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第51話≪ロキの章②≫ーネクロファンタジアからの魔法の泉ユグドラシルへの密偵ルーンー

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!これはこれはロキ様!!またまた面白いものを!!」

第三層世界大規模地下の大都市、ネクロファンタジアという魔物と忌々しき魂の大塊や幽霊、化け物、怪物で占領される世界にホビットのルーンのケタケタ笑い声が響き渡る。

あちこちに9つの世界のうちの第三層、死の国ヘルヘイム、炎の世界ムスペルヘイム、氷の世界ニヴルヘイム、第二層に侵食しつつある黒い妖精の国スヴァルトヘイムから拉致されてきた奴隷たちが、メフィストフェレスを王とし、来る第Ⅹ次世界大戦で地球を爆破した後、宇宙の太陽系のみならずブラックホールを交通して自分たちが支配し全知全能の神神となるというどうしようもないくらいのグログロとした暗黒世界を創造するために、なれの果ての次なる朽ち果てた巨額の頽廃世界を描くための『波』を作らせていた。

ネクロファンタジアとは医学での壊死を意味する《ネクローシス》と広義で架空世界を意味する《ファンタジー》からきた造語である。

「人間とは何処までも浅はかで愚かな生き物だ」

脚を組んで骸骨が走らせる黒い骸骨馬車に頬杖をついて優雅に乗りながら、ルーンとともに目下のネクロファンタジアを見下ろす麗しいほどの美青年はロキである。
ロキは金髪を風に吹かれながら碧い月のような惑星を見上げる。

「今宵も黒煙に巻かれる如き『七つの大罪と四終』よ、我が漆黒の薔薇十字軍の『波』と打ち鳴らせ」

ロキは胸元からポンッと鮮血の滴る薔薇を魔術で取り出すと薔薇の芳香を優美に嗅ぎながら蛇のような舌をチロリとだし、右手で『悪徳の樹』を空中に描く。すると悪徳の樹からにょきにょき不気味な蛇のような枝が11個伸び尖端からぼとり、ぼとり、ぼとりと重い泥のような黒々としたものを骸骨馬車に落とす。
ルーンはまた「どひゃー!おっかないおっかない!」とロキの背中の中にひゅんっと目に留まらぬ速さで潜り込んで頭隠してデカ尻隠さず状況である。

泥のようなものからぶくぶくと泡が飛び出し、11のものはヒトのような形となる。

「七つの大罪と四終の諸君はキミも初目か。時計回りから紹介しよう」

ロキは背中にひっこんでいるルーンを片手でつまみだすと宙にぶらーんと下ろす。ルーンはひぃいいいいいとぶるぶる震えながらロキの説明を聞かざるを得ない事態に卒倒しないように、というより既に失神しかけの意識朦朧とした清明でない意識を保つので必死である。

ロキは美しい声で黒々としたものから産まれたものものの名を呼ぶ。

「第一の終わり、『臨終』。
巨大な青い蝋燭を持ち、罪人から全ての罪を洗いざらい告白させ聴く聴罪師である。」
ぶるぶる震えながらルーンは心の中でいきなりクライマックスですかい親方!と一人突っ込む。

「第二の終わり、『最後の審判』。
第二層の人間の世界の神であるイエス・キリストが再臨し、善悪を裁く世界の終わりのものである。」
どれもこれも終焉ですやんとルーンはまた関西弁で一人突っ込む。

「第三の終わり、『天国』。
再臨したイエス・キリストによって審判し選ばれたものが行く世界で善人を呼び寄せるもの」
なるほど、これは世界なのか。ルーンは目の前の『もの』が世界の概念であることに気づく。

「第四の終わり、『地獄』。
罰せられた者たちが堕ちるもう一つの世界のもの」
なるほどなるほど、ロキ様の娘様のヘルヘイムですかい。第三層のことっすな。ルーンは一人で勝手に解釈して一人頷く。

「第一の大罪、『大食』。
分かち合わずに大飲大食する男。」
ふむ、暴飲暴食ではなく俺のものは俺のもの、お前のものは俺のもののジャイアニズム的な強欲のことですかい。ルーンは一人ふむふむ第二層人間の世界のブッダという僧侶の教えの仏教でいうところの煩悩かと一人納得する。

「第二の大罪、『怠惰』。
祈りもせずに枕を頭の下に敷いて常にうたた寝するもの」
自分の努力を怠り他力本願というか、さぼってばかりなのに益を奪おうとするものっすな。まぁ、わしもだけど。ルーンは開き直って、やぁやぁ仲間よと『怠惰』のところにぴょこぴょこいくとサボってなにがいけねぇんだと居眠りをする『怠惰』の横で仰向けでふんぞり返って寝ようとするが、ロキの魔術で円の中心にふっとばされる。ルーンはほぎゃー!と頭と尻の方向逆さま状態で屍馬車に突き刺さる。

「第三の大罪、『邪淫』。
愛の行いに溺れる赤いテントの中で戯れる男女」
ルーンは両目をハートにすると「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!待ってましたよ‼お嬢さ――ん!!!」と我を忘れてセクシーな淫乱女のもとに光の速さで駆け寄るがまたロキの魔術で中高く舞い上がるとズドーンと屍馬車を通貫させる勢いのごとく、ぎゃひーーー!!とふっ飛ばされる。

「第四の大罪、『虚栄』。
悪魔の鏡で身繕いするもの」
まぁ、俺だってちっさい爺さんだが、メフィストフェレス様の鏡でみればロキ様のように美麗美青年でこの世の美女は自分のもの。うひゃひゃひゃひゃひゃ!ルーンはどこから取り出したのか手鏡でうっとり自分の醜態に自惚れる。ルーンのわかりきった思考回路はもうロキには無視されているようだ。

「第五の大罪、『憤怒』。
相手の男に椅子を投げつけナイフを抜いた妻を寝取られた夫。」
ルーンはどひゃーーーーーーーー!!!!そなたの奥さんを寝取った浮気野郎はわしやない!断じてわしやない!!と青ざめてロキの背中の中にまたひゅんっと隠れるがロキにつまみ出され『憤怒』のメラメラ燃える眼をみて泡を吹いて失神する。

「第六の大罪、『嫉妬』。
客の男よりも通りにいる伊達男に色目を使う女郎宿の女」
女の嫉妬心はこわいっすな。泡を吹いて失神状態のルーンはぶつくさぶつくさ呟く。

「第七の大罪、『貪欲』。
公正な裁判をすべき筈なのに賄賂を受け取る執政官」
ブラーーーんと失神しながら、第二層の浅ましきものもののことか、きひひひひひひひ愚か者め!っと自分のことは棚に上げてげらげら下品に嘲笑するルーンである。

「さて、ルーン。キミはさ、この11についてどう思うかい?」
美青年のロキは一人妄想に耽っていたルーンに尋ねる。
ルーンはぽかーんとすると帽子をとって頭を掻きながら「なんでしょうかね?」と首を傾げる。

「きみの『波』をばらしたものがこの7つの大罪だ。」

「ふぅむ。」

ルーンは7つの大罪を小さな背丈で見上げる。

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!私はこのようなものの塊だと!!!うひゃひゃひゃひゃひゃ!うひゃひゃひゃひゃひゃ!」

穢れの塊こそが自分だという最悪のなれの果ての姿である。

「…そして、第二の層、人間界で産み落とされ第三層に落ち、そしてこのネクロファンタジアに引き寄せられるものである」

「ふぅむ。」

「だから、この世に人間という生き物がいる限り、この7つの大罪というものは生まれ続ける。それが自身の流れ着いた地球【hoshi】を破壊するのだから愚かな生き物だよ。くくくく…」

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!人間どもは自爆の神ですな!」

ロキは屍馬車にゆっくり腰掛け長い脚を組むとパチンっと赤ワインのような液体を魔術でだし、その赤い液体を自身の身体にいれる。

「キミはさ、この液体は何だと思うかい?」

にぃっとロキは不気味な笑いを浮かべながらルーンに問う。
ルーンは「うひゃひゃひゃひゃひゃ!なんでしょうね!」とバカ笑いする。

「正義と勝利と平和、優しさ、そしてこの世の『母』いう僕の大っ嫌いなものをもつ塊の存在を『犯した』時に頂戴したものさ」

その赤い液体をロキは飲み干すと血相を変えてガシャンと粉々にワインガラスを床に叩き割る。

ルーンはおっかないおっかないと逃げ回るが逃げる場所がないので、屍馬車の隅でぶるぶる身をひそめる。

「くやしいねぇ。僕のものだ。あの女は。」

ロキの全身から黒い炎が揺らぐ。

「あの女は僕が支配するもの『もの』だ。それなのに…」

『   』がロキの目の前に揺らぐ。

「ルーン…お遊びの時間はこれまでだ。」
冷酷非情なロキの顔には感情という『波』はなく、しかし憎悪と支配欲というサディズムの黒い妖精が屍馬車の周りを旋回する。

「キミは第一層の妖精の国アルフヘイムと第二層の混沌を回避しようとしている3つの魔法の泉ユグドラシルの門番、人魚の歌声と海の女神アマデウスをなんとか説得し、それから巨人の国へゆけ。話はそれからだ」

ルーンは「へい、ロキ様」とぶるぶる震えると空を飛ぶ魚に乗るとびちびちいわせながら第二層と第一層の虹の橋、ビフレストの結界をくぐり抜けるための魔術と科学兵器を持ち合わせ、ロキの命令に従いネクロファンタジアから去ってゆくのだった。

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