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響け!ユーフォニアム3期 4話/秘めた思いを聞き出すとき

『響け!ユーフォニアム 3期』を見ている。完成度の高くて「凄いところ」が色々ある作品だけど、私にとっては「人間関係のリアリティ」が素晴らしい作品。4話も人間関係についていろいろ考えさせられた。感じたことをメモしておく。

#ネタバレあり

4話は求(もとむ)のお話。彼の中にある「姉と祖父への思い」は、他人に簡単に説明することができない込み入った思いだ。だから彼はそれを心の内に秘めていて、そのせいで彼は、苗字を呼ばれるとキレる「よくわからない人」になっていた。
そんな求から久美子は「彼の秘めた思い」を聞き出す。そして、心配している祖父と友人にちゃんと説明してほしいと伝える。気持ちは演奏に出るよ、と。それを聞いた求は、気遣ってくれた久美子に恩を感じるけど表情は晴れない。そしてその後、久美子が「求に良い演奏をしてほしい、それだけ」と告げたとき、彼はつきものが取れたかのような笑顔を見せる。このとき彼はどんな心境だったのだろう。

彼が思いを秘密にするようになったは、姉の音楽への思いが「人間関係」に押しつぶされたことに端を発している。人間関係は難しい。悪意だけが怖いのではない。善意の方がたちが悪かったりする。だから求は人間関係に憶病になっていたのだろう。彼は気を使われることを極端に避けようとしていた。だからもし、久美子の行動が純粋な善意から行われていたのだとしたら、彼の気持ちは複雑なままだっただろう。でも久美子は、彼女自身の目標のために行動しているだけだ、と宣言した。そしてそれは、まぎれもない彼女の本心だ。

久美子は思わず本心を口にしてしまう癖がある。それは一見悪い癖のように見える。でもそれは本心というあいまいなものを「人に伝わる言葉」にできる能力だ。私の本当に思っていることは何か?この問いは、よく考えると「ちゃんと答えること」が難しいものだ。自分の「本心」について真剣に考えると、肝心の「心」が動いてしまう。いつまでも「心」は捕まえられない。だから、自分の心を捕まえるためには、心が言葉として漏れ出してくるのを待ち、それが自分の心を捉えていることを確信する、という奇妙な順路を辿る必要がある。そして久美子はそれが自然にできる人だ。

この「本心を他人に伝えられる能力」によって、久美子は部員の秘めた思いを解放する。3話で沙里の苦しみを救ったのも、本心を伝えられる能力のお陰だろう。「私のところに持ってきてほしい」という、解決策には全くなっていない久美子の本心によって、沙里の苦しみは解放される。

誰かの秘めた気持ちを聞き出すのは危険な行為だ。秘密を受け取った人には、何かを返す義務が生まれる。そこでなにを返すことができるのか。そこで求められるのは実効性や実利ではない。そこで求められるのは、包み隠さない本心だ。嘘偽りのない本心を返すことが出来たら、それだけで「秘めた思いの苦しみ」のかなりの部分は解放されてしまうものなのかもしれない。そんなことを感じるお話でした。

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