【掌編小説】タバコ吸い島
雲の中を泳ぐようにして島が進んでいた。人工島に斥力装置をとりつけ、同時に大きなプロペラを回して進む浮遊島というやつである。島は非常に小ぶりなものであった、が。
浮遊島というものは限られた人間しか持てないものだ。それこそ一部の富を所有した人間のみが持つものだ。
ぷかあ、とドーナツ型の雲がうかんだ。
島に建てられた家の中に一人の男がいた。その男が家の中でタバコを吸っていたのである。家族も、使用人といったものもおらず、本当に一人である。少なくとも浮遊島を持つほどの人間ならば、