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東大の前田恵理子先生、「収束まで何年?親の覚悟」

こんにちは、Choimirai School のサンミンです。

【主要なアップデート】
(2020年5月15日)「感染症と文明 共生への道」に関するコメントを追加

以下は東大の放射線科医で、循環器、小児等特殊CTと医療被曝を専門とされている前田恵理子先生Facebook に投稿された内容です。

新型コロナと一緒に生きる社会を考える時、参考にしてください。中でも、親御さんにはぜひ読んでもらいたい内容です。

"子供の教育では、一番の問題は、心の育ちと体力低下だと思います。感染リスクを封じながら、運動やソーシャルな学びの機会をいかに提供するか、親の知恵が試されます。"

長崎大学熱帯医学研究所教授で、国際保健学や熱帯感染症学を専門とする山本先生の「感染症と文明 共生への道」もこの時期大変参考になる本です。感染症の完全な撲滅ではなく、あえて緩やかな共生を目指すというスタンス。今回のコロナ対策を考える上でも示唆に富む一冊です。

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【収束まで何年?親の覚悟】
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先ほども投稿した通り、コロナの終息は10年仕事だと思っています。

〇ウイルスの病原性と収束に必要な期間

感染症の終息に必要な戦略は、ウイルスの感染力や病原性の高さによって異なります。病原性が高く致死率が高ければ、感染した宿主も亡くなってしまうので伝播力は高くなりません。弱毒の場合は、伝播力が強くてもただの風邪と同じですので社会的インパクトはありません(2009の新型インフルがこれ)。今回の新型コロナは、ご存知の通り潜伏期間が長く、重症化率が2割と程よく、無症状・軽症者による伝播力が強い、しかも重症者は医療を必須とする意味で、社会的コストがもっとも高いウイルスになります。このタイプのウイルスの制御に必要な条件は、①人口の7-8割が感染し集団免疫を獲得するか、②ワクチンができ集団接種が進む の2つしかありません。特効薬も期待されますが、必ず耐性ができますし、重症者が死ななくなる程度の効果に留まる(それも大きいです)と思います。

〇集団免疫の獲得

100年前なら、こんなウイルスが流行っても、医療は当てにできず多くの患者さんが亡くなって数年で収束しました。しかし、人類、とくに先進国は高度医療という魔法の力を知ってしまったたために、「医療を崩壊させずにゆっくりじんわり集団免疫を獲得する」道を選ぶしか選択肢がなくなりました。これはある意味、医療を諦めて感染爆発を許容するより困難な道のりです。医療崩壊させずに、日本人9000万人が感染するには、50年くらい時間がかかるのではないでしょうか。よって、収束に必要な条件は、ワクチンができて集団接種が進む、の1択になります。

〇ワクチンがみなさんの手元に届くまで

各国がしのぎをけずってワクチンの開発を進めています。この人類の情熱をもってすれば、2-3年の間に実用化するかもしれません。それでも驚異的な早さですが、私は2年程度でワクチン開発に成功できるだろうと、医学の力を信じています。

でも、ワクチンは健康は人に打つものですから、安全性の検証に長い時間がかかります。世界中に届けるための量産化にも1年以上かかるでしょう。3-4年後に、量産化が完成すれば御の字です。3-4年でも驚異的な速さです。
難題は「集団接種」です。感染対策のため、体育館に地域の人を百人単位で集めて接種を進めるわけにはいきません。しかも、接種は医師にしかできません。医師はすでに医療崩壊と闘っている状況です。その合間を縫って、コロナファイターではない医師が動員され、一日にほんの数人ずつ、気長に時間をかけて接種を進めるしかないでしょう。どうみても5年、10年仕事だと思っています。でも、地道に接種を進めれば、やっとコロナの終息が見えてきます。

〇社会が変わる

このような状況ですので、5月6日で緊急事態宣言が解かれて仕事や学校がいつも通りになるか、というとそれはありません。少しでも、接触を許容すると、このウイルスはあっという間にぶり返しますから、年より及ぶ抑制生活を強いられることになります。多少集団免疫の獲得が進んでも、局所的な流行で自粛を繰り返す、不安定な生活が続くことになると予想します。

むしろ、10年の間に社会がすっかり変わると思います。職場はリモートワークが当たり前になり、オフィスに通う生活をする人は激減、一方第一次、第二次産業とケアワークは、海外依存できなくなるために仕事が増えるはずです。産業構造は40年前の日本にちかづうのではないでしょうか。

学校はホームスクーリングが基本になり、集団授業は過去のになるでしょう。日本型の一斉入試は不可能になり、オンラインを通じたエッセイテストのような、欧米型AO入試をアレンジしたものが主流になると予想されます。この変化に対応できた学校や教育システムだけが生き残ることになるでしょう。息子も高校生になるころまではまともに学校がない生活を覚悟してますので、ノートPCを与えてクリエイティブに使えるように指導します。コロナ後の世界では、日本型の受験勉強より重要なことだと思います。

〇最大の問題

子供の教育では、一番の問題は、心の育ちと体力低下だと思います。感染リスクを封じながら、運動やソーシャルな学びの機会をいかに提供するか、親の知恵が試されます。

いずれにせよ、コロナ後はものすごい格差社会が待っていると思います。学んだものは誰にも奪われません。困難な幼少時代を強いられる子供たちに、心からのエールを送りたいと思います。

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まだの方はこちらの note も参考にしてください。


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