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第50話≪ハルの章⑨≫【HERO】ーインナーチャイルドとの再会ー

私たちは歳を追うごとに社会から責任や役割というものを与えられる。
未来へ行けば行くほどその負荷はずっしり巨石の如く重い私たちを拘束する鎖となる。
今の私。役割も責任も勇気をだして放り出してみてカイ君とこどもに還って心の底の小さな私たち、インナーチャイルドそのもので笑いあう。
いつも私たちの心の奥のインナーチャイルドは社会や産まれ育った環境で与えられた役割を演じるのに必死になり、常に緊張と不安で金縛り状態だった。


Aになりなさい。

はい。

Aじゃないと駄目でしょ。

はい。すみません。

Aっていったでしょ!?

はい。ごめんなさい。


私たちは社会や身の回りから言われるものに必死になろうとして与えられた『役割』を操り人形のように演じ切る。それは真の私たちではない。真の私たちは本当は抱き締められて欲しかった。大人の私たち自身に。
大人の私たち自身は社会から与えられた役割や責任を果たすことで心身疲弊し、心の奥の泣いてるこどものままの私たちを放置してしまっていた。

爆発したとき、私たち大人はココロの怯え怖がっているこどもたちを安全な場所に移動させ、大人の揉め事には関与させないようにするべきだった。だけど、私たちは心の奥のインナーチャイルドが飛び出して、大人の私たちとの境界が曖昧で混乱している。

ここまで頑張ってきた『わたし』ってなかなか偉い。

ここまで一生懸命生きてきてくれてありがとう。

私たちは心の奥の幼いわたしたち、インナーチャイルドをギュッと抱き締める。

これからは、わたしたち自身があなたをしっかり育てていくからね。

どこまでも純粋無垢なこどものままのわたし。
頬を可愛らしく膨らませ透明なシャボン玉をてぷぅっと膨らませる。
シャボン玉は虹をくるりくるり描きながら、タンポポの綿毛と一緒に柔らかく未来へ高く高く昇っていく。

大人のわたしと心の奥のわたしは宇宙まで高く飛翔するシャボン玉という未来を一緒に育てていく。
大人のわたしはやっと心の奥に閉ざし続けていた檻の中のぴかぴかのインナーチャイルドと再会する。

わたしが流した涙はこどものわたしの優しさや純粋さの塊。
わたしは肩を張り続けて体裁を繕うことに必死だった。
置き去りにされていた心の奥のちいさなわたし。

ここまで一緒に歩いてきてくれてありがとう。
再会できた嬉しさで涙をこぼす大人のわたしと、安心してなきじゃくるこどものわたしはお互いの存在を確かめあうために、強く強く抱き締め合う。

ここまで歩いてきた軌跡は大人のわたしとこどものわたし二人の奇跡の道。

こどもになったわたしはカイ君と草花に寝ころび、何処までも澄み切った蒼空をふふふっと笑いながら、手を伸ばしながら眺めて体全身で自由を知る。


孤児院でいつも独りぼっちで勉強で自己の存在を見出していたわたしに一人だけ一緒に遊んでくれた少年がいたっけ。
土管の中でかくれんぼしてたら、いつもその男の子は見つけに来てれた。そのたびに私はこう言ってたっけ。

「ねぇ、どうして?」

その男の子はいつも困った顔でこういってたっけ。

「今の僕にはわからないから、今度会った時教えてあげるよ」

そっか、私の夢に毎日のように現れ、私の名前を呼び続けていたキミは、あの時の少年…

涙が頬を伝う。

私はわたしが大好き。
それでいい。
わたしって素敵。
私はいまわたしを知る。
今まで気づかないふりしてた私。
わたしにごめんねって涙を流す。
わたしは優しく私に首をふって体を寄せる。
今、わたしはとても幸せだよ。

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