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僕の心のヤバイやつ23話/「山田のことも嫌いになれたのに」で思うこと。

僕の心のヤバイやつ23話を視聴。足立は恋愛で市川に完敗し「市川がこういう奴だって知らなかったら、山田のことも嫌いになれたのに」と叫ぶ。この、一見倒錯したようにも見える気持ちについて思うことが色々あったので、感じたことをメモしておく。

#ネタバレあり

●変な理屈でキレる市川
足立は、山田が好きだけど市川には勝てないと分かって、みっともなく負けたいと市川に言うが、それに市川はキレる。お前の負けが確定していることなんて知るか。俺はお前に勝ってなんかいない。勝手に負けるな。俺は本気で勝ちたいんだ。本気を出せ。
足立が「負けている」といったのは恋愛の話で、市川が言っているのは騎馬戦のこと。だから話がずれてる。そして更に、市川は自分の事情を押し付けて相手の事情は考えていない。そんな「変な理屈の身勝手な怒り」は、聞くに堪えない「たわごと」に近いものだ。でも足立は、この市川の怒りに大きく心を揺さぶられる。そんな奴を好きになった山田に、強い共感を感じる。だから「山田を嫌いになれたのに」と恨み言を叫んでいたけど、そこに足立の辛さや苦しみは感じられない。感じられるのは解放感だ。

●足立への対応方法3パターン
足立のこの「みっともなく負けさせてくれ」への反応のやり方は、いくつか考えられる。
一つは、足立を直接的に気遣うこと。でももし、あそこで市川が足立の気持ちをあからさまに気遣ったりしたら、足立はキレただろう。人の気持ちに敏感な市川には、絶対とれない選択肢だ。
二つ目は、みっともなく負けさせること。これも足立を気遣うことだけど、彼の気持ちを察して上手に気遣う対応だ。市川がそういう「心の余裕」を見せたなら、市川は無傷でいられただろう。そしてそれは足立が作り出した既定路線だったのだから、市川にはたやすい選択肢だったはずだ。でも市川は自分だけが無傷で終わることが許せない。市川にとって足立を気遣うことは、安全な位置に身を隠すこと、やるべきではないことなのだ。だから三つ目の選択肢をとることになる。
三つ目は、足立のことはまったく気遣わず、自分の気持ちを一方的にぶつけること。足立の「負けさせてくれ」は彼の心情の告白だ。だからそのとき足立の心には、市川の告白を受け入れるスキが生まれていた。そのことに気づいた市川は、直感的にこの対応を選んだのだろう。

●相手を気遣わない、という誠意の形
きっと市川は、瞬時に足立の気持ちと自分の気持ちの両方を公平に汲み取ってしまう人だ。そして「やってはいけないこと」と「やるべきではないこと」が瞬時に見えてしまう。だから、彼の頭は「それ以外の第三の道」を必死で探したのだろう。ひねり出した選択肢は、それだけ単体で見ると可笑しな対応だ。だって、なんでそこで自分の心情を告白する必要があるというのだ?でもそれは、二つの選択肢を自分で潰し、必死で瞬時にたどり着いた選択肢だ。それを込みで考えないと、この対応の凄さに気づけない。
相手を気遣わない誠意。気遣わないためには、市川には「自分の一番強い思い」をぶつけるしかなかった。そしてそれが足立の心を強く揺さぶった。「人の苦しみ」を「自分の苦しみ」に変換して受け取り、苦しみの中で答えを出すやり方。それが誠意というものの本当の姿に近いものなのかもしれない。そんなことを感じるエピソードでした。


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