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第49話≪カイ χの章 ⑫≫【scapegoate】 ―カイの歌 『虹』―

僕たちは笑いながら手を繋いで画(え)の様に美しいグリム兄弟が産まれ育った故郷ハーナウから続くメルヘン街道を童話の中の登場人物になったかのようにこどもに戻りながら、無邪気に駆ける。

「あそこのヴィルヘルムスヘーエ公園っていう公園にはスタート地点のヘラクレス像っていうところから順路通りに水が現れるショーが楽しめるんだよ!」

「水の藝術かぁ!凄いわくわくする!」

「ね!そうでしょ!カイ君はきっとまた新しい歌を産むんだ!」

「産むってなんだか恥ずかしい…」

「どうして?素敵じゃない!」

「ふふふっ。ハルが言うなら素敵なことなんだ」

「素敵かどうかはカイ君が決めるんだよ!」

「そうだったね!」

僕たちは興奮しすぎて歩調が僕の方が早くなりすぎて戻ってきたりくるくるしながら、ロマンチックなレーヴェンブルク城を遠目に水のショーを楽しみに足を運ぶ。


《どうか このまま幸せな時よ 永遠(とわ)に》


観光客がまばらな場所で僕はざばーーーんと水しぶきを上げて流れ落ちてくるローマ風のアクヴェルドゥクト【水道橋】をみる。

「カイ君みてみて!虹がみえるよ!」

ハルが興奮して指をさす方向に七色の半円が滝を架ける橋のように浮かび上がっている。

「僕虹なんて本物初めてみたよ!!わぁ!!虹の上をハルと一緒なら歩けるなぁ!」

ハルは僕の非科学的な言葉に目をキラキラ輝かせて、「素敵…」と虹を歩く僕たちを想像してるようだ。

僕は心の奥底から湧き出てきたインスピレーションで即興で《虹》という唄を歌う。


僕たちは何色?何色でも素敵 
僕たちは産まれたとき真っ白なキャンバスを神様から授かる
僕たちは僕ら自身という壮大なアートワークを染める

赤 情熱的な心の躍動
青 澄み切ってる優しいキミの涙の色
緑 自然の恵みと営みで生かされる僕たち
橙 暖かい色は絆の温もり

どんな色も僕たちを飾る
どの色も必要 

悲しい時は紫
苦しい時は嵐のような灰色
絶望や挫折した時は黒
その色を知ることで僕たちは光という色を知る

どんな色も僕たちらしさ
キミに似合う色はどんな色も素敵
だってそれが キミらしさだし僕らしさ

僕もキミも 真っ黒な夜空というキャンバスに光と燈す星
流れ星が流れた
また一つの産声があがる

僕たちは何色に染まっていくだろう
何色に染まってもそれは僕らのオリジナル

どんな色に染まっていくか
今の僕はとても楽しみだよ…

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