しづのや

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しづのや

2024.09.23現在、アカウント整理工事中。 ちょっとした思い付きや考えたことなど、主に専門外のことを書く自由帳です。大して推敲もせず、気の向くままに書いていますので、雑文乱文ご容赦。

マガジン

  • 創作講談の習作

    所属する講談教室の課題「3分講談の創作」。毎月ひとつ、お題に即してミニ講談を作ります。内容を考えるのも書くのも楽しく、私にはとても合っている課題です。文章力の筋トレにもなっています。3年経ち、だんだんと増えてきましたので、整理の意味も込めてこちらにアーカイブしています。講談なのか、ショートショートもどきかエッセイか、よく分からない雑文ですが、ご笑覧ください。

  • 古典作品の考察・感想・紹介記事

    古典作品に関するちょっとした考察、本の紹介など。

最近の記事

3分講談「飛騨の匠の祖・鞍作止利」

時は飛鳥時代。聖徳太子が活躍した頃のお話です。飛騨高山に、ある百姓の夫婦がおりました。夫は古麻呂、妻は石女と申しまして、二人の間には「志乃」という一人娘がおりました。ところがこの娘、あまり器量がよくないということが災いをいたしまして、二五歳になっても嫁のもらい手がございません。まあ当時は二〇歳を過ぎると年増、四〇でおばあさん、五〇を過ぎると男になる、と言われた時代ですから、二親もたいそう心配をしておりまして、毎日毎日気が晴れない。そんな両親を見て、志乃も心を痛めておりました。

    • 怪談『牡丹灯籠』―圓朝作の特徴について考えてみた

      はじめにカランコロン…と下駄を鳴らし、女中に牡丹の花の模様のついた灯籠を持たせて、夜毎恋しい男の元を訪れる幽霊――。 怪談『牡丹灯籠』は、落語・講談・歌舞伎・映画などに幅広く取り上げられ、三大怪談にも数えられる有名な怪談噺である。中国は明の時代に作られた「牡丹灯記」(『剪灯新話』所載)を原典とし、江戸時代には浅井了意により京都を舞台にした「牡丹灯籠」として翻案された(『伽婢子』所載)。その後、様々に翻案・改作される中で、人口に膾炙する有名な怪談に成長していったといえるだろ

      • 3分講談「折口信夫と藤井春洋」

        能登半島の西側に位置する石川県羽咋市。この海沿いの町に眠っているのが、日本を代表する民俗学者である折口信夫と、その養子となった春洋(はるみ)でございます。(①) 折口信夫は、歌人としては釈迢空の名で知られますが、明治二十年、現在の大阪市浪速区に生まれました。天王寺中学校を卒業しますと、上京して國學院大學に進学し、万葉集や神話を中心とする古代文学を学びました。一度は大阪に戻って中学校教員になりましたが、再び上京し、母校・國學院大學の教員として着任。その後は、文学だけでなく、祭

        • 3分講談「髑髏の仇討ち異聞」

          博物館や美術館を訪ねるのが趣味という方も多くいらっしゃることと思います。ガラスケース越しに、数百年・数千年前の文化遺産と向き合えるという意味では、とてもファンタスティックな空間だといえます。ただ、博物館勤務の友人によりますと、収蔵庫や、閉館後の展示室というところには、少なからず「出る」のだそうですね。 出ると言ってもボーナスではありません。「おばけ」が出るんですね。言われてみればさもありなんで、展示されているものというのは、過去の誰かの持ち物ばかり。つまり、「念」の籠もった

        3分講談「飛騨の匠の祖・鞍作止利」

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        • 創作講談の習作
          34本
        • 古典作品の考察・感想・紹介記事
          7本

        記事

          3分講談「石の宝殿由来」

          世界には、誰が何のために造ったのか分からない、謎の石造物が多く残されています。有名なものとしては、イースター島のモアイ像や、イギリスのストーンヘンジなどがありますが、日本にも、謎の石造物が各地に存在しています。 たとえば、奈良の飛鳥には、鬼のまな板・鬼の雪隠などと呼ばれる巨大な加工石がありまして、鬼が旅人を捕まえて料理した場所だとか、鬼が用を足すための巨大なトイレだとかいう伝説が残されておりますが、これらは考古学的にみれば、古墳を造るための石材を切り取った残りが放置されたも

          3分講談「石の宝殿由来」

          3分講談「天狗にさらわれた龍」

          早いもので、今年ももう3分の1が過ぎましたが、今年の干支は辰年ですね。このたつ、りゅうは、中国で生まれた想像上の動物ですが、水や雨を司る神として、日本でも篤く信仰されてまいりました。蛇のような長く太い身体には、ガラスのような鱗があり、頭には角、口元には立派な髭、するどい爪のついた手足。その姿は、日本全国の神社仏閣の彫り物や天井画として、今でも数多く残されております。さてそんな龍も、時にはピンチに陥ることをあったようで、こんなお話が残されております(①) 平安時代の中頃、讃岐

          3分講談「天狗にさらわれた龍」

          3分講談「守山宿の仇討ち」①

          ★謡曲『望月』の翻案・リメイク作品です。 時は、室町のころ。ところは、近江国・守山でございます。 ここ守山には、京の都と東の国とを結ぶ木曽街道が通っておりまして、江戸時代にはこれがいわゆる中山道となるわけですが、それ以前から、宿場町として大変に賑わっておりました。 この守山宿に、「甲屋」という一軒の旅籠がございます。宿の主人は友三と申しまして、四十手前。無口ながら柔らかな物腰で、客あしらいも上手く、仲間内での評判も上々でございました。 あるうららかな、春の日の昼下がり。

          3分講談「守山宿の仇討ち」①

          3分講談「髑髏の仇討ち」(テーマ:仇討ち)

          亡くなった人の骨というものには、骸骨、どくろ、しゃれこうべ、野晒し―、実に色々な呼び名がございますが、この骸骨というのは、怖いようでいて、どこか愛嬌があったりもいたしますね。 上方落語に『善光寺骨寄せ』という演目がありまして(江戸では「お血脈」ですが)、閻魔大王が石川五右衛門の骨を寄せ集めて復活させるという荒唐無稽なお話で、そのくだりが上方では、骸骨の操り人形を実際に遣いながら演じられます。私も一度だけ、先代歌之助師匠の高座で観たことがありまして、骸骨の動きがコミカルでとて

          3分講談「髑髏の仇討ち」(テーマ:仇討ち)

          3分講談「秘密探偵・岩井三郎」 

          明治二十九年、東京日本橋に、日本初の私立探偵事務所が誕生いたしました。創始者は、岩井三郎。元は警視庁の刑事でしたが、三十歳で警視庁を辞して野に下り、探偵業を始めました。当初は、岩井が一人ですべてをまかなう個人事業所でしたが、七年後には大阪堂島にも支店を構えるほどになり、日本初の女性探偵を輩出するなど目覚ましい躍進を続けました。扱う事件も、殺人事件から誘拐事件、保険金詐欺や身元調査まで実にさまざま。本日は、そんな岩井氏の携わった事件の中から、短いお話をまずは一席申し上げたいと思

          3分講談「秘密探偵・岩井三郎」 

          『曽我物語』―「曽我の紋づくし」と御所五郎丸

          このところ、曽我物の芸能をいくつか観る機会がありました。そんな中で、講談『曽我物語』の「紋づくし」の場面(御所の五郎丸が兄弟に祐経の仮屋の場所を教えるくだり)は、もしかして講談オリジナルのものなのか?という疑問が湧きました。そこで、つらつら調べて分かったことを、ひとまず記し留めています。認識間違いや不足な点もあるかと思いますが、私自身はこういう「物語の変容」をとても面白いと思うタイプなので、同じような興味を持っておられる方への話題提供になれば幸いです。また、資料や解釈について

          『曽我物語』―「曽我の紋づくし」と御所五郎丸

          講談の出典研究は可能か、という話。

          講談を習うなかで、その文言・詞章の出所が気になることがあります。 たとえば、弁慶と牛若の出会いを描いた有名な「五条の橋」。私がいただいた台本では、全編美文調で、明らかに、何かしらの古典作品に依っているだろうと思わせられる文章です。(ちなみに、国会図書館デジタルで調べた範囲ですが、大正十二年の『歴史趣味の講談』(文芸社)に所収されている柴田馨口演の「牛若丸」の文言とほぼ同じでした。) 中でも、弁慶と牛若との橋上での戦いを描いた修羅場の詞章が独特なので、その出典が知りたくてち

          講談の出典研究は可能か、という話。

          3分講談「日秀上人御一代記② 大蛇退治」(テーマ:自由)

          室町時代、紀州・那智勝浦の日秀上人は、「補陀落渡海」へと出立いたしました。小さなくり抜き船で大海原へとこぎ出すこの荒行は、さながら、死出の旅路でございました。一度は船の中で意識を失いましたが、次に目を覚ましたのは、穏やかな波音が響く、真っ白な砂浜の上でした。 「観音さまが浄土へとお導き下さったに違いない、有り難や、有り難や」 と、心の内で唱えて、砂浜に横たえた身体を起こそうといたしましたが、全く力が入らない。それもそのはず、もう何十日も飲まず食わずだ。その時、背後から、人

          3分講談「日秀上人御一代記② 大蛇退治」(テーマ:自由)

          3分講談「日秀上人御一代記① 補陀落渡海への出立」(テーマ:自由)

          和歌山県那智勝浦町に「補陀洛山寺」という古いお寺がございます。室町時代、海沿いに建つこの寺を拠点として広まったのが、補陀落渡海でございました。 補陀落渡海と申しますのは、海のはるか彼方にあるという、補陀落観音浄土を目指す修行のひとつでございます。とはいえ、その実態は、過酷な捨て身行でありました。浄土を目指すといっても、小さなくり抜き船にたった1人で乗り込み、舵も櫂もなくただ流れに身を任せるだけ。しかも恐ろしいのは、その舟は屋形船で小部屋があり、その小部屋に入ったあとは、外か

          3分講談「日秀上人御一代記① 補陀落渡海への出立」(テーマ:自由)

          日常を横切る怪異―旭堂南湖著『滋賀怪談 近江奇譚』を読んで

          私が講談を教わっている旭堂南湖先生が、今年3月に『滋賀怪談   近江奇譚』(竹書房)を出版されました。読了しましたので、感想(と勝手な紹介文)を書きました。気合いを入れて書いた結果、ガチガチのレビュー文体になってしまいましたが(汗)、すでにお読みになった方にも、まだお読みでない方にも、魅力が伝われば嬉しいです。(5月8日加筆修正) はじめに 『滋賀怪談   近江奇談』(竹書房、2023年3月)は、滋賀県出身の講談師・旭堂南湖先生の書き下ろし実話怪談集です。(コンセプトや目

          日常を横切る怪異―旭堂南湖著『滋賀怪談 近江奇譚』を読んで

          空間を支配する語りの力―「続いざ龍玉」感想にかえて

          様々な語り芸を聴く中で、「微動だに出来ないくらい惹き付けられる」という経験をすることがある。 これまでで鮮明に覚えているのは、桂吉朝師匠の「たちぎれ線香」と、旭堂南湖先生の「大瀬半五郎」「柳田格之進」。最近では京山幸太さんの「文治殺し」。 どれも緊迫感のある話だったというのもあるが、ぴりっと張り詰めた空気が空間を支配して、唾を飲むのも瞬きをするのも憚られるくらいだった。自分の不用意な動きが、今この場に顕ち上がっている芳醇な物語の世界を壊してしまうように感じられて、ただただ

          空間を支配する語りの力―「続いざ龍玉」感想にかえて

          3分講談「前田利長と高山右近 十文字の炭手前」(テーマ:旅行)

          ★3月に訪れた、富山県高岡市にまつわるお話です。 富山県高岡市は、富山市よりも西に位置する、商業都市でございます。古くは、越中の国の国府(今でいう県庁)があり、奈良時代には、『万葉集』の編者・大伴家持が国司として赴任していたことで有名です。家持はここ越中で多くの歌を詠み残しましたが、その場所を巡りますと、今でも、胸に染みるような景色に出会うことができます。特に、雨晴(あまはらし)海岸と呼ばれる海岸沿いは絶景で、穏やかな富山湾越しに、雪を頂く立山連峰をはっきりと見渡すことがで

          3分講談「前田利長と高山右近 十文字の炭手前」(テーマ:旅行)