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敗北は最大の教師、勝利は...? J1第3節vs川崎フロンターレ マッチレビュー

マッチサマリ

前半

開始から15分あたりまではサンガのペース。
大雑把にDFラインから前線に蹴り飛ばすところまではいつもと同じなものの、この試合の違いは原大智の起用ポジション。足枷としか思えない左WGからようやく3トップの中央に。
フロンターレのDFに寄せられても囲まれてもしなやかに収めて、巧みにはたくことで起点になり、サンガの攻撃を牽引してくれました。

しかし、ワンパターンな攻撃は対策されると脆いもの。空中戦時には原に2枚を当てられ、1枚は落下点に入らせないブロック役として、もう1枚がボール処理役として対応されることで前線の起点は消失してしまいます。
(試合中にスッと対応するフロンターレ守備陣が流石なのですが…)

守備でも組織として連動することができず。片側に圧縮して前から追いかけるスタンスを取るものの、個別に突撃するせいで奪うどころか引っ掛けることすらできず。
鳥かごで剥がされ前進をたくさん作られてしまいます。

数えるのが辛くなるほど左サイドに侵入される回数が増えてしまいます。中央での弾き返しで難を逃れてはいましたが、自陣深いところに釘付けにされるせいで攻撃に転じられません。

そんな中でも0で耐えられていた要因はそれぞれのチームに。

ポンポンポンとパスで剥がされ続けても懸命に追い続けるサンガの選手たちによる頑張りが一つ。
もう一つは、フロンターレ側のエラー。3CHの全員に足元に長ける選手を置いた結果、運動量の少なさで数的有利をみすみす手放すシーンが目立ちます。

後ろで秀逸なパス回しを実現する一方でCFに配置された山田のサポートに間に合わず。山田も良い動きを見せますが、独力でアピ・麻田を圧倒して得点できるほどのこの力は持ち合わせておらず。
守備では原に入ったミドルパスを囲い込むこともせず前進できる時間を作らせてくれました。

押されてずっと続く相手の攻撃ターンを耐えて凌ぐ。決壊だけは避ける。厳しい展開で前半が終了。
0-0。

後半

HTでネジを撒き直したサンガ。トゥーリオを左に投入して起点を一つ増やし、前に重心を置く意思を見せます。対して、フロンターレが切り替えに失敗しゆるい入り方をしてくれました。

後半一気に青(サンガの攻撃)が増えます

サンガの攻撃は前半と変わり映えしない「前に人がいたら蹴って当てる」ですが、フロンターレは重心が下がり過ぎたせいでセカンドを拾えず。サンガがボールを回収して攻撃を続けることに。
ハーフタイムをきっかけに試合展開が変わる典型のようなパターンが生まれてくれました。

サンガの攻撃ターンが増えて助かるものの、やっぱり攻撃が「前に人がいたら蹴るよ!」なせいでターン終了。
大味な展開が続き、スタミナ切れや選手交代で流れが変わってしまう前に何かあればいいな…と感じていたところで、何かありました。

コーナーキックの跳ね返しを繋いだところからフロンターレのカウンター。が、ここでマルシーニョがトラップミスでボールが流れたところをサンガが回収し左サイドから攻撃再開。

チャンスになる鉄板パターン「カウンターのカウンター」が生まれます。
左を駆け上がった天馬からのクロス。川﨑颯太とトゥーリオが重なってこぼれた先に待っていた豊川のシュートが弾かれた先に待っていた川﨑颯太が豪快かつ冷静に蹴り込み先制。

フロンターレは失点をきっかけにチームを立て直すこともできず。交代選手での挽回を狙いますが、試合に大きな変化を付けることもできず。

露骨に左の三浦颯太の上がりを活用した攻撃を狙うフロンターレに対して、サンガは冷静に対応。弾き返しに集中すれば固いCBコンビに加えて、時に金子がラインに入って中央を封鎖。無駄撃ちによる屍の山ができあがります。

クロス成功4.3%はとても厳しい

前の枚数を増やしてなりふり構わない姿勢を見せることで、フロンターレはサンガを崩せなくなります。
と思っていたら87分、混戦からゴミスに頭で押し込まれ諸行無常を感じていたところで、VAR介入。直前に遠野のオフサイドがあったとして同点弾は認められず。たまには良い仕事するじゃんVAR君

長めのATにもめげずフロンターレDFライン裏に蹴り込み続けることで、地味に相手を苦しめながら時間を使い、タイムアップ。0-1。勝利。

総括

史上最高や最強以前に「下3つ回避できるん?」との疑問を抱かざるを得ない内容と結果を突きつけられていただけに、嬉しい勝ちになりました。
現地組の人の飛び跳ねろ動画を見てあまりにも羨ましい気持ちになり、次のアウェイどうしようかなと考えさせられたり。やはり勝ちは本当に良いものだと感じます。

さて、待望の初勝利の余韻に浸るのはもちろん良いことです。
しかし「手放しで喜べる内容だったか」と言われると「そんなことはない」でしょう。スタッツとかそんなものを深く見る前に。

勝利の喜びと分けて、向き合わないといけない事象や現象に目を向けます。

PickUp:勝利を最高の教師に

「勝つと見えなくなるものがある。敗北は最良の教師だ。だが"だから明日の試合で負けたい"とは言えない」

僕が人生訓にしているオシムさんの言葉。ちょうど今のサンガを取り巻く状況にピッタリだったので紹介したいと思い引用しました。

この言葉が意味するのは…。
負けて学ぶこともあるが、それは負けた時に考えたり感じることであって、やる前から諦めていては学びにもならないということ。
と一般的に解釈されています。

ただ、この一つの意味だけではないと思っていて。
それは「敗北がチームの教師になるとしても、愛と情熱を注いだ自分のチームの負けを願うことなんてできるわけないだろう」との気持ちが込もっているのだろうと。

勝ったら嬉しいに決まっているじゃないですか。その気持ちを否定することはできないはずですよね。
その感情ときちんと向き合えるのか。コントロールし次に迎えるか。ここにかかっていると考えています。

冷静に試合を振り返る

この試合を分けたポイントは何だったでしょうか。
川崎颯太のゴール...よりはるか前。前半ATに、金子がロストしたボールを再奪取しようとしてフロンターレの選手を両手で抱え込んだシーンです。

贔屓目に見ても、素直に見れば警告に相当するプレーでした。
すでに1枚警告を受けている金子は退場になっても何ら不思議ではないシーンでしたが、幸運にも主審はアドバンテージを採用し事なきを得ます。
残り45分を数的不利で戦うことになれば、後半の巻き返しが成立する可能性が大きく下がったであろうことなど説明するまでもありません。

相手のメンバーにも目を向けましょう。
来日から猛威を振るうエリソンはベンチにも入れず、サイドで主攻を担うマルシーニョのコンデション不良にゲーム途中での負傷。
山田が前線で孤立したことがフロンターレの攻撃が不調に終わった要因の一つですが、孤立しても独力で突破してしまえる選手がいれば話は変わったはずです。

自分たちに目を向けるとどうでしょうか。
意志を持って攻撃を組み立てられないのは相変わらず。確率の低い前への蹴り飛ばしを続け、守備に回らされ続け苦しい展開が続くのも1・2節と同じです。
(前半の得点期待値0.07は流石にいただけない…)

等々力での3ポイントは素晴らしい結果ですが、課題(それも去年から持ち越し要素が多い)が山ほどあるのもまた事実です。

バラバラでも。いやバラバラだからこそ

組織面での向上が見受けられなかったものの。いや、見受けられなかったからこそ、個人レベルの頑張りが目を引きました。

もはや異常なレベルで走り倒す天馬や豊川を筆頭に、チーム全員が戦い走ったことは3ポイント奪取に大きく影響したところです。

全員でベタ引きになることもなく、隙あらば2点目を張ってやろうとの姿勢も見せ、CHは距離感を改善しようとの意思も少し感じられました。

一人一人が頑張っているからこそ、チームとしてより機能できるような組織面が整備されれば強くなれそうなのにと少し歯がゆい気持ちです。

勝利から得るもの

試合のブランクが大きく空くとチーム全体がリズムを崩す。去年から定着しつつあるパターンです。

色々な原因があるのだろうと思いますが、逆を返すと試合を重ねるごとにチームの連携や意識が洗練されていき、全体が底上げされるチームでもあります。
その兆候はこの試合でも見れました。

勝利の結果から自信を。そして課題の多い内容から反省を得て、チームが向上するきっかけになる一戦になればと願わずにいられません。

個人評価

特に良かった選手だけ

94 ク ソンユン GK
後ろからチームを支え続ける安定感。セービングもロングフィードも質高く、エルゴラ選定ベストイレブンも納得のパフォーマンス。韓国代表...に選ばれると注目されちゃうのでやめてください。

18 松田 天馬 MF out 97分
やっぱり天馬は必要不可欠なんだよなぁ。って去年から通じて何回言ったでしょうか。守備の先人役からリンクマンまで、広く重要な役割を果たしました。
スタッツではそこまで高い数値が出ていないため、良い場所にポジションを取り続けたことによる印象が大きいのかもしれません。

省エネ(当社比)

14 原 大智 FW
ついに本領発揮。しなやかなタッチでと力強い空中戦で起点になり、後半はサイドの狭い領域で援軍も無い中巧みにキープし時間を作ってくれました。コンディションが上がっている感。

さいごに

なんだかレビューというかコラムみたいな内容になってしまいましたが…。
できれば、戦術的な部分など複雑で分かりにくいところを、シンプルに分かりやすく解説するのが僕の本領発揮の場と思っています。
組織としての上積みや良い連携、見たいです。上を目指すためにも。

記事は以上です。
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