桜色【#シロクマ文芸部】
桜色の布を繊維街で購入した。ネットショップでなく、実店舗での買い物は何年ぶりだろう。外出するのも罪悪感を感じなくなってきた、今日日。
自宅に戻って、布を水通しする。干して乾ききらないうちに、アイロンをかけて地直し。
「布絵さん、今回は何作るの?」
みのりさんが作業机に頬杖をついてたずねてきた。
「出来てからのお楽しみよ」
型紙を乗せて布を切る。待ち針で中表に合わせて、ミシンをかける。
みのりさんはコーヒーを飲みながら、集中している私を眺めていた。
5時間後、桜色の布は前開きのスプリングコートに形を変えた。
「布絵さんは手際が良いねぇ。着て見せてよ」
みのりさんに言われて、私は作りたてのコートを羽織った。
「どう?」
私はくるりと回ってみせた。
「うん、良く似合ってる」
みのりさんは目を細めた。
次の日、私はスプリングコートを着てみのりさんとお花見散歩に出掛けた。
コートが春風をはらみ、生を感じた。
思い切り〆切過ぎてますが、書きたかったので書いてしまいました。
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