉士視点のポイント

今回のガイドラインのポイントは、
ステップ1の②
「経営者からの『仕事と介護』に関する
メッセージ発信」だと
個人的には感じています。

前述のように、介護は
「個人」の問題から「社会」の問題に
変わっています。
その変化に気付いた経営者からの発信が
プラスに働くことを、業務を通して
実感しています。

当事務所の介護サポートサービスを
ご契約いただいている企業の社員様たちも、
「会社が仕事と介護の両立をサポート
してくれているから、介護への不安が
やわらいだ」と口々におっしゃいます。
会社あげて、支援体制があることを
従業員に継続的に発信する、これが何よりの
安心材料になるのではないでしょうか。

経営者から従業員へ「サポートする」のメッセージがポイント
社員様向けセミナー「仕事と介護の両立」の様子

ガイドラインを絵に描いた餅にしないために

ガイドラインが発表されたことは
大きな一歩と言えるでしょう。
しかし、それを絵に描いた餅にしないためには
これから急ピッチで3つのステップを
進めて行かなくてはいけません。
それに必要なことは「行動」です。
従業員向けに介護に関するアンケートを取る、
他社の取り組みをリサーチする、
ビジネスケアラー関連の書籍を読む。
小さな行動から自社に必要な支援策が
見えてくるのではないでしょうか。

多かれ少なかれ感じる「介護への不安」。
その不安を軽減するためにできることは
身の回りにたくさんあります。
この記事を読まれただけでも
何か気付きがあったのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

はる社会福祉士事務所
佐々木 さやか

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