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桃花脱退宣言の理由を考える/『ガールズバンドクライ』7話 感想2

『ガールズバンドクライ』7話視聴。すでに感じたことを書いた。でも、他に気になったことが頭を去らない。しょうもない妄想に近いことだけれど、我慢できずに書いておく。

#ネタバレあり

7話でミネさんというキャラが登場。見るからに信頼できそうな人。しかし信用できそうな人こそ疑え。それが推理小説の常套手段だ。

●私たちはミネさん発言に惑わされているのでは
桃花はなぜバンドをやめると言い出したのか。昔から桃花を知っているミネさんは「結論が出るのが嫌なのだろう」「怖いんだよ」と言っていた。それはつまり「自分の曲を信じ切ることが出来ない」ということだろう。ミネさんの言葉には説得力がある。そして嘘をつくような人ではない。それは間違いないだろう。でも、と思う。このタイミングで突然現れたミネさんは「桃花の気持ちを代弁できる人」としての属性がありすぎる。そこが気になる。ミネさん本人も思いがけずに、皆をミスリードすることになるキャラクターなのではないだろうか。その疑いが私の頭を去らない。

●「自信ない説」への違和感
そして「桃花が自分の曲を信じ切ることが出来ない」というのに対して、私は違和感を感じる。6話最後の桃花の表情は「自信がない表情」なのだろうか。私には「理解してもらうことを諦めた孤独の表情」のように思えてならない。

これ、自信がないとかじゃなくね。

桃花はプロを目指す気がない理由をこう説明した。

私の作る曲じゃプロの世界では通用しない

7話の桃花の台詞

でも彼女は、2話ではこうも言っていた。

ひん曲がりまくって、拗らせまくって、でもそれは自分にうそをつけないからだろ。弱いくせに自分を曲げるのは絶対に嫌だからだろ。それは私が忘れていた、私が大好きで、いつまでも抱きしめていたい、私の歌なんだ。

2話の桃花の台詞

これは一見、2話で思い出した「自分の曲への信頼」が、7話では揺らいでいるようにも見える。それならミネさんの見立てが正しい。でもそうではなくて、そこには2話から7話まで、ずっと首尾一貫した彼女の思いがあるのではないか。仁菜にしつこく聞かれても「説明することを躊躇う思い」があるのではないか。私にはそう思える。それはつまりこういうことだ。

●私の仮説「私の曲はプロに向かない」
桃花が好きなのは「自分にうそをつけない人のための歌」。でもプロとして通用するには、自分の歌を多くの人に届けることが優先になる。自分にうそをつかないことよりも、だ。でもそれでは曲の本質が変わってしまうかもしれない。それでは「本当に届けたい歌」は届けられない。これは「彼女の大好きな歌」自体が抱え持っている矛盾だ。
つまり「私の作る曲は、プロの世界で通用しないタイプの歌で、でも私はそれが大好きなんだ」と、桃花は思っているのではないだろうか。それは「プロで通用する自信がない」という単純な話ではない。自分の曲がプロの世界で通用した時には、それはもはや自分の抱きしめていたい歌ではなくなってしまうかもしれない。桃花はそれが怖いのではないだろうか。桃花は「プロの世界で通用しないことが怖くなった」のではなく「プロの世界で通用したいとは思えなくなっている」のではないか。
でも、桃花の曲は「仁菜のような人」の背中を押す曲。だからプロを目指す仁菜を引き留めることもできない。一緒に進むことも出来ない。それが彼女を孤独にしているのではないか。それが私の仮説だ。

もしこの仮説が正しいのなら、桃花の前に立ちはだかる壁は、とても難しいものだろう。プロになって必死に曲を作り続けて、気づくと以前のようには音楽を楽しめなくなっていた。そういう話をアーティストが話しているのをよく聞く。だからきっと本当にむつかしいテーマなのだと思う。だから私はこの仮説にあまり自信がない。そんな難しいテーマを扱って、12話構成のエンタメアニメでカタルシスのあるエンディングに持っていける気がしない。でも桃花が「自分の曲を信じ切ることが出来ない」というミネさん説は、どうしても私には受け入れがたい。その私の考え自体が、とんでもなく的外れなのかもしれない。けど、我慢できずに書いておく。

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