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ガールズバンドクライ5話/正しいことより大事なものを信じぬけ

『ガールズバンドクライ』というアニメを見ている。今回も主人公の面倒くささが常軌を逸していてとてもよかった。今回は、過去の脱退に対する桃花の「出口を無くした思い」が面倒くさい主人公に揺り動かされて動き始める話。そしてそれは「自分の蒔いた種」に揺り動かされる形になっていて、説得力があってとてもよかった。感じたことをメモしておく。

#ネタバレあり

桃花は過去に「魂を掛けていたバンド」を脱退している。そのバンドの目指していたのは「ばあさんになってもオリジナルメンバーで続けること」だったのだけれど、方向性の変更が許せなかった桃花は結局脱退してしまう。だから桃花は、裏切ったのは自分、と感じていた。だから「自分は間違っていない」なんて彼女は言えない。

でも主人公(仁菜)は、そんな桃花の歌に胸をえぐられた人だ。えぐったのは「死んでも負けんな」というメッセージ。それは、桃花がメンバーを裏切ることになっても譲れなかったもの、なのだろう。

桃花は、仁菜を通してそのメッセージに再会する。「死んでも負けんな」とは、何があっても信じたものを信じぬけ、ということ。たとえそれが「友人を裏切る結果」になったとしても。桃花の脱退は、自分が深く傷ついても信じたものを信じぬいた結果だ。それは、自分のメッセージを守っていたから。彼女は友人に不義理をした。でも彼女は決して間違ってはいない。

もちろん、桃花はこんな面倒な理屈を考えていないだろう。自分の歌から思いを受け取った仁菜を知って「自分は間違っていなかった」と感じられた、というシンプルな話だ。でもそれを俯瞰してみると、もっと私たちみんなに関係のある話のように私には見える。
桃花が問題を抱えたのは、「譲れないもの」が「正しさ」よりも大切だったから。彼女はメンバーを裏切らない「正しさ」より、譲れないことを優先し、自分を肯定できない袋小路に入り込んだ。それは「譲れないもの」を見つけた人が辿りつく袋小路なのだろう。つまり真剣に生きていれば辿りついてしまう場所なのだ。正しくないけど間違ってはいない。私たちはそういう状態に陥ることがある。
そのとき私たちには「自分は間違っていない」と叫ぶ資格がない。叫ぶ資格があるのは仁菜の立場にいる人だ。彼女には「桃花の出口の無い思い」を無視して「お前は絶対に間違っていない」と叫ぶ資格がある。その叫びはどこまでも自分勝手で、他人が聞いたらドン引きだ。でもその「自分勝手な叫び」だけが、出口を無くした桃花を救えるものだ。

面倒くさい人万歳。今回もそう叫びたくなるお話でした。

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