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グサッと刺さった知人のひと言~「地域開発協力コーディネーター」の私的実践

離任の日を前にして、プンツォリンで知人と最後の昼食をご一緒していて、「あなたがファブラボCSTにいたから相談を持って行けたけれど、離任したら、私はCSTには相談を持って行かない」と言われました。続けて、この方は、「日本は気楽に相談に応じてくれる開発パートナーじゃない。必要なら自分は他の援助機関に相談に行く」とまでおっしゃっていました。

私にとっては聞き捨てならない発言だったのですが、CSTのお役所ぶりを見ていたら彼の言いたいことはわかるし、彼が指摘していた「日本の仕事のやり方」というのも、的を射ていると思いました。

「もうCSTには頼まないという気持ちはわかるけど、ファブラボには話を持ちかけてほしい」———知人の発言の前段部分について、私はこう応じたものの、後段については「そうかもしれません」という以上のことは言えませんでした。

どこの国でも日本と他の開発パートナーの開発協力の進め方を比較して、どこに支援を要請するか選択するというのはよくあることでしょう。ただ、日本が応えられず、他の援助機関に持って行かれているローカルな開発ニーズがけっこう多いというのを裏付ける発言も、実際に聞いてしまうと、ちょっと悲しい気持ちになります。具体的に聞いた援助機関の名前が、J○○Aよりもはるかに規模が小さいところだったので。まるで、「J○○Aは図体が大きくて小回りがきかない」と言われているような感覚でした。

2021年6月に発刊された下記の本の中で、私はブータンに関する1章を書かせていただきました(「20 対ブータン援助――内陸山岳国で「誰も取り残さない」をどう確保するか」)。この中では、「ほぼ何でも作ることができる」デジタルファブリケーションの技術を備えた工房(ファブラボ)が小口で多様なニーズを拾ってソリューションを提供でき、ブータンのような内陸小国には向いていることを主張しました。

でも、開発協力の今後のあり方について、私はもう1つ、「地域開発協力コーディネーター」という考え方を拙稿の中で提示しています。

本書は高額だし、ある特定国にだけ興味があるような読者が簡単に手を出せる書籍ではありませんので、あまり反響があったとは聞きません。ただ、個人的には、ちょうど本書が世に出たタイミングが、私がブータンに1人の技術協力専門家として赴任した直後だったので、当然、拙稿で主張したことを実際に地方で実践することができました。



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