さんごの暮らし相談室

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  • 心と社会の研究室

    心と社会について、様々な角度から書いています。書く文章は、ひとりごとみたいなもの、エッセイ的なものから学術的なものまで、幅広く。

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    選りすぐりの一冊をご紹介しています。

  • こんなことでお悩みの方へ

    カウンセリングって、私も受けて平気? 日本では、カウンセリングやセラピーへの敷居がまだ少し高いようですが、どうぞご安心を。暮らしのそばにある、そのお悩みをお聞かせください。

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最近の記事

「共依存」と「相互依存」――高機能依存症の苦しみ

「依存症」は、何かに甘えているとイメージされやすいのですが、実は、人にまっすぐ甘えられない人が陥りやすいことをご存じでしょうか。 依存症の人は、人との関係を相互依存的につくることができないために、代わりにアルコール、ドラッグ、買い物、ネットゲーム、ギャンブルなどのモノや行動に依存してしまいます。 相互に依存できない人たちから成る関係が、共依存です。共依存関係は、回避的で寄生的です。そこには、真の信頼関係がありません。 依存症の人たちの中にも、自分の苦しさを隠すのがうまい

    • 「甘え」がもたらす癒し――アラン・N・ショア『右脳精神療法――情動関係がもたらすアタッチメントの再確立』より

      いま、心理療法の世界ではパラダイムシフトが起きていると言われます。 一言でいえば、「情動」と「関係」を基盤とし、共に(同時的に)、感じ合うことで腑に落ちること、それが、アクチュアリティ(認識によって捉えることができない只中で進行している行為・行動)に働きかけていくアプローチです。ここには、右脳同士のコミュニケーションが深く関与しています。 翻訳者の小林隆児さんは、自閉症児の臨床と研究を長年されてこられた方で、母子関係における「甘えのアンビヴァレンス」という観点を主張されて

      • 自己(Self)の暗黒面――D.カルシェッド『トラウマの内なる世界』より

        D.カルシェッドは、日本ではあまり有名ではないのですが、カルシェッドの言う「セルフケア・システム」はとても重要に思います。 自己(Self)は、従来、こころの全体性であったり、個性化であったり、クリエイティヴィティをもたらすものという、比較的明るいイメージで考えられてきました。 けれども、トラウマ的な体験に脅かされた人は、自己(Self)そのものを守るために、セルフケア・システムなるものをつくると言うのです。自己の暗黒面というのは、この、自己を保護するためのシステムをつく

        • 女性のほんらいの主体性――新しい方のフェミニズムへ

          カール・マルクスとジークムント・フロイトという古典は、この世界の成り立ちを知るためにできれば読みたい本だと思います。 しかし、私は、フロイトは食わず嫌いのまま来てしまいました。もちろん、勉強のために断片的に読むことはありましたし、フロイトを引用する本は多く読んできました。そのせいなのか、どうしてもフロイトへのアレルギーのようなものがあって、なかなか読めずにいました。 先日、ふと図書館に立ち寄ったときに、フロイトを借りてみようと珍しく思い立ち、ほんの一部ではありますがざっと

        「共依存」と「相互依存」――高機能依存症の苦しみ

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        記事

          複雑な時代を生きる――エナクトメントをどう考えるか

          現代は複雑で不確実で不安に満ちた社会です。 これまでの価値観では通用しなくなってきたことから、現代をVUCA(ヴーカ)時代と呼ぶことがあります。Volatility(不安定さ、変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧さ、両義性) の頭文字を組み合わせた造語です。 「前例がないからやらない・できない」では、これまでのようには進まなくなってきたのが現代です。ですから、トライ&エラーで挑むしかなく、失敗すらを前提に物

          複雑な時代を生きる――エナクトメントをどう考えるか

          理性を行使する主体像への疑問――共存可能性を考える

          昔、繰り返し読んだ本を読み返してみると、何を言っているのかさっぱりわからない箇所と、いまなお響いてくる箇所とがあって、面白いものです。 私自身が変わったこともあるのでしょうが、昔は、何を言っているのかさっぱりわかない箇所も、どうにかわかろうとして、わかった気になっていたような気がします。 さっぱりわからない箇所をいま読むと、そこは結局、モノローグでしかないことに気づきました。読者とのダイアローグに開かれていく書き方になっていない方が、書き手にとって都合がよいこともあるのか

          理性を行使する主体像への疑問――共存可能性を考える

          解離の癒し――関係療法的な取り組み

          解離は、今日とても多いテーマですが、取り扱いがたいへん難しいものでもあります。 解離とは、例えば、災害や事故などの出来事を体験したとき、あるいは、あまりにも強烈な痛みを体験したときに、そのときの体験や感情を自分の心から切り離すことで、生き延びるようとするのです。 ですからこれは、能力でもあるわけです。 自分の心の一部を棄て、そことの架け橋をなくすことで、自分の心がバラバラになってしまうことから守るのです。 けれども、切り離した体験や感情は、なくなるわけではありません。

          解離の癒し――関係療法的な取り組み

          精神と社会との関係――人間であることについて(ライト・ミルズ『社会学的想像力』より)

          「陽気なロボット」という言葉は、資本主義が隆盛し行き着く先にあるものとしての「人間の人間による疎外」を批判的に検討しようとした人たちが、1960年代あたりのアカデミック・シーンで用いた言葉です。 ミルズは、次のように述べます。 昔、読んだときには、実はこの箇所にそれほど注目しなかったのですが、改めてこの箇所に力点を置いてみると、ミルズが提唱していた社会学的想像力は、現代社会において「人間が人間であること」と問うていくための想像力ということができるように思います。 ミルズ

          精神と社会との関係――人間であることについて(ライト・ミルズ『社会学的想像力』より)

          病態水準を見極める――本来の言葉を語ること

          人と人との対話は、共同構築される面があると考えるのは社会学です。 カウンセラーでさえも、ブランクスクリーン(真っ白なスクリーン)であることはできないのです。 「傾聴」という言葉は、人の支援においてよく使われる言葉です。 けれども、ただ傾聴されるだけで真に癒されたという体験を、一体どのくらいの方がされているのでしょうか。 実際、私は、傾聴だけじゃ物足りない、何か違うという話をよく聞きます。もちろん、これは、傾聴の有用性を否定するものではありません。 それよりも人間は、

          病態水準を見極める――本来の言葉を語ること

          隠れ型の自己愛性パーソナリティ障害への取り組み

          自己愛性パーソナリティ障害と聞くと、どんなことを思い浮かべるでしょうか。 誇大感や万能感をもった顕示欲の強い人を思い浮かべるかもしれません。 日本社会では、そのような人はあまり好かれない空気があるように思います。「能ある鷹は爪を隠す」方が好まれるように思います。 一方で、自分が所属している集団や組織、有名人の知り合いがいるなど、自分そのものではないけれども自分と心的に地続きに思える誰かが、社会から高い評価を受けていると、ただそれだけで自慢になるのが、日本社会です。 こ

          隠れ型の自己愛性パーソナリティ障害への取り組み

          『ソーシャルワークの作業場 寿という街』の美しさ

          学生時代に読んだ本で、最も衝撃を受けた本のひとつに、『ソーシャルワークの作業場 寿という街』があります。須藤八千代さんというソーシャルワーカーで、晩年は大学で教鞭もとられました。 寿町というドヤ街に辿り着いた人たちは、日本の高度経済成長を、文字通り、体で支えた人たちです。いまは寿町も様変わりしてしまった、と聞いています。 須藤さんは、仕事の中で「ケース」と呼ぶ、人間の存在に強く惹かれながら寿町にいたそうです。彼女の叙述は、「ケース」という言葉で片づけられない、人間の多面性

          『ソーシャルワークの作業場 寿という街』の美しさ

          他者の痛みと倫理

          人間は集団になると、自分が思ってもいないことを話し出すことがあります。ほんとうは、違う考えや気持ちをもっているのに、周囲に合わせて水を差さないようにしてしまいます。 いつも明るく元気だったある人が、とても重い病気の可能性があるとわかったとき、お別れの話を交わしながら心配そうな言葉をかけるある方の、その表情の中に、ちらりと笑みがあるのに気づいたことがあります。 その笑みを浮かべていた方も、いつも明るく元気なのですが、ご自身もご家族に重い疾病があられ、介護のことや将来のことを

          公共圏とルール圏――他者の両義性と〈自由な社会〉の構想(見田宗介より)

          社会学者・見田宗介さんが、晩年に書かれた社会構想理論に「交響するコミューン」があります。 見田さんの構想は、ポストモダンの時代における人間社会を考えるうえで、とても重要なものだと思っています。 そこでは、社会の理想的なあり方を構想する仕方として2つの原的に異なる様式が述べられます。 そして、他者の両義性として、次のように述べます。 こうした、他者の両義性の中で、見田さんは「他者の他者性こそが相互に享受される関係の圏域」として、交響するコミューンを構想し、「異質な諸個人

          公共圏とルール圏――他者の両義性と〈自由な社会〉の構想(見田宗介より)

          救済のひとつの道――グッゲンビュール‐クレイグ『結婚の深層』を読む

          A.グッゲンビュール-クレイグはユング派分析家のひとりで、この本は、深層心理学的な観点から結婚について書いてあります。 子どもをもつことや結婚・離婚は、誰にとっても大きなテーマで、多くの方が悩まれていることでもあります。 社会学的には、結婚することは「自立」として周囲から承認される機能をもつとか言われたりもしてきました。一方で、フェミニズムからは、結婚しなければならないという強制からの解放が謳われたりしてきました。 様々な考え方がありますが、グッゲンビュールークレイグに

          救済のひとつの道――グッゲンビュール‐クレイグ『結婚の深層』を読む

          【お願い】対人援助専門職の方へ

          当相談室では、ご来談いただく方々がご自身を理解したり、教養を学ばれたり、深い癒しの一助のために、無料で様々な記事をご提供しております。 そのため、当相談室の代表が書いております記事や未発表の原稿等につきまして、無断で使用・転載・盗用することは固く禁止しております。 ご使用になられたい方は、当相談室にご連絡くださいますよう、お願い申し上げます。 心理職をはじめとする対人援助専門職にあられる方におかれましては、倫理と責任をもって、ご自身が楽しまれる範囲においてのみ、ご覧くだ

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          "The Art Of Loving"(エーリッヒ・フロム『愛するということ』より)

          エーリッヒ・フロムは、社会(心理)学・精神分析・哲学とを通して、「人間」について深く考察した素晴らしい学者のひとりです。 『自由からの逃走』『愛するということ』などは、よく知られた著書でしょう。 何年たっても色褪せない古典というものはあるものです。 ちなみに、フロムはこの著書の中で、精神分析の祖であるジークムント・フロイトを批判的に考察しています。経済学者ピーター・ドラッカーの本によれば、フロイトの精神分析は実際のところ、当時の経済・労働状況というのを考慮に入れる必要が

          "The Art Of Loving"(エーリッヒ・フロム『愛するということ』より)