逆光のみクジラ【#毎週ショートショートnote裏お題】
年末、魚崎と初日の出はどこで見ようか話し合っていた。
「いつも山の方ばかり行っているから、たまには海に行こうぜ」
魚崎はスマホで海の初日の出スポットを検索した。
「京野、A海岸のクジラを初日の出と一緒に撮影すると、その1年良い年になるってさ!」
「俺達受験だから、御利益あるかもな!」
初日の出はA海岸に決まった。
年が明け、俺達は始発の電車に乗ってA駅に着いた。
薄明るくなった空は、雲が多めだった。
「魚崎、クジラはともかく日の出見られるかな」
俺は不安になってきた。
「行ってみないと分からないさ。クジラだって、日の出だって、受験だって」
「そうだな」
A海岸の海岸線には大勢の人でにぎわっていた。しかし、水平線は雲がかかっていた。
日の出の時刻が迫ってきた。
『どうか、初日の出が見られますように』
海の向こうでクジラがジャンプしたのが見えた。雲間から太陽がのぞき込んだ。クジラの影が美しかった。
「逆光の御クジラ様だ」
歓声が沸き上がった。
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