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つくも×ムジカ

8
楽器修理を生業とする魔女と、楽器の付喪神のシリーズです。
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つくも×ムジカ 8

つくも×ムジカ 8

石畳の道のある古い職人街。
楽器修理を生業とする少女の姿をした魔女がいた。
彼女が直した楽器は、聴く者、奏でる者を幸福にする魔法がかけられているようだった。
今日もほら、お客さんがやって来た。

「うーん、久しぶりにいい天気!」
大正琴のお嬢さんが、店の空気を入れ換えようと窓を開けた。

ゴトリ。
店の外から、何か不審な音がした。

おそるおそるドアを開けると、そこには古めかしいギターのような形の

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つくも×ムジカ 7

つくも×ムジカ 7

石畳の道のある古い職人街。
楽器修理を生業とする少女の姿をした魔女がいた。
彼女が直した楽器は、聴く者、奏でる者を幸福にする魔法がかけられているようだった。
今日のお客さんは、修理とは違う事情を持ち込んできた。

「いらっしゃいませ!」
明るく応対したのは、和服の少女の姿をした付喪神、大正琴のお嬢さんだ。

「すいません。このお店に楽器の言葉を聴くことが出来る魔女さんがいらっしゃると聞いてきたので

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つくも×ムジカ 6

つくも×ムジカ 6

石畳の道のある古い職人街。
楽器修理を生業とする少女の姿をした魔女がいた。
彼女が直した楽器は、聴く者、奏でる者を幸福にする魔法がかけられているようだった。

今、修理を待つ楽器があるのにも関わらず、魔女は仕事が出来ない程に弱っていた。

「あ〜、何とか元気にする方法はないのかよ!魔女の憎まれ口を聞かないと、調子が狂うぜ!」
黒ずくめの青年の姿をしたバンドネオンの付喪神が、頭をガシガシと掻いた。

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つくも×ムジカ 5

つくも×ムジカ 5

石畳の道のある古い職人街。
楽器修理を生業とする少女の姿をした魔女がいた。
彼女が直した楽器は、聴く者、奏でる者を幸福にする魔法がかけられているようだった。
今回の仕事は、彼女にとって厄介な案件であるようで……

「何で大正琴のお嬢さんは連れて行くのに、俺は店番なんだよ」
バンドネオンの付喪神はカウンターテーブルの天板を叩いた。

「バンドネオンの悪魔、そんな不機嫌な顔しないの。あなたはビジュアル

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つくも×ムジカ 4

つくも×ムジカ 4

石畳の道のある古い職人街。
楽器修理を生業とする少女の姿をした魔女がいた。
彼女が直した楽器は、聴く者、奏でる者を幸福にする魔法がかけられているようだった。

今日は、彼女の側にいる付喪神たちのメンテナンスデーである。

「オカリナの鳥と、大正琴のお嬢さんは特に異常なし!…あとは〜」
魔女が黒ずくめの青年の付喪神を睨んでいる。

「お、俺はメンテなんか必要ないねっ!ほら、こんなにピンピンしてるしよ

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つくも×ムジカ 3

つくも×ムジカ 3

石畳の道のある古い職人街。
楽器修理を生業とする少女の姿をした魔女がいた。
彼女が直した楽器は、聴く者、奏でる者を幸福にする魔法がかけられているようだった。
今日もほら、お客さんがやって来た。

「ごめんください…」
店のドアを遠慮がちに開けたのは、二十歳前後と思われる女性だった。

「いらっしゃいませ!」
応対したのは、和服の少女である。

「すいません、これ…修理を頼みたいのですが。」
と女性

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つくも×ムジカ 2

つくも×ムジカ 2

石畳の道のある古い職人街。
楽器修理を生業とする少女の姿をした魔女がいた。
彼女が直した楽器は、聴く者、奏でる者を幸福にする魔法がかけられているようだった。

今日は、魔女が外出の為、付喪神たちがお留守番である。

「ほーほー」
緑色の鳥が店内を飛び回っている。オカリナの付喪神だ。

「こうやって飛んでいるところを見ると、本物の鳥に見えるね。」
和服の少女が黒ずくめの青年に話し掛けた。

「魔女は

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つくも×ムジカ

つくも×ムジカ

タイトルが降ってきたので、ショートショートを書いてみました。

石畳の道のある古い職人街。
楽器修理を生業とする少女の姿をした魔女がいた。
彼女が直した楽器は、聴く者、奏でる者を幸福にする魔法がかけられているようだった。

魔女の客は人間だけではない。
ほら、今日もやって来た。

「ほーほー」
緑色の鳥が来客を知らせる。オカリナの付喪神だ。
扉の前に壊れた大正琴が一張。
魔女の修理店には、稀に楽器

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