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雪化粧【#シロクマ文芸部】

雪化粧を城に施し、女王は100年の眠りについた。

既に王は亡く、家臣たちは女王が淋しくないように共に眠りについた。

咲き誇っていた庭の薔薇たちも、そのままの姿を留めて白く凍りついた。

予言の魔女により、幼い末の姫だけは城の外に連れ出されて、無事だった。

ひとり残された姫は、凍えるように孤独だった。

ある日、姫は魔女に質した。
「何故、私を城に残してくれなかったの?」

魔女は答えた。
「あの城が忘れ去られないように伝えていくのが、姫の使命だからさ」

魔女は永い旅に出て、姫が王族と知る者は徐々にいなくなった。

姫は王族のいなくなった世で、ひとり生きていくことになった。

孤独だった姫にも、春が来た。

咲き誇るように美しく成長した姫は、村の青年と結ばれた。

そして──


「おばあ様、このお話の続きは?」
老女の孫が、続きを聞きたがった。

「……そうだねえ、貴方が大人になった頃に確かめに行くといいさ」
老女は孫の頭を優しく撫でた。

孫が成年となり、100年の雪解けを見届けるのは、まだ先のお話。

童話「いばら姫」をモチーフにして書いてみました。

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