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ユカ芋と再会した日

透き通るようなコバルトブルー、カリブ海の無人島。小腹がすいたわたしたちは、リュックの中からいそいそとスナック菓子を取り出した。


その名も「ユカチップス」

日本でよく見かけるポテチとそう見た目は変わらないものの、とにかく芋感がすごい素朴なお味。

ジャガイモじゃなくて、ユカ芋というタピオカの原料となるそのお芋は、里芋と山芋を足して2で割ったようなもので。パナマ滞在中は、食卓にも度々登場した。

あれから3年が過ぎて、日本でユカ芋を見つけることはおろか、ユカチップスにさえ出会えず、すっかり忘れかけていたというのに。

マスク・除菌・換気……いつも以上にピリピリしている中、それでも「いつも通り」を求められてくる日もくる日も仕事をこなす日々にちょっと疲れたある日。大学院生時代の友人と、自分たちにご褒美をあげようよと出かけたのが、栃木県は日光。

元公邸料理人のシェフの、地元栃木の食材を使ったフレンチをいただけるこのオーベルジュ。かの有名な日光東照宮から徒歩圏内の川沿いに、オーベルジュブエナビスタはあった。

14ひきのねずみのお話で有名な絵本作家いわむらかずおさんも愛したという益子焼の器に盛られた、前菜にオードブルに魚料理。

日頃の職場での悩みだったり学生時代の思い出だったりを語りながらゆっくりと食事が続いていく。

同じゼミで過ごし、同じ職種で働く彼女とは飾らず話ができる。口の形も読み取り慣れているし、わたしが聞き取れなくても嫌な顔一つせずに言い換えたり身振りを使って教えてくれる。

いよいよメイン料理。料理の説明を紙に書いていただいたものが、スッとわたしたちの前に置かれた。


こちらの付け合わせは、ユカ芋という芋を使用したフリットです。日本ではなかなか食べられないおもしろい味なので、ぜひ楽しんでください。



……え?あの、パナまで食べたユカ芋?
思わず

え?これってあの、中南米でチップスになってるやつですか?


と聞き返すと、あれよあれよという間にシェフも出てきてくださり、ユカ芋談義に。ダイニングでもマスクが必須なご時世、わたしは音声で、オーナーさんたちは筆談で。

話によると、オーナーさんは、ペルーの大使館で料理人をされていたこともあって、そのときにこのユカ芋と出会ったとのこと。

まさか、日本の日光の片隅で初めての海外旅行の思い出と再会できるなんて。オーナーさんご夫妻と話しながら、ユカ芋のフリットを食べながら、あの日の記憶が脳裏をよぎる。

クーラーボックスいっぱいにお酒を詰めて船に乗り込んできたバカンスを楽しむ人たち
浅瀬で見つけた大きなヒトデ
泳ごうとしても海水のしょっぱさに圧倒されてしまったこと
それでも海が綺麗で、ユカチップスがおいしかったこと……

あぁ、旅を重ねる醍醐味は、旅先で旅の思い出に出会えることなのかもしれない。

そんなことを思いながら、益子焼のカップで食後の紅茶を静かにすする。

これだから、わたしは旅をやめられない。
なんて、思いながら。


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